暮らすように旅をする。「TENJIKU(テンジク)富士吉田」で地域課題に挑む新しい旅のカタチ

旅先で訪れた町を好きになるきっかけは、「その町で出会った人」じゃないだろうか。「その人との思い出」が旅に彩りを加え、また「その人」に会いたくなり、「その人が住む町」を好きになる。

・・・とは言っても、旅で出会う人は宿泊先やホテルなど限られることが多く、なかなか「思い出」をつくるまでコミュニケーションをとるのが難しかったりする。相手にとっても数あるお客さんの1人で終わってしまったりもする。

でも、地域の人の困りごとをその人と一緒に解決したら? 
それは「町で出会った人と思い出」をつくることになるのではないだろうか?

今回の記事で紹介するのは、そんな地域の困りごとを解決する「ミッション」に挑むことで、地域の人と出会い、仲間になり、旅人が「一生モノの地域と出会う」サービス「TENJIKU」と、その新拠点「TENJIKU富士吉田」。11月24日に開催されたオープニングセレモニーで出た話もまじえて紹介していこう。

新しい旅のカタチ「TENJIKU」とは?


「TENJIKU」とは、地域課題を解決する「ミッション」をとおして、地域の人たちとより深く関わりながら“仲間”になれる新しい旅体験を提供するサービスである。そして「ミッション」解決の対価として、提携施設の宿泊費が無料となる。運営をしている株式会社SAGOJO(サゴジョー)は、7年前に旅人と地域(地方自治体や企業)をマッチングするプラットフォーム「SAGOJO」を開始し、3年前に「TENJIKU」が生まれた。

SAGOJOの仕事の中には動画や記事の制作やSNS発信などのスキルが必要な仕事もあり、報酬が発生するものもある。しかし、今回紹介する「TENJIKU」でのミッションは、スキルや実績に自信のない旅人でも取り組むことのできるもので、「地域に関わりたい」という思いがあれば誰でも「TENJIKU」を利用した地域のお手伝い体験ができる。

SAGOJO取締役のスガタカシさんは「地域の課題解決は、旅人にとって地域を好きになるきっかけになります。地域の人と一緒にやることで、顔の見える関係になり、仲間になれる。ただ個人で地域の課題にアクセスするのは難しく、ここに価値があると思い、このサービスを始めました」と話す。

「TENJIKU」の拠点は、青森県青森市から鹿児島県種子島まで全国に12箇所あり、富士吉田は13箇所目の拠点となった。利用者の多くは、20代〜40代で、「観光にとどまらず暮らすように旅をしたい」と考える人が多い。スガさんによると「3割以上がリピーターになっており、実際に働き方、暮らし方の価値観が変わって移住した人やTENJIKUをきっかけにスキルアップして、場所にとらわれない働き方に挑戦する人もいます」とのこと。

約40箇所のサテライトオフィスを持つ富士吉田市

富士吉田市内にあるコワーキングスペース「ドットワーク富士吉田」

新しく拠点になった富士吉田市は「富士吉田市まるごとサテライトオフィス」として、市内のコワーキングスペース、カフェ、ラウンジ、そして富士急ハイランドなど約40箇所にワークスペース提供施設を用意している。新宿から約2時間の富士山駅に直結したビル内にある「ドットワークPlus」は、コワーキングスペース機能、カフェ機能、イベントスペース機能を有し、町の中での「ハブ」になる施設となっており、「TENJIKU富士吉田」はこの施設を拠点としている。

駅ビルにあるから買い物に来た人など幅広い層の市民とつながることができ、人や情報の「ハブ」となれる。オープンしてから、来場者をデータベース化しており、仕事のマッチングなども行なってきた。

ここを運営するのは、「富士吉田市まるごとサテライトオフィス」を市から委託されているキャップクラウド株式会社。この社員2名が「ドットワークPlus」のコミュニティマネージャーであり、「TENJIKU富士吉田」の地域案内人となっている。

富士吉田市らしい「ミッション」とは?

実際に富士吉田市に来たら、どのような「ミッション」に挑戦できるのだろうか?
地域案内人の渡邊さんに聞いてみた。
「富士吉田市は富士山の登山口があります。市内の富士山ベストスポットをSNSで発信したり、富士山を背景にワーケーションをしている姿を発信したりするのもよいですね。冬には雪が積もるので、雪かきなどのニーズもあるかもしれません。市内の宿泊施設数カ所とも提携しているので、海外からのお客様向けの通訳なども今後必要になるかもしれません」

ちなみに他の地域では、農業体験、祭りやマルシェの手伝い、宿泊施設の掃除や、地元商店でのシール貼りなどさまざまな「ミッション」が行われてきたそう。スガさんはその価値を、「一見よくある作業でも、地域の人と一緒に行うことで地域の課題が見え、地域の素顔に触れることができて、非日常な体験に変わります。そしてこの価値は、お手伝いすることだけではなく、地域の人に顔を知ってもらえる、自分が信頼できる人間であることを証明する1つの手段につながります」と話した。

■編集後記

今回オープニングセレモニーに参加するため富士吉田を訪れて、駅のホームから見える富士山の大きさに驚いた。一度見ているはずなのに、町を散歩しながらふとした曲がり角の先に雄大な富士山を見ると、そのたびに思わず息を飲んでしまう。

でもふらっと歩いただけでは、富士山が見えても町の人とは出会えない。富士吉田の人に出会うために、この「ミッション」に挑戦する新しい旅に出よう。できたら小学生の娘も連れて。「ただいま」と帰れる町が増えるのは、彼女の将来の選択肢を増やすことにつながるから。

【参照サイト】TENJIKU
【参照サイト】SAGOJO
【参照サイト】富士吉田市まるごとサテライトオフィス
【参照サイト】ドットワーク富士吉田

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こが ようこ

国内外問わず旅好き。昔から時刻表を見るとどこにでも行ける気がする。千葉でシェアスペース&キッチン運営。地方での働き方、農業などにも興味あり。小学生娘がいて、似顔絵を描いてもらった。