タイ・チェンマイに一目惚れ。旅暮らしをやめました

青空の下で色とりどりの花々を咲かす木々、あたたかな風が運んでくるプルメリアの甘い香り、きらきらと輝く寺院でのんびりと寝ている猫。

タイ北部にある都市・チェンマイは、山々に囲まれたのんびりとしたタイの第二の都市。最近ではデジタルノマドの聖地ともよばれるほど、世界中から多くの人々が訪れる。「すっごく素敵だから行ってみて!」とわたしと同じく旅暮らしをしている親友から激推しされたこともあって、昨年はじめてチェンマイに降り立った。

「5日間だけお試しで滞在してみよう」と旅をはじめたのだが、滞在初日から5日間にしたことを激しく後悔した。チェンマイはわたしが今まで滞在してきた旅先のなかでも断トツで居心地がいい。人も、環境も、空気感も、すべてがチルで、開放的。到着そうそう一目惚れをしてしまったのだ。

日本への帰りの飛行機も押さえていたのだが、チェンマイに息づく文化、新しい発見にワクワクドキドキする毎日、友人たちとのびのびと過ごす時間が本当に恋しくて、離れたくなくて、人生ではじめてフライトを見送ることにした。

次の日、友人たちとスムージーを飲みながら快晴の青空を仰ぐと、その日乗るはずだった飛行機が上空を通り過ぎていった。「人生初、フライトのドタキャンに乾杯!」友人のひとりが声高らかに叫んだ。青い空のようにすがすがしい気持ちと、新しい冒険の予感がした。

ไม่เป็นไร(マイペンライ)

Photo by billow926 on Unsplash

チェンマイに恋した理由を簡潔にまとめるなら、圧倒的な開放感と居心地のよさだと思う。
山に囲まれたチェンマイでは、いたるところに色とりどりの自然がある。赤、黄、紫、白とカラフルな花々が咲き乱れ、日本ではお目にかかれない野鳥が優雅に飛びまわる。そして自然のみならず、チェンマイはタイ第2の都市なのでショッピングモールや映画館、プール、空港、バー、コワーキングスペースなどなどシティライフも充実している。スクーターで20分も走れば中心街の端から端、みどり豊かな自然のふもとにもさっと移動できるコンパクトさがとても心地いい。

トロピカルなジャングルをすいすいバイクで走っていると、車道でゾウとすれ違うなんていうサプライズもしばしばある。チェンマイ周辺の山々には美しい滝や自然保護区がたくさんあり、アクティビティの多さも旅人をとりこにする魅力のひとつだ。山でキャンプやトレッキングに明け暮れたり、一年を通して常夏の太陽のしたでプールやサウナを楽しんだり、おしゃれで格安のカフェやレストランを巡り倒すこともできる。

またこの環境で暮らしを営むタイの人たちが放つ「なんくるないさ〜精神」も、旅人をとりこにするあらゆる魅力の源泉だ。そもそも「タイ」という国名は自由を意味するのだが、タイを旅していると、おおらかで陽気な現地の人たちが多いことに気づく。

タイの人たちが頻繁に口にする表現で「ไม่เป็นไร(マイペンライ)」というものがあるのだが、「大丈夫」「どんまい」「なんとかなるさ」といった意味を持つ。タイ人の前向きな明るさの象徴ともいえるこの言葉は、沖縄県の方言である「なんくるないさ」ともよく似ているかもしれない。はじめてチェンマイにきたときは、将来への不安や悩みを抱えていた時期だったので、今この瞬間を自然体にのびのびと楽しく生きているタイ人をみて、急に肩の力がふっと抜けたのを覚えている。ちなみにタイは18もの性別が認められていて、LGBTQに寛容な国としても知られる。「十人十色」を大切にするその文化も、タイならでは。

チェンマイシック

ちょうど1年前にフライトをすっぽかしたわたしは、最終的にチェンマイに2週間ほど滞在。日本への帰国の日には友人たちが空港に見送りに来てくれ、泣きながらお別れをしたのを覚えている。

日本に帰ってきても、チェンマイでの思い出に浸りたくて滞在中の写真をスクロールしたり、チェンマイにまだ残っていた友人たちとは毎日のようにメッセージを交わしていた。ホームシックならぬ、チェンマイシックである。母国である日本が大好きで、海外を放浪していると結局日本が恋しくなって、舞い戻ってはまた海外に放浪を再開するルーティーンを今までは繰り返していたのだが、今回は違った。心の底から未練たらたらだった。

デジタルノマドとして世界を転々と気ままに旅暮らししながら過ごすのが夢だったが、チェンマイに、そして彼らと巡り合うために、会社を退職し、デジタルノマドとして生きる選択をしたのかもしれないな、とふと思った。

いままで一匹狼のようにふらりふらり、転々として生きてきたけれど、初めて「この地に根を張って暮らしてみたい」と思った。そうしてわたしは再びチェンマイ行きの航空券を予約し、日本に帰国した1ヶ月後に、「ただいま!」とチェンマイへと舞い戻ったのだった。

Photo by David Gardiner on Unsplash

数年ぶりに「ホーム」をもつ

そうした経緯を経て、一目惚れをしたチェンマイに住むことが叶った。数年ぶりに「ホーム」とよべる自分の部屋をもち、今はチェンマイと日本の2拠点で生活をしている。久しぶりに自分の部屋、ベッド、机、キッチンもろもろを持ちはじめて内心うきうきしている。

今までは最低限の持ち物しか運べなかったので、自分好みのキャンドルやお皿を収集してみたり、なによりもデスクトップをおいてさくさくお仕事を進められることが嬉しかったりする。

部屋の窓からはチェンマイの山々をパノラマで見渡せて、朝はその景色をみながら自分で豆を挽いてコーヒーを淹れたり、ベッドでだらだら読書や漫画に浸ったり、お気に入りのお香をたいてヨガや瞑想をしたり。自分が本当に「心地いい」と思える時間を気がねなく、存分に味わえるようになった。

あの時、旅先としてチェンマイを勧められていなかったら。日本行きのフライトをすっぽかしていなかったら。今の夢のような毎日を送れていなかったかもしれない。他の世界線もあったかもしれないけれど、この街に出合えたこと、気のおけない一生涯の仲間たちと巡り会えたことは人生の宝だと思う。
Home is where the heart is(ホームはハートのあるところ)!

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鷹永愛美

神奈川県横浜市出身。日々旅にして、旅をすみかとするデジタルノマド。わたしはどこから来たのか、わたしは何者か、わたしはどこへ行くのか探究中のスナフキン系女子です。文章やデザインを創りながら、世界の片隅で読書、バイク、チェス、格闘技に明け暮れている今日この頃。旅暮らしの様子はこちらから。