「旅先で、サステナブルな行動を取りたいですか?」
何かの調査でこう質問されたら、あなたはどう答えるだろう。悩みつつも多くの人がおそらく「はい」と答えるのではないだろうか。実際の調査結果においても、この質問に対し、82%が持続可能な行動を取りたいと答えている。しかし、本当に行動を変えたのは22%に過ぎないといった結果も出ている(※)。
こうしたサステナブルな行動を選択したいという願望と、実際の行動との間にある大きなギャップを埋める手助けをするために、デンマークの首都コペンハーゲンで新たな取り組みが開始された。
デンマークのコペンハーゲン観光局は、旅行者がコペンハーゲン滞在中に環境に配慮した活動に参加した場合に報酬がもらえる制度「CopenPay」を発表した。行楽シーズン真っ盛りの7月15日~8月11日までをパイロット期間とし、その状況を踏まえて2024年いっぱいまで実施される予定だ。
具体的には、自転車や公共交通機関の利用、ごみ拾い、都市農園でのボランティア活動といった環境に配慮したアクションをすると、コペンハーゲンの文化やローカル体験などを特典として得られるというものだ。特典には、無料のガイド付き美術館ツアー、無料のカヤックレンタル、地元の作物を使った無料のベジタリアンランチなどがある。
visit copenhagenのWebサイトには、2024年7月12日現在、24のアクションと特典の一覧がマップ上に掲載されている。
例えば、廃棄物発電所に屋上スキー場を組み合わせた世界初の施設「Copenhill(コペンヒル)」では、自転車もしくは公共交通機関を使い来場した観光客に、スキー場での滑走時間を20分延長する特典を提供している。スキーをしない人は、コペンヒルの屋上カフェから景色を無料で楽しむことができる。
Image via VisitCopenhagen
デンマーク政府の統計によると、2023年のコペンハーゲンの旅行者の宿泊数は1200万泊以上だ。「CopenPay」は観光により生じる廃棄物の削減や二酸化炭素排出量の削減といった、環境負荷の相殺促進を目的に設計された。
コペンハーゲン観光局のリッケ・ホルム・ペーターセン広報は「海外旅行の際には航空機や車での移動が環境汚染の原因となります。私たちにできることは、目的地で人々により持続可能な行動を促すことです。人々が環境に配慮した考え方を持ち帰ることができたら、それがなによりのお土産です」とBBCに述べる。
観光客を巻き込む取り組みを行うことで、コペンハーゲンの環境が改善されるだけではなく、環境に配慮した選択や行動をする人々が世界中で増えることにつながる可能性もある。世界各地で気候変動や環境問題の意識が高まり、取り組みが波及する効果も期待できるかもしれない。
日本でも「来たときよりも美しく」という言葉がよく使われ、片付けて帰っていく日本人旅行者に現地の人々が驚くこともしばしばだ。海外から日本への観光客のインバウンド需要が増える中、コペンハーゲンの「CopenPay」のような取り組みは、日本各地でも十分に実行可能だろう。なお、CopenPayは観光客のみならず居住者も利用可能な取り組みだという。
より多くの人が、サステナブルな行動を選択しやすいようにしていくためにも、規制や制限だけではない工夫が求められている。
※ Copenhagen launches new green experience economy initiative, CopenPay
【参照サイト】CopenPay
【参照サイト】BBC/Rewards for tourists who litter pick in Copenhagen
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拓馬

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