“そこでしかできない特別な体験”が地域を守り育てる「コミュニティツーリズム」のすすめ

誰もが訪れる観光地を素通りし、オーセンティックでローカルな場所へ向かい、地元のコミュニティと直接触れ合い、現地の伝統や生活を肌で感じる。

「着地型観光」とも呼ばれるコミュニティツーリズムは、”そこでしかできない特別な体験”を求める旅行者と、”地域を守り育てたい”という地元民の思いをつなぐ旅のあり方だ。地域コミュニティが主体となって自分たちが住む土地の環境や暮らしを守りながら観光PRを行い、地域活性化を目指すツーリズム形態で、オーバーツーリズムの緩和にもつながる持続可能な観光だとされている。

カナダ・トロントに拠点を置くNPO「PLANETERRA」は、世界各地でそんなコミュニティツーリズムを通した地域支援を行う団体だ。


“観光が正しく行われた時、みんなが勝つ” 

PLANETERRAによると、観光業は800兆円規模の世界産業でありながら、世界の地元企業やコミュニティの多くがその恩恵を十分に受けられていないという。とくに有名な観光地の陰に隠れたローカルなエリアは、観光資源や開発・プロモーション力が乏しく、人材や資金も足りていない。そのため過疎化が進み、若者は教育や就労のために町を出ることを余儀なくされることもある。また、素晴らしい伝統工芸や技術など土地に息づく貴重な文化も伝わることなく忘れ去られてしまうといったことが起きている。

そこで彼らは、旅を通してそんな世界各地の地域コミュニティに新たな機会や収入・雇用をもたらすため、また地域コミュニティ固有の伝統工芸や料理、祭事などを伝承していくため、そして土地の環境を守るために、企業やNPOと提携してコミュニティツーリズムの実践的なトレーニングや資金サポート、市場アクセスの機会づくりなどを行っている。

例えばネパール・パナウティでは「ローカルリビング・ツアー」を通して、地元女性たちがホームステイのホストとして収入を得られるよう支援を行う。またインド・デリーでは、若者主導のウォーキングツアー「シティ・ウォーク」プログラムを通して、若者がガイドとして外国語などの新たなスキルを身につけ、安定した収入を得られるようサポートしている。環境保全を目的とした活動としては、プラスチックをはじめ海洋ごみ問題に苦しむモルディブにて、地元企業と提携してプラスチック回収を組み込んだツアーの開発も行った。

このようにコミュニティツーリズムを推進することは、地域コミュニティに経済的な安定をもたらすだけでなく、その土地固有の文化の継承、環境保全にもつながる。

土地に根付き暮らす人たちに出会い、その土地の本当の姿を見聞きして忘れられない体験をしながら、それと同時にその場所に住む人の暮らしを豊かにすることや彼らが守りたい文化や環境を守るサポートができるなら、そんなに嬉しいことはないだろう。

PLANETERRAは旅を通じてより多くの人々の生活を向上させるため、コミュニティーツーリズムの活動を始めて今年で20周年。2030年までに、彼らはコミュニティ・ツーリズムを体験する旅行者を5,000万人まで増やし、10億ドル相当の収入がコミュニティにもたらされ、コミュニティ・ツーリズムを通じて350万人の生活が改善されることを目標に活動している。

PLANETERRAがサポートする世界各地のコミュニティツーリズムのプロジェクトは、PLANETERRA公式サイトページ内でテーマごとに知ることができる。旅行者と地域コミュニティが互いにポジティブな影響を与え合う、サステナブルでローカルな体験をぜひ見つけてみてほしい。

【参照サイト】PLANETERRA
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Arisa Kawano

旅は国内も海外も街歩き派。レトロモダンな雰囲気の場所・モノコトに心惹かれがちです。フランスとカナダ滞在を経て、多様なライフスタイルに触れライターに。つい足が向くのは海沿い、テラスのある店、昔ながらの路地、蚤の市など。"バル飯"や"アペロ"が口福ワードです。