旅行とは多くの人にとって非日常的な体験。「普段しないことを存分に満喫したい!」と思うのは当然のこと、かもしれない。しかし、それが現地で暮らす人々の目には非常識に映ってしまうこともしばしば。
「現地にお金を落としているのだから大目に見てほしい」というのは、いささか傲慢ではないだろうか。「銭も出すが、ごみも炭素も出すし、資源もたっぷり使う」では地球も地域も回らなくなってしまう。
2001年にアメリカで設立されたアクティビストカンパニー「Responsible Travel(レスポンシブルトラベル、責任ある旅行)」は、レスポンシブルトラベルのパイオニア。人々がサステナビリティ、SDGsと声を上げ始める以前から、「旅は自分だけでなく訪れる場所や人々、そして地球にとっても良いものであるべき」という考えを広めようと活動してきた。現在彼らは旅行代理店として、厳しい基準で精査された世界中のレスポンシブルな旅行プランを各国の厳選された旅行代理店と深く連携しながら提供している。
サイト内には彼らのPURPOSE(目的)としてこうした言葉が書かれていた。
To inspire travellers to discover our beautiful and fragile planet and act urgently to restore nature and reduce carbon.(私たちの美しく壊れやすい地球を発見し、自然回復と二酸化炭素削減のために緊急に行動するよう、旅行者を鼓舞する) 引用元:Responsible Travel
この目的を達成するためにも、今後彼らが提供する旅において増やしていきたいものとして「プラスチックフリーな休暇、絶滅危惧種の保全、再野生化に寄与する休暇、ビーガン食の選択肢、再生可能エネルギーの宿、飛行機に乗らない列車の旅」を提示。減らしたいものとしては「飛行機での国内旅行、肉や乳製品を食べる、顧客一人あたりの飛行機の旅の数」を挙げている。
実際にサイト上でも、HOLIDAY TYPES(休暇の種類)というタブには、「アドベンチャー、ビーチ」といった休暇の選択肢に加えて「ビーガン&ベジタリアン、フライトフリー、海洋保護、野生動物保護」といったものが並ぶ。またオーバーツリズムの一因となるのを避けるうえで現地の混雑状況や、その他天気や野生動物の移動、主要なお祭りなどが加味された「特定の観光地を訪れるのに最適な時期をまとめた便利なガイド」なども提供されている。
Livhubは、良質な旅の機会をより多くの人に開き、旅を通して世界を明るい方に向かわせたいという想いのもとメディアを運用しているが、Responsible Travelは実際にこの言葉を体現するような活動を多く行っている。その一つが「TRIP for a TRIP」だ。これは、Responsible Travelで旅行を予約するごとに、追加料金を支払うことなく世界の恵まれない子供一人に日帰り旅行を贈ることができるという仕組み。旅は視野を広げ、時にその後の人生を支えるような忘れられない楽しい体験を与える。しかし全ての人が旅できる環境にあるわけではない。自分が旅することで誰かの旅の機会を開くことにつながるこの仕組みは日本でも広まってほしいものだ。
「旅先で良い行いをすることで、それは巡り巡って自分の旅にも良い恩恵をもたらす」というのがResponsible Travelの考え方。旅に限らずとも、「徳を積む」という思想が日本にも古くからあるように、利他は巡り巡って自分にかえってくるはずだ。
Responsible Travel
https://www.responsibletravel.com/
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拓馬

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