2021年1月、新型コロナウイルスのパンデミックが世界中で起きる中、インドにおいて持続可能で責任ある観光に関する意識を醸成することをビジョンに掲げ、エシカルな旅を推進するスタートアップ「Shoshin Tribe」がスタートした。
彼らは「旅」を、単に非日常なインスタ映えする場所で写真を撮りシェアするようなことではなく、訪れる土地や人々、文化、そして客観的に物事を見ること、判断しないことを学び、物事をありのままに受け入れ、経験することと捉えている。創業者たち自身が旅を通じて、自らの人生が変わる経験をし、旅が自分を形成するきっかけとなったことから、彼らは旅が持つ ”変革” の力を信じているのだ。
そんな「Shoshin Tribe」が、「Odyssey Travel Scholarship」という取り組みを始めた。
これは旅の本質を見直すべく発足した奨学金制度で、様々なバックグラウンドを持った数名の若者が選ばれ、旅費全額の補助を受けて旅に出る。
2022年に行われた「Odyssey Travel Scholarship 2022」では、400もの応募者の中から選ばれた8人が35日間の旅に出て、インド各地を訪れ、保全活動家や指導者、歴史家、語り部、地域住民などと深く対話し、関わりながら、地域社会とその文化について学んでいった。旅中では、最小限の荷物、ペットボトル利用なし、地元の家庭に滞在、清掃活動、地元の交通手段の利用など、環境負荷軽減やローカル経済の活性などサステナブルな方法を選択した。
参加者の一人であるアプラジータは、「この旅は、私を感情的、精神的、肉体的に進化させ、コンフォートゾーンから自分自身を押し出すのに役立ちました」とTHE LOGICAL INDIANの取材で語っている。
旅は多くの学びをもたらし、人を成長させる。自分が今まで当たり前だと思っていたことが、国や地域によっては、全く通用しない。そのような場面に出くわすごとに、頭の中で固定観念が崩れ去り、世界に対する新たな智識が形成されてゆく。
旅とは清らかな川の流れや澄んだ風のようなもの。その中に身を委ねることで、心が洗われ、鼓動を感じ、生きていることを実感する。
いにしえから人は好奇心と冒険心を持ち、旅をして世界中に進出してきた。今日でも遊牧生活をする人々がいる。
そしてコロナ禍を契機に、家畜の群れを伴わずに移動する新たなかたちの遊牧民が増えてきている。これは、新時代の人間の原点回帰とも言うことができるだろう。
旅に出掛けてみよう。「Shoshin Tribe」がそう誘っている。
【参照サイト】Welcome to the Magical World of SHOSHIN TRIBE
【参照サイト】Odyssey Travel Scholarship: A Shoshin Tribe And goSTOPS Initiative That Promotes Sustainable And Responsible Travelling
拓馬
最新記事 by 拓馬 (全て見る)
- 飛行機代に「環境チャージ」を含めます。ルフトハンザ航空が始めた持続可能な世界のための対応 - 2024年8月15日
- 欧州でCO2以外の温室効果ガス対策も加速。航空会社の報告を義務化へ - 2024年7月24日
- コペンハーゲンが環境に配慮した観光客への報酬制度「CopenPay」を開始 - 2024年7月12日
- 市民科学がネイチャーポジティブを加速させる。自然保護科学とエコツーリズムを結びつけた観光客参加型の生物多様性保全プロジェクト - 2024年6月26日
- 空の旅のフードロスをなくそう。航空会社の取り組みと私たちにできること - 2024年4月4日