「千年先も、いつくしむ島へ」宮島が訪問税の徴収を開始

宮島

はるか昔から、神が宿ると崇められきた宮島。世界遺産と名を馳せる、厳島神社が創建されたのは約1400年前のこと。

無数の命が息づく原生林を有し、匠の知と技が光る海上神殿には、今もなお多くの人が訪れる。

神と、自然と、人。

ともに生きるためには、奇跡の循環を繰り返さなければならない。これまで根付いてきた歴史や文化を継承し、地球を育む自然を守り、島を愛する人の想いに寄り添う。

神をいつきまつる島を守る

「訪れる人も、住まう人も、島の守り人に」

そうした願いを込めて、世界遺産・宮島を擁する広島県廿日市市は、「千年先も、いつくしむ。」プロジェクトと題し、先人から守り受け継がれてきた宮島の自然や文化を、世界共通のかけがえのない財産として未来に持続可能な形で継承していくための取り組みを行っている。

この度、2023年10月1日より、宮島へ1回訪問するごとに、ひとり100円の訪問税の徴収を開始した。訪問者は宮島へ訪れる際、券売機や窓口で乗船券を購入する時や自動改札機(交通系ICカード)などで訪問税を支払う。

もちろん、宮島町区域の住民や区域内にある事務所・事業所に通勤する方(要件有)、区域内にある学校に通学する方(要件有)など一部の人には課税されない。

この宮島訪問税は、訪問客の受入環境整備や文化への理解、エコツーリズムの推進など、様々な取り組みに役立てる予定なのだそう。

活用例1)訪問者の受入環境の整備
公共交通機関の維持管理、無電柱化、観光案内やトイレの整備、弥山展望台や登山道の管理など

活用例2)文化や歴史への理解を促進
文化財や歴史的建造物の保存、歴史民俗資料館の管理など

活用例3)自然環境に負荷の少ない観光
エコツーリズムの推進やウォーターサーバーの設置など

住んでよし、訪れてよしの宮島へ

宮島ではさまざまな人が、島を守る活動をしている。

「瀬戸内海国立公園 宮島地区パークボランティアの会」の会長を務める末原義秋さんは、国立公園の保護や適正利用のために、海岸や登山道の清掃、植物や野鳥などの自然環境調査および観察会の実施などを行っている。

「街の中にいる鹿を見るとかわいいという気持ちは分かりますが、野生動物には餌を与えないでください。動物のためになりません。ごみも持ち帰るか、桟橋前のごみ箱に集めるかを徹底してもらいたいです。自然を守り、野生動物と共存するために必要なことなのです」

末原さんのこの言葉には、「宮島が好きで、宮島を守りたい」という想いがある。現に、宮島には建物の高さや色の規制、立ち入り禁止など、たくさんの決まりがある。しかし、神の島に暮らす人々は、それを当たり前のこととして生活してきたからこそ、宮島は守られてきた。

持続可能な観光地域をめざすべく、訪れる人も住まう人も同じ想いを共存することが大切だ。

今回の取り組みや「千年先も、いつくしむ。」プロジェクトを通じ、宮島に暮らす人や宮島で働く人、宮島を訪れる人、宮島に想いをはせる人など、宮島に関わるすべての人が島の守り人になることが期待される。

いざ、住んでよし、訪れてよしの宮島へ。

【参照サイト】千年先も、いつくしむ。宮島
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明田川蘭

大の旅好き&温泉好き。一人で海外へ、一人で車を走らせて日本の名湯へ。アフリカ大陸と北極南極以外に降り立ち、行った国は30を越え、巡った温泉地は100を超える。沖縄観光メディアの編集者やホテルメディアの立ち上げ経験あり。「旅は人の心を豊かにする」と本気で思い、記事を執筆している。