奥多摩エリア、沿線まるごとホテルに。路線から旅先を選ぶという選択肢

沿線まるごとラボ

新宿からJR青梅線に乗り、快速90分で奥多摩まで。青梅から奥多摩の間は「東京アドベンチャーライン」と呼ばれ、四季折々の大自然を満喫しながらハイキングやキャンプ、湖でカヤックといったアクティビティを楽しむことができる。

そんななか、JR東日本の無人駅の駅舎をホテルのロビーに、沿線集落の古民家(空き家)をホテル客室として改修し、沿線全体をホテルとして生まれ変わらせる「沿線まるごとホテル」プロジェクトがJR青梅線沿線にて進行中だ。ホテルのキャストとして接客や運営を担うのは、地元の事業者や住民たち。

2020年12月、JR青梅線沿線にてプロジェクトの本格展開へ向け実証実験がスタートした。はじめに考案されたのは「1つの鉄道(青梅線)、2つの駅(白丸駅、奥多摩駅)、3つの集落(奥多摩町白丸集落・境集落、小菅村中組集落)」を軸とした宿泊・体験プランだ。

内容は、無人駅の白丸駅にチェックイン後、集落をホッピング、宿泊場所である山梨県小菅村の古民家ホテル「NIPPONIA 小菅 源流の村」にて地域食材を味わい、翌日に奥多摩駅でチェックアウトするというもの。

沿線まるごとホテル

2021年2月から4月の期間中、沿線自治体や地域住民、事業者ら協力のもと、1日3組限定で実施した同プランはまたたく間に完売。森を進みながら木々に触れ、源流にかかる橋を渡り、古民家で奥多摩のガストロノミーやお酒に舌鼓を打つ、そんな五感を心地よく刺激する1泊2日は、後日実施した参加者アンケートで高い評価を得た。

そして今年6月1日、「沿線まるごとホテル」の新拠点「沿線まるごとラボ」がJR青梅線の無人駅・鳩ノ巣駅に誕生した。

東京アドベンチャーライン

「沿線まるごとラボ」では、プロジェクトを手がける沿線まるごと株式会社の社員と、JR東日本の社員、そして地域住民・事業者が「沿線まるごとコンシェルジュ」となり、観光客に地域の魅力を伝え、地域住民との交流を図る。

沿線まるごとラボ

コンシェルジュは、ツアーや貢献活動、特産品といった地域資源を発掘して磨きあげ、コンテンツ化するための研究をしており、現在は、わさび農家によるわさび収穫ツアーや清掃チームによる棚沢集落クリーニング、地域振興財団によるホタルウォッチングなど、奥多摩の土地に根づいた体験を考案している。

2023年度内には、鳩ノ巣駅周辺の空き家を改修した古民家ホテルや古民家レストランの開業が予定されており、「沿線まるごとラボ」はホテルのフロントとしても機能していく。今後は、JR青梅線沿いの古民家のリノベーションを進め、宿泊と体験型コンテンツの開発と販売を進めていく見通しだ。

沿線まるごとホテル

毎年、多くの人びとが森林浴のために訪れる奥多摩。「沿線まるごとホテル」では、これまで下車することのなかった無人駅をふくむ沿線一帯が、ひとつの世界として旅行者を迎え入れる。暮らす人だけが知る奥多摩の魅力を、まずは「沿線まるごとラボ」で再発見してはいかがだろうか。

沿線まるごとホテル

【参照サイト】沿線まるごとホテル | 無人駅からはじまる源流への旅 期間限定プラン
【参照サイト】東京アドベンチャーライン:JR東日本
【参照サイト】JR東日本スタートアッププログラム2020の各賞が決定!

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秋山 綾

アパレル企業、女性誌の編集ライターを経て、紙媒体からウェブ媒体へ移行。幼少期に始めた音楽を通じて表現に興味をもち、好奇心の赴くままに不定期に芸術、文学に関する創作活動を行う。