台湾発、デザインによる地域活性化プロジェクト!「集集のんびり学校」でリラックスを学ぶ

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現代社会は、忙しさとストレスで満ち溢れている。職場や家庭での役目を果たすべく日々奔走し、パソコンやスマホを開けば、SNSやネットニュースから流れる情報の波に圧倒され、心身ともに疲れ果てている人も多いだろう。しかし「休んだ方がいい」「心を落ち着かせた方がいい」と頭では理解していても、セルフケアのための時間を作るのは意外にも難しいものだ。そしていざそういった時間ができても、何をすればいいのか分からなくなってしまうこともあるだろう。

このような現代人の多くが抱える悩みを解消すべく、台湾で画期的なプロジェクトが立ち上がった。台湾南投県の集集鎮で2022年から実施されている「集集のんびり学校」(集集集度放空学校)では、生活の中でリラックスすることの大切さを学ぶことができる。大人になると、のんびりすることが「怠けている」とみなされることもあるが、リラックスしながら、歴史や文化への知識が深まり、地域復興にも貢献できるとしたらどうだろうか。集集のんびり学校は、そんな理想的なサイクルを生み出している、「大人の学び場」である。

「集集のんびり学校」とは

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Image via 集集集度放空学校

集集のんびり学校(集集集度放空学校)は、台湾南投県の集集鎮で、ダイナコムウェア台湾が2022年から実施しているプロジェクトだ。ダイナコムウェア(華康字型)は、フォントの開発・販売を行っている企業で、アジアを中心に40カ国以上で豊富な実績を持っている。

集集のんびり学校は、100年の歴史を持つ鉄道支線・集集線の周辺地域を舞台に、リラックスとストレス解消をテーマにした36の体験型レッスンを提供。訪れる人々はリラックスしながら地域の歴史や文化に触れることができるのが魅力だ。集集のんびり学校は、地域の持続可能性と観光振興に大きく貢献し、2023年度のグッドデザイン賞も受賞している。

「集集のんびり学校」が生まれた背景

台湾南投県の集集やその周辺の町々は、かつては栄えていたものの、自然災害や人口流出によって、その魅力が風化しつつあった。しかし、この地域には集集線をはじめとする、豊かな歴史的景観と文化があり、そこに身を置くことで、誰もが「頭を空っぽ」にすることができる。そこで、ダイナコムウェア台湾は、集集をリラックスできる町として再定義し、「集集のんびり学校」を企画した。集集のんびり学校は、新しい形の地域ブランディングであり、SDGsの目標11「包摂的で安全かつ強靱(レジリエント)で持続可能な都市及び人間居住を実現する」とも一致している。

ダイナコムウェアの代表取締役・羅慧美は、集集のんびり学校について「優れた地域マーケティングとは、その場所本来の魅力の上に築かれるべきです。ストーリーテリングやまちづくり、そしてデザインや宣伝を通して、より多くの人々に知らせ、触れさせるのです」と語っている。

リラックスしながら地域を知る、多彩なレッスン

集集のんびり学校では「頭を空っぽにする」というコンセプトのもと、「のんびり図工」や「のんびり体育」、「のんびり自習」、「のんびりグルメ」など、36種類の多彩なレッスンが用意されている。これらのレッスンに参加することによって、参加者はリラックスできるのはもちろん、集集線とその周辺地域を深く知ることできる。

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空っぽ勉強会・ベンチ練習/Image via 集集集度放空学校

例えば、源泉駅周辺では、「川のせせらぎを聴く練習」が行われ、地元の歴史文化に精通した識者とともに、濁水渓を水源とする八堡圳を訪れ、川のせせらぎを聴きながら歴史を学ぶ。また、「バナナの木の下で友達作り練習」では、バナナの木の下でキャンプをし、キャンプファイヤーや星空を楽しんだり、「木工練習」では林班道体験工場で木工作業を体験し、オリジナルの作品を完成させたりするなど、多彩なレッスンを用意。その他にも、「求愛練習」や「猫駅長練習」など、自分自身と向き合う時間を提供するレッスンもある。

集集_蕉朋友練習

バナナの木の下で友達作り練習/Image via 集集集度放空学校

集集の地域活性化という視点でも、大きな成果を上げた

集集のんびり学校の成功により、集集を訪れる人々の数は4倍に増加した。また、集集に行けない人々のためにSNSでオンラインイベントも実施され、リアルとウェブの双方で盛り上がりを見せた。これにより、集集の魅力を再発見する人が増え、町の持続可能な発展にも寄与している。

集集鎮長である陳紀衡は、集集のんびり学校のコンセプトを大いに支持し、「イベントによって集集が広く知られることに喜びを感じるほか、小さな町に再び光が灯ることにも感動を覚えています。人口が流出してしまった小さな町に再び人が集まり、人々が結束力を固め、この町本来の魅力を発掘し、新たなイメージと融合させること。それこそが、地域マーケティングの持続的発展の最大の体現だと思います」と語っている。

台湾旅行で「集集のんびり学校」に参加してみよう

「集集のんびり学校」のレッスンは、2種類に分かれている。1つは「漫歩練習(ゆっくり歩く練習)」や「坐冷板凳練習(冷たいベンチに座る練習)」のような、集集を訪れて観光客が自分で楽しむことができるもの。もう1つは陶芸体験の「捏捏練習(こねこね練習)」のような、現地の組織とコラボして主催されるレッスンがある。

2024年現在、前者のレッスンはそのまま集集を訪れることで楽しめるが、後者のレッスンについては、観光客が自分で現地の組織に確認する必要があるので注意が必要だ。これらの点を踏まえた上で、台湾旅行を計画している方は、ぜひ集集のんびり学校に参加して、リラックスすることの素晴らしさを思い出してほしい。

【参照サイト】集集のんびり学校オフィシャルwebサイト
【参照サイト】集集のんびり学校 Instagram
【参照サイト】ダイナコムウェア台湾(華康字型)
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関俊行

編集や執筆、音楽制作など幅広く活動中。タワレコ運営メディアMikikiで『台湾洋行』を連載。近年はwebや雑誌、ラジオなどさまざまなメディアで、台湾を中心にアジアの音楽・カルチャーを発信している。