被災地をリジェネラティブ農業で再生。町の未来につながるクラウドファンディングが石巻市雄勝町でスタート

東日本大震災から12年の月日が流れた。

津波被害を受けた宮城県石巻市雄勝町では、防潮堤などの工事がやっと3月に終わったばかり。一方で津波被害のあった町の中心部は更地のままだ。雄勝の地を花や緑で覆い、多くの人が通い・関わり続ける場にするチャレンジが始まった。

第一弾に、ファームプロジェクト「農業と町づくり」をテーマにクラウドファンディングを開始。ファーム立ち上げに必要な種・苗、獣害対策用の電柵や農機具・機材などを購入する資金を集める。ファームプロジェクトを通して、リジェネラティブな農業で生物多様な場をたくさんの人とともに学びながら育んでいく雄勝町を目指す。

サステナブルに生きることを学ぶMORIUMIUS(モリウミアス)

MORIUMIUSは、自然豊かな場所にある「こどもの複合体験施設」。震災復興への想いから、高台に残る築93年の廃校を新たな学び場として生まれ変わらせた建物だ。

普段は、サステナビリティの考え方に基づいた宿泊体験を行っており、子どもたちに自然から水や空気、食物や木などのエネルギーをもらって生きているということを、学んでもらう場所になっている。

2020年にクラウドファンディングで支援をいただきながらプログラムをオンライン化し、家にいながら自然とつながる「MORIUMIUS at home」がスタート。2021年からは艇庫の指定管理を石巻市から受け、海の学び拠点を運営。2022年には日本財団 渚の交番事業の支援を受けて、1年間モリウミアスで暮らす漁村留学が始まり、初年度は中学生3人が日々循環する暮らしを実践するなど、MORIUMIUSの活用が広がっている。

「MORIUMIUS FARM」で森と海から町の未来をつくる

MORIUMIUSが大切にしている「循環する暮らし」。暖房や給湯などの熱源は木を燃やし、生ゴミは堆肥にする。生活排水は微生物の力でリサイクルする。

これまでの経験を活かし、リジェネラティブな農業を実践することで、人がより良い自然環境を育むとMORIUMIUSでは考えている。微生物や虫をはじめとした生態系を取り戻し、自然環境を改善して、そこで生きる人間たちも無理なく持続できる農業を目指したファームプロジェクトがスタートした。

農業とまちづくり

長期間の取り組みとなるファームプロジェクトの中で、今回のクラウドファンディングは第一弾と位置づけ、「農業と町づくり」をテーマに実施。まずは畑と土づくりをスタートさせる。無機質な山土が整備された場所は、元々は雄勝中学校と町の中心部だった場所。クラウドファンディングの支援者にも参加してもらいながら、種を蒔き、育てることで有機物が豊かな土壌へと変えていく。

第一弾のクラウドファンディングでは、ファーム立ち上げに必要な種・苗、獣害対策用の電柵や農機具・機材などを購入する資金を集める。支援者には、現地で一緒に土づくりや植樹といったファームの立ち上げに参加できるツアーなどの機会も予定されている。

【支援の使い道】
・無機質な土壌を有機質にするために緑肥による土づくり
・畑の整備として木柵や電柵を張って鹿の対策
・農機具や機材の調達

より多くの人とつながり、町をつくる

今回のクラウドファンディングでは、資金を集めることはもちろん、この取り組みを広く発信することで認知を高め、関わる人を増やすことも目標にしている。

現在のモリウミアスを再生する際には、卒業生であった地域の住民をはじめ、全国から集まった学生や社会人、大学や企業、プロフェッショナルといった約5,000人もの方が関わり、つくり上げた。これまでの関わりや、これからの関わりを増やしていくことで、それから8年、頻繁に町に通い、雄勝の住民に寄り添い、自然を整備し、モリウミアスの運営や事業そのものに関わり続ける仲間も増えている。故郷のように思い、住民でない人も自然と町を育むように。

今回のMORIUMIUS FARMでも多くの人が関わり合いながら、学び合い、一緒に夢を実現させる仲間を増やして場を育み、豊かな町をつくることがゴールだ。

秋には「食と発酵」をテーマに、ぶどうの栽培やワインの醸造、発酵食品の加工に向けたクラウドファンディング第二弾を予定している。24年春にはワインぶどうの苗木が届き、植樹も行い、その後は醸造・食品加工の施設の整備も予定している。今後もMORIUMIUS FARMと多くの人々が関わり、雄勝町の未来をつくっていくだろう。そんな未来にもし共感を感じたら、ぜひ現地での活動を体感してみてはいかがだろうか?

【参照サイト】MORIUMIUS FARM クラウドファンディングページ
【参照サイト】MORIUMIUS 公式サイト