生きていくために痰の吸引や人工呼吸器などを必要とする「医療的ケア児」は増加傾向にあり、全国に約2万人いると言われる。2020年に医療的ケア児のご家族を対象に行われたアンケート調査では、回答者の96.8%もの方が「家族一緒に外出や旅行をしたい」と回答した。
医療的ケア児は医療機器を載せられる大きな車いすに乗っていたり、電源の確保が必要だったりするため、現実には長時間の移動や旅行には大きなハードルがある。
そのような医療的ケア児家族の旅行や外出という、新たな一歩を応援する情報ポータルサイト『ててとて旅行舎』が公開された。
一般社団法人Try Angle(本部:石川県金沢市、代表理事:須田麻佑子さん、以下Try Angle)の取り組みで、医療的ケア児の受け入れ体制が整っている全国の商業施設・宿泊施設や医療的ケア児家庭が参加しやすいイベントのほか、便利グッズなど役立つ情報を参照できる。
『ててとて旅行舎』WEBサイト:https://tetetote-travel.jp/
ユニバーサルツーリズムとサステナブルツーリズムの関連性
このような取り組みは、「人種や国籍、民族や宗教、ジェンダーや年齢、障害の有無等に関係なく全ての旅行者が日本において快適で安全・安心な旅行ができる」という概念を示す「ユニバーサルツーリズム」の事例の一つだといえる。そしてこのユニバーサルツーリズムは、近年世界的に大きな広がりをみせている「サステナブルツーリズム」の一つの要素に含まれている。
JNTO(日本政府観光局) SDGsへの貢献と持続可能な観光(サステナブル・ツーリズム)の推進に向けて 取組方針を策定しました!
Try Angleでは医療的ケア児と家族の外出や旅行のハードルをできるだけ解消するため、医療的ケア児の家族からの相談対応、宿泊施設向けに環境整備の支援、試泊の取り組みを行なってきた。社会全体でもバリアフリー、インクルージョンの考え方が浸透してきたこともあり、受け入れ可能な施設は少しずつ増えている。
一方、医療的ケア児の受け入れ体制がある施設の情報はまとまったものがなく、当事者の方は移動方法から商業施設、宿泊場所まで手探りで情報収集するのに苦労している。施設側も受け入れ体制を整えていることを当事者に伝える方法が無く困っていた。
課題解決の一つとして
このような医療的ケア児の旅行ニーズと現状を踏まえ、Try Angleでは医療的ケア児のお出かけに便利な情報がまとまったポータルサイトの制作を決定。クラウドファンディングによる138名の方から総額150万円を超える支援とベネッセこども基金の助成金を活用し、構想が実現した。
ポータルサイトの内容
現在はこれまでTry Angleにて取材・試泊してきた宿泊施設等の紹介、医療的ケア児が旅行する際に便利な情報等、10本以上の記事を掲載している。
今後は「受け入れ体制が整っている全国の商業施設・宿泊施設などの情報発信」「イベント情報の発信」、加えて「当事者ご家族による旅行・外出レポート」を掲載する。
さらに「医療的ケア児・家族」「観光事業者」「医療的ケア児を支援する事業者・団体」等が情報提供を行い、互いに接点を持つネットワークも構築予定。
全国の方々と繋がり、互いに現地の情報交換をしながら個々の医療的ケア児のニーズを汲み取ることで、チームワークで旅行を応援する場を作り、将来的には「当事者家庭や受け入れ施設側の個別相談に対応する窓口」の設置を目指す。
Try Angleの活動について
一般社団法人Try Angle(トライアングル)は、”病気や障害の有無にかかわらず誰もが安心して旅行を楽しめる社会”をつくるというビジョンの元、主に医療的ケア児の外出・旅行の支援、観光事業者向けの研修などを実施。活動を通して、ユニバーサルツーリズムの発展を目指している。現在は人工呼吸器や胃ろうなど、医療デバイスと共に生きる医療的ケア児者の方が旅行しやすくなるよう、『医療的ケア児の旅行ガイドライン』を作成、販売している。
誰もが旅行を楽しめる社会の実現のために
想像してみてほしい。もし自分や自分の家族が病気や体の不自由を抱えた時、旅をする自由を諦めなければならない社会を生きていくのは、どんな気持ちだろう?
誰にとっても他人事ではない「病気や障がいの有無にかかわらず誰もが旅行を楽しめる社会」の実現に向けて、まずはそれぞれの立場からできることを考えてみてはどうだろうか。
【参照サイト】PR TIMES | 医療的ケア児の旅行・外出を支援するポータルサイト『ててとて旅行舎』を公開
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