アマゾンでは今でも毎日のように新種の動植物が見つかっている。考えるだけでワクワクし、熱帯雨林を探検してみたいと思う人もいるだろう。
一方で現在、人間活動に起因した種の絶滅は、過去とは比較にならない速度で進行しており、ネイチャーポジティブつまりは自然を回復軌道に乗せるため、生物多様性の損失を止め、反転させることに向けた対策が世界中で迫られている。
そうした現状を踏まえ、エコツーリズムを通じて生態系の保全及び保全を求める地域社会への経済的利益向上を目指し行われている取り組みが「ワイヤード・アマゾン(Wired Amazon)」だ。
ワイヤード・アマゾンは、ペルーの「レインフォレスト・エクスペディションズ(Rainforest Expeditions)」という、エコツアーと生物多様性調査を専門とする非営利団体が企画している市民科学プロジェクト。市民や観光客がボランティアとしてアマゾンに関する学びを深め、最新の科学技術を活用した生物多様性調査や、生態系保全に参加することができる。
活動拠点は、地球上で最も生物多様性の豊かな場所のひとつでありながら違法伐採、森林火災、違法採掘など、さまざまな危機にさらされているアマゾンのタンボパタ熱帯雨林だ。世界中の市民科学者の協力を得て、アマゾンの熱帯雨林の重要性とその保護と保全の緊急性を広めるべく活動している。
市民科学者たちは、専属の生物学者の指示に従いながら科学調査プロジェクトに参加する。具体的には保護区に生息する霊長類の行動やコミュニケーションパターンをより深く理解するための音声録音の収集と分析を行ったり、鳥の巣の定期観測に同行したり、観測用カメラの付け替えやメモリーカードの回収を行ったりと多岐にわたる。
Image via Wired Amazon/Photo by Carlos Gonzales
滞在期間は30日。ペルー現地市民は一日あたり40米ドル、それ以外の人々は一日あたり50米ドルの参加費用で研究センターへの送迎、食事、研究者ハウスでの宿泊料などが含まれている。自然を愛する人であれば、自然科学、市民科学の経験や知識がある人もない人も、みなが参加可能だ。
市民活動を通じて、自然保護科学とエコツーリズムを結びつける革新的なワイヤード・アマゾンの取り組みをブラジル観光省も高く評価し、ブラジル・サンパウロのエキスポセンターノルテで開催された旅行業界イベント「第11回WTM Latin America」の最優秀生物多様性保全イニシアティブ部門でブロンズ賞を受賞した。
ワイヤード・アマゾンは、エコツーリズムで自然環境について学ぶだけではなく、市民一人ひとりがネイチャーポジティブの実現に向けて貢献できる好例だ。
Image via Wired Amazon/Photo by Carlos Gonzales
アマゾンでの森林火災の原因とみられる農牧地拡大のための野焼きに対して、EU諸国やアメリカも懸念を表明するなど、アマゾンの環境問題は国際的な関心事になっている。国家間という大きな枠組みだけではなく、地域社会や市民社会も環境保全や持続可能性と積極的に関わりを持ち、できることは沢山あることをワイヤード・アマゾンは示している。
国土の広大さではアマゾンには及ばないが、日本にも世界中の人々が羨むほどの素晴らしい自然がある。
エコツーリズムで自然環境が良くなれば地元住民も嬉しいし、旅行者もその美しい自然を享受して幸せになる。これは誰にとっても有益なエコシステム(生態系)といえるのではないだろうか。
【参照サイト】wired amazon
【参照サイト】Rainforest Expeditions
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拓馬
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