ブッキング・ドットコム・ジャパン株式会社は10月21日、28か国、約2万人の旅行者から集めた調査結果と同社が所有するデータ、旅行業界の専門知識をもとに、今後1年およびその後の旅行の未来について9つの予測を発表した。
新型コロナウイルスの感染拡大により、人々の生活や世界状況は大きく変化した。これに伴い、旅行の形も以前と同じ状態に戻るまでには時間がかかると考えられるほか、旅行業界におけるイノベーションは今まで以上に加速することが予想される。
また、旅行者はさらに高い安全性やよりサステナブルなオプションを求めるようになり、遠い場所だけでなく近場への旅の人気や、仕事と旅行の境界線が曖昧になるなど、旅行の選択肢はさらに広がり、深い旅行の価値が求められるようになるとみられる。そうした背景から同社は、今後の未来の旅行の鍵となる9つのトレンドを挙げた。
1. 高まる旅行欲
移動や渡航の制限および中止により先行き不透明な状況が続いているものの、人々の旅行欲は依然として消えていない。世界各国でロックダウンが実施された中でも、旅行者の65%が「再び旅行するのが楽しみである」と回答しており、「今後は当たり前だと思わずに貴重な機会として受け止めるだろう」と答えている。
また、回答者の53%が「もっと世界の色々な場所を旅行したい欲求が強まった」と答え、うち若者を中心とした42%が「2020年に旅行ができなかった分を今後取り戻したい」と答えていることから、巣ごもり時間の増加によって外の世界を体験したいという気持ちが高まっていることが伺える。
このように旅行の価値がこれまで以上に高まっていることからも、2021年は新たな旅行プランの企画など、旅行会社による工夫が期待される。
2. 価値提供の重要性の高まり
新型コロナウイルスによる経済への影響から今後旅行者は、旅行代金に対し、より大きな価値を求めるようになると予測される。現に旅行者の62%は「今後旅行の検索や計画を行う際に料金をより意識する」と回答している。
一方で、74%の回答者が「キャンセルポリシーや返金手続き、旅行保険のオプションに関して、旅行予約プラットフォームにさらに高い透明性をもって提示してほしい」と答えていることから、料金だけではなく、サービスやホスピタリティなど、旅行そのものの価値の提供の重要性が増すとみられる。
3. マイクロツーリズムのニーズ拡大
旅行者の47%が、「中期的(今後7~12か月間)には国内で旅行する予定である」と回答し、38%は「長期的(1年以上後)にもしばらくは国内で旅行する予定である」と回答したことから、より手軽で安全、かつサステナブルな傾向にある近場への旅行の割合が高くなることが予測される。これにより、旅行者による近場での魅力の再発見や、地域ビジネス・コミュニティの回復のサポートなど地域創生にもつながると予想される。
また、コロナ禍において同社では「ペット同伴可」の絞り込み条件の利用が倍以上に増加したことから、今後はペット同伴の旅行への対応も必要性が高まると予想される。
4. 検索による「理想の旅」の追求
コロナ禍における外出自粛やロックダウンにより、癒しや気を紛らわすものを求め、旅行者の95%が旅行のインスピレーションを探すことに時間を使い、1週間に1度は旅行先の検索を行ったという人は38%にも上ったことが調査結果によりわかった。これを受け、今後旅行にまつわるコンテンツの消費や工夫を凝らした旅行の計画、理想の旅を語り合うことへの欲求が急激に増加することが予測される。
宿泊施設によるSNSでの発信や、CGI(コンピューター生成画像)を活用したコンテンツ作成など、想像をかき立てるようなコンテンツの提供はもちろん、以前の旅行写真を眺め次の旅行計画を立てるなど、アナログなインスピレーションの復活もSNSでトレンドにつながると予想される。
5. 旅の安全性への配慮
世界中で新型コロナウイルスへの感染対策が強化されるなか、団塊世代を中心とする旅行者の59%は「一部の目的地を避ける」と回答、また70%は、「どのような健康・衛生に関するポリシーを実施しているかを明記していない限り、宿泊施設は予約しない」と答えていることから、今後は一層旅行における安全性への配慮が重要であることがわかる。
