長崎市は、日常の中に異文化が溶け込む街だ。
その背景には、江戸時代初期まで貿易港として、ポルトガル、オランダ、イギリス、現・中国など、世界中と交易が行われ、鎖国時代においても長崎だけはオランダと中国との交易が許可されていたという歴史がある。こうして様々な国の文化が混ざり合って独自の文化が育まれてきたのが、長崎市なのだ。その文化は複数の国の要素が混在するカオスさ=「わからん」とかけて、「和華蘭文化」と呼ばれている。
そんな長崎市では、観光スローガンに「暮らしのそばに、ほら世界。」を掲げている。これには、暮らしのそばにある世界の理由に焦点を当て、知っていくことで、長崎での旅をより思い出深い体験にしてほしいという想いが込められている。
長崎市の新たな観光街づくりプロジェクト
「選ばれる21世紀の交流都市」を目指し、観光街づくりに取り組んでいる、一般社団法人長崎国際観光コンベンション協会(DMO NAGASAKI)は、長崎市への観光を促進するための新たな価値創造プロジェクト「長崎市サステナブルツーリズム~知識が景色を変えていく~」を本格始動させ、公式WEBサイトを公開した。
本プロジェクトは、「訪問客・事業者・市民」の三方だけでなく、「社会・経済・環境」の三方も意識した「六方良し」を目指していく取り組みだ。そのうえで「知識が景色を変えていく」プロジェクトが大事にしている考え方が3点ある。
1)今、見えている「景色」を変える
本プロジェクトが提供する旅では、全行程にわたって専門ガイドが同行し、訪れる場所の文化的背景やストーリーを伝える。ガイドが同行することで、「なぜこの場所や史跡が大切に残されているのか」「なぜこのような文化や習慣が生まれたのか」など、観光地などの背景にある歴史を詳しく知らせる。それにより、ただ「綺麗」や「楽しかった」だけではなく、旅人の内面や価値観、そして今見えている「景色」を変える旅を創る。
2)訪れる人・営む人・暮らす人、みんなで未来に紡いでいく
多くの観光客に「消費」してもらうために知恵を絞ってきた「大量生産・大量消費」の時代。そうした時代を経て、今は持続可能な社会のために何ができるかという視点を持ち、訪れる人・営む人・暮らす人、それぞれが地域の日常を体感し、交流を通して長崎市の価値を未来に紡いでいけるような旅創りを目指す。
3)価値が地域へ還元され続ける仕組みをつくる
「知識が景色を変えてゆく」では、旅人が支払うツーリズム費の一部を「長崎サステナアクション」として、消失の危機にある名産品の継承や、入場料を徴収しない施設等の維持・保全等、付加価値の高い滞在体験を提供し続けるために役立てていく。旅や観光で生まれた価値が、そこに住む人々の生活を支え、地域の文化や習慣を守り、持続可能な街づくりを応援できるように。
暮らしのそばに、ほら世界。
長崎市がつくり始めている「長崎市サステナブルツーリズム~知識が景色を変えていく~」は、旅を通じてそこで見る景色や得る体験をより深く、印象深いものにしていく。そして、訪れる人・営む人・暮らす人みんながつながり、地域の文化や歴史がこれからも続いていく動力となる。
「暮らしのそばに、ほら世界。」
それがもつ意味を探しに、ぜひ長崎市を訪れてみてはいかがだろう。
【参照サイト】長崎市公式観光サイト「travel nagasaki」
【関連ページ】自然、文化を味わう旅「アドベンチャーツーリズム」の可能性。大正大学・岩浅有記准教授インタビュー
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