米国ニューヨーク市のブルックリン区にある「Wythe Hotel(ワイスホテル)」は、同市初となる「Regenerative Travel(リジェネラティブ・トラベル)」に加盟する宿泊施設となった。Regenerative Travelとは、文字通りリジェネラティブ・ツーリズム(再生型観光)を推進する独立系ホテルのコミュニティだ。
ワイスホテルは、1901年に石と木で建てられ製糖会社の樽製造や繊維工場として使われた工業用建物を再利用するかたちで設計された。建物の解体時に出た材料は、地元の職人の手によって客室の家具に生まれ変わり現在も使われている。
運営においても、多様なバックグラウンドを持つスタッフの雇用、地域社会への寄付や支援、廃棄物の削減、生態系の回復の支援などさまざまな取り組みを行っている。
特にホテル内のレストラン「ル・クロコダイル」では、持続可能な方法で生産するローカル生産者から食材を仕入れ料理を提供しつつ、ニューヨーク湾のカキの再生を目指す非営利団体「ビリオン・オイスター・プロジェクト」と提携し、10億個のカキが再びニューヨークに生息できるようにすることを目指し支援活動も行っている。カキには水をろ過して生態系に恩恵をもたらすという特徴に加え、カキの付着した岩礁は、海洋生物の棲み家となり多様性を高め、高潮から海岸線を守る役割もある。
2023年9月20日には、脱炭素社会を推進する気候変動イベント「クライメート・ウィークNYC」にて行われるリジェネラティブ・トラベル・サミットがワイスホテルで実施される予定だ。
この毎年恒例のイベントには、旅行業界の専門家やリーダーが集い、環境と地域社会に重きを置く持続可能で再生可能な旅行の促進について議論する。主なテーマは「リジェネラティブな目的地と政策の枠組み」「スタートアップと技術革新が気候変動と旅行をどのように変革するか」「旅行の脱炭素化:ネットゼロへの道」「農場から食卓まで: フードシステムと再生型農業の未来」といったもの。
ワイスホテルのオーナー、ピーター・ローレンス氏は「私たちは、地域社会と世界に利益をもたらす、持続可能で再生可能な観光産業を創造します。今回のサミットは、その目標達成に向けた重要な一歩です。」とRegenerative Travelに述べている。
ワイスホテルの取り組みは、アメリカにとどまらず世界の大都市で、再生型観光へ意識が高まる呼び水になるかもしれない。
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Wythe Hotel
住所:80 Wythe Avenue, Williamsburg, Brooklyn NY, 11249
公式サイト:https://www.wythehotel.com/
【参照サイト】Regenerative Travel
【参照サイト】Regenerative Travel Summit 2023: SEPTEMBER 20, 2023 WYTHE HOTEL BROOKLYN, NEW YORK

拓馬

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