また、目的地までおよび目的地周辺の移動手段についても、より多くの人がレンタカーまたは所有する車による移動を選ぶようになるなど、「新しい生活様式」にしたがい、健康・安全対策に重きを置く旅行者が増え、それが早い段階で旅のスタンダードとなることが予想される。
6. サステナブルへの高い意識
世界中の旅行者の53%が「将来はよりサステイナブルに旅行したい」と答えていることから、2021年以降はよりエコフレンドリーな傾向が見られると予測される。
新型コロナウイルスの感染拡大により、旅行者の53%が「すべての移動・渡航制限が解除された際には、旅行先でのゴミの削減やリサイクルを検討する」と答えており、旅行者が自身だけではなく旅行先も守ることに取り組む姿勢がみられる。
また、63%の旅行者が混雑した観光スポットを避ける傾向からも、今後旅行業界は、魅力的なオフシーズンの旅行パッケージの提供を、そして観光地は、旅行者を呼び込むために混雑をコントロールする手段を取り入れる必要がある。
7. ワーケーションのニーズ拡大
コロナ禍において在宅勤務やリモートワークが浸透し、今後も継続していくことが見込めることから、仕事とプライベートを効率的に組み合わせた長期旅行を選ぶ人が増えることが予想される。
旅行者の37%はリモートワークできる宿を予約することを既に検討しており、40%は「リモートワークできるのであれば隔離措置を取ってもいい」と回答していることから、今後旅行サイトや宿泊施設はWi-Fi環境ほかビジネス設備の宣伝も重視するようになるとみられる。
また労働者の52%は出張先での滞在を延長してレジャーの時間を楽しみたいと答えていることからも、出張を最大限に活用したワーケーションのニーズが高まると予想される。
8. 自然を堪能する「シンプルな旅」
パンデミックがはじまって以来、同社ではシンプルな喜びを味わう旅のテーマが支持され、ハイキングが94%、きれいな空気が50%、自然が44%、リラクゼーションが33%と自然を堪能できるテーマが支持されている。また調査によると、「旅行先でアウトドアや家族とのアクティビティなどシンプルな体験を楽しみたい」と回答した旅行者は69%にのぼり、さらに56%の旅行者は、「人が少ない地方の場所で自然を満喫したい」と回答した。
2019年は64%の旅行者がホテルでの滞在を好んでいたのに対し、2020年では42%の旅行者が「今後はホテルよりもバケーションレンタルタイプの宿またはアパートメントなどの民泊に滞在したい」と回答した。また、食事環境についても、46%の旅行者がレストランでの外食ではなく宿で食事を取ることを希望しているため、今後バケーションレンタルタイプの宿では、設備の整ったキッチンが提供されることが重要となると予想される。
9. テクノロジー利用による安心・手軽な旅行体験
同社の調査では、64%の旅行者が「旅行時に健康上のリスクをコントロールするためにテクノロジーが重要である」と答えており、63%の旅行者が、「宿泊施設は最新のテクノロジーを活用して旅行者の安全を確保することが必要だ」と回答している。テクノロジーの価値が明らかになるにつれ、人々はさらに旅行においてテクノロジーに頼る傾向になると考えられる。
ブッキング・ドットコムのシニア・バイスプレジデント兼CMOのアルヤン・ダイク氏は、「相互理解を深め、遥か遠方の土地を探求したいという人類共通の願望を高める旅行には、世界中の人々に成長・平等・繁栄をもたらす主要な牽引力として、これまで以上に大きな力を持って戻ってくる唯一無二のポテンシャルがあると私は信じています。弊社、旅行者の皆様が世界中で忘れられないような素晴らしい体験ができるよう、どこからでも、どんな端末からでも、最大級の選択肢やお得な料金、そして最上級の使いやすさをご提供するために尽力いたします」と述べている。
【参照ページ】28ヶ国2万人の旅行者による新たなデータや調査から予測 ブッキング・ドットコム、旅行の未来に関する9つの予測を発表
【ウェブサイト】Booking.com
【関連ページ】Booking.com、2021年にトレンドとなる5つの旅行タイプを予測
(Livhubニュース編集部)
松岡 のぞみ
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