1万本のアジサイを咲かせた、花咲じいさん。人から人へと繋がるあたたかな想いを受け取りに、東京のあじさい山まで

梅雨の時期の風物詩、アジサイ。

アジサイは1ヶ月〜2ヶ月しか咲かない花だけど、その短い間を一生懸命生きている。
儚いけれども、力強く美しい。

「今、僕は父さんと母さんのために、毎日アジサイの苗を植えているよ。
この道をアジサイでいっぱいにして、多くの人に喜んでもらいたいんだ」

東京都あきる野市深沢にある、東京都内屈指のアジサイの名所「南沢あじさい山」。ここには、人から人へと受け継がれる感動秘話がある。

受け継がれる、あじさい山の感動秘話

南沢あじさい山は、“ちゅういっちゃん”の名で親しまれていた南澤忠一さんが、「両親が眠るお墓への道に彩りを」とお墓へ向かう林道にアジサイの苗を20本植えたことから始まった。

それからたった1人で50年もの間アジサイを植え続け、今では10,000株を超える100種とも言われるアジサイが山を覆うまでに成長、初夏になると多くのお花好きの人が訪れるまでになった。

まさに、「深沢の花咲じいさん」だ。

忠一さんの想いが、地元と人々を繋ぐ

山を訪れる人をいつも笑顔で歓迎し「この山を1年中花でいっぱいにして、人々を喜ばせることが夢」だと語っていた忠一さん。残念ながら昨年のシーズン後に、惜しまれつつ両親の元へ旅立っていってしまった。しかし、長年に渡る“ちゅういっちゃん”の熱い想いは、地域の若者たちに引き継がれた。

株式会社do-moは、あじさい山含めこの地域一帯がお花の里となり、より魅力的な場所になるように活動していくという。こうして地域の若者たちに引き継がれた南沢あじさい山は、自然と地域との調和を大切に、これまで以上に持続可能な観光名所作りを目指していく。

自然を五感で楽しめる「深沢エリア」

深沢エリア一体は、アジサイの観光地のみならず、東京とは思えないほどの豊かな自然環境と、地域がもつ様々なアクティビティが揃う。ハイキングや登山、トレイルラン、温泉、観光、そして毎年アジサイのハイシーズンには、近隣にあるキャンプ場にて南沢あじさい山のストーリーに共感した著名アーティストによる音楽ライブや、地域文化が体験できる音楽祭が開催されている。

持続可能なエコツーリズムへの取り組み

“ちゅういっちゃん”が旅立った後、意志を受け継いで株式会社do-moの若者たちによって運営される南沢あじさい山は、自然環境や地域との調和を意識した、持続可能なエコツーリズムやステークホルダーツーリズムのモデルとなることを目指している。具体的には、マイカー規制で地域配慮を促す試みを始めたほか、土中環境で30年腐朽しない木材と言われる「PARKS WOOD」を活用し、森林循環と生物多様性の尊重から、木質化を推進するなど自然配慮にも力を入れている。

また、地域の学校と連携した教育プログラムを提供したり、地域の賛同者達によって発足された「深沢お花の会」によって忠一さんの想いを継続させたり、様々な活動を行っている。

「ねぇ、父さん、母さん。
僕の植えたアジサイが最近、テレビで取り上げられているんだって」

この時期しか見ることができないからこそ、儚くも美しい絶景。
咲かせた花を見るみんなの笑顔を見て、天国でニコニコしている、ちゅういっちゃん。

あなたもぜひ人から人へと繋がるあたたかな想いを感じに、訪れてみてはいかがだろう。
きっと受け取った想いを、また誰かに繋いでいきたくなるはず。

南沢あじさい山の会期 : 2024年6月8日(金)〜7月7日(日)

時間:9:00〜17:00
入山料:WEBサイトをご確認ください
住所:〒190-0172 東京都あきる野市深沢368
アクセス:中央線 武蔵五日市駅からハイキングで約40分、タクシー、期間限定のシャトルバス(30分間隔)などでご来場ください。
(※マイカー規制のため会場には駐車場はございません。お車の際は武蔵五日市駅前の駐車場を利用ください。)

【参照サイト】南沢あじさい山
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