泊まれるイケア。スウェーデンにある「IKEA Hotell」でイケアの世界に身を浸す

IKEA Hotell

イケア(IKEA)に行けば、ふかふかのソファーに座ったり弾力のあるベッドに寝転んだりして北欧家具を体験できるばかりでなく、植物由来の原材料を使用したプラントベースのミートボールならぬプラントボールなど、リーズナブルなスウェーデンフードも堪能できる。

「このままイケアに一晩泊まれるな……」と思った人は、一人や二人ではないだろう。実のところ、彼らは世界で一つだけ、イケア発祥の地スウェーデンのエルムフルトにてホテルを運営している。

イケアは、1943年に実業家のイングヴァル・カンプラード氏が創業。スウェーデン・エルムフルトに1958年に記念すべき1号店がオープンすると、上質の家具が手頃な価格で手に入ることが評判になり、世界中から人々が訪れるようになった。そうしたなかで一日中ショッピングに夢中になったあとに、人々が休息をとったり食事をしたりする場所が必要だと感じたイングヴァル氏は、1964年に宿泊施設Motell IKEAを開設した。

当初は25室だったが、「IKEA Hotell」と改名した現在は254室まで拡張。規模は大きくなったが、当時の趣きが一部にまだ残されている。開業当時にあった銅製ルーフは再利用され、現在では受付デスクに姿を変えている。そして石灰岩を敷き詰めたフロアや柔らかい光を放つ暖炉などは、オープンした頃からあるものだという。IKEA Hotellには、もちろんイケア家具が備わっており、本場のスウェーデン料理を楽しむことができる。

ホテルの客室には欧州におけるアクセシビリティ意識の高まりを受けて、バリアフリー仕様が施されている部屋も用意されており、ハンディキャップのある人も過ごしやすくなっている。

小さな子供から大人まで誰もが宿泊できるが、IKEA Hotellが歓迎するのは人ばかりではない。

裏庭には、蜂のためのハウスも用意されている。ミツバチといえば「蜂蜜」を連想する人が多いだろう。世界中で様々な植物の受粉を媒介し、人が食する農作物の実に7割の受粉を媒介している。こんな働き者のミツバチだが、現実は決して甘いものではない。環境の激変で個体数が激減しているのだ。

洗練されたファーニチャーに囲まれてほのぼのとしながら、ハニカム構造の中の小さなミツバチになったつもりで、はにかむ……。なんとも贅沢なひと時だ。IKEA Hotellでは、インクルージョンや自然環境についても体感しながら学ぶことができる。

イケア唯一のホテルがあるエルムフルト市には2016年にイケア博物館もオープンしたことからイケア愛好家の聖地となっており、世界中から人々が巡礼に訪れている。

IKEA Hotellは歴史と伝統はそのまま残し、変えるべきものはアップデートされ、まさにイケアの哲学を体現している施設と言えるだろう。

【参照サイト】IKEA Hotell
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拓馬

昔からつい遠くに趣いてしまう癖があり、気がついたら海外でノマド(遊牧民)に。インターネットという大自然の恩恵に浴し、世の中を斜に眺めながらの独り言。リアルの大地とデジタルという名の大空のはざまにさすらい、いまだ見ぬ世界への旅路を今日もゆく。