世界に先んじて産業革命が起こった欧州は、それにより必要に迫られた気候変動の対策や環境保全でも世界をリードする存在だ。
そんな環境に関する取り組みが盛んなヨーロッパで志の高い宿泊施設や生産者が集まり、有機認証団体のサポートを受けて2001年に発足したのが「ビオホテル協会(Die BIO HOTELS)」だ。
「ビオ(BIO)」は、オーガニックの意。ビオホテル協会の厳しい基準を満たして認定を受けたBIO HOTEL®(ビオホテル)では、食事や飲み物、トイレタリー(石けん、シャンプーなど)はオーガニックを用い、ベッドリネンやタオル、そして建材や内装材には、可能な限り自然素材を採用。廃棄物の削減とリサイクルを積極的に行い、CO2排出を抑えるために再生可能エネルギーを活用してエネルギー効率の向上も行う。
全ホテルのうち21は排出した温室効果ガスを何かしらの対策によって相殺したクライメイト・ニュートラル(カーボンニュートラルとほぼ同義)なホテル。26のホテルは、オフセットした温室効果ガス排出量が、自分たちが排出した量よりも多いクライメイト・ポジティブな宿である。BIO HOTELS®においてクライメイト・ポジティブと記述されているホテルは排出した温室効果ガス排出量の2倍のオフセットをおこなうことに同意している。(※2023年7月時点)
ドイツ、オーストリア、スイス、フランス、イタリア、スペイン、ギリシャなど欧州の国々を中心に点在するBIO HOTEL®(ビオホテル)は、BIO HOTELS®のサイトにて見ることができる。ホテルは、ベジタリアン・ビーガン対応の料理を提供する宿、電波がつながりにくい宿、家族での滞在に最適な宿、サウナのある宿、ヨガを楽しめる宿、クライメイト・ポジティブな宿など多様なカテゴリーから探すことができる。
オーストリア・チロル州のピルにあるBiohotel Grafenastは、山間部にある木造建築が魅力だ。建材にはアレルギーフリーの木材を使用。窓からは美しい谷間のパノラマビューを臨むことができる。サウナも完備しており、備品や食材はオーガニックにこだわっている。
福島の「おとぎの宿 米屋」は日本の木造家屋だが、一般的な旅館のイメージとは異なる温かみのある空間設計。全室にかけ流し温泉が付いており、自然とリラックスしてしまう雰囲気だ。
引用元:おとぎの宿米屋
旅行はフライトによる移動などが伴うことも多く、環境負荷の大きいことが近年クローズアップされている。「旅行をしないことが地球にとって一番サステナブルだ」と言えばその通りかもしれないが、それは人の心身にとって果たしてサステナブルかは疑問符がつくだろう。人は探究心が旺盛で文化的な生き物であり、旅行は人々の生活をそして経済・社会・環境を豊かにする可能性を秘めている。
そこで、いかにして旅行者や滞在する場所、そして地球にとっても持続可能な「サステナブルツーリズム」に取り組むかが今後の旅行の鍵になる。
日本でBIO HOTEL®認証を取得している宿泊施設は、まだ数えるほど。今後、様々な価格帯や形態でその選択肢がもっと増え、サステナブルな旅を生活者が選択しやすくなることを願う。
世界のBIOホテルを探す「Die BIO HOTELS」
https://www.biohotels.info/en/
【参照ページ】BIO HOTELS JAPAN
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拓馬
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