「次の休み、ごみ処理場に遊びに行かない?」

市役所前でバスを降りる。閑静な住宅街に囲まれた道を2分歩くと、目の前に博物館か美術館のような建物があらわれた。

ここは東京都武蔵野市にあるごみ処理施設「武蔵野クリーンセンター」。ごみ処理場と聞くと、臭くて汚く、町の隅っこに追いやられているような嫌われ者のイメージがあるかもしれないが、この場所は違う。建物の隣にはテニスコートや野球場があり、訪れた日も多くの人が運動に勤しんでいた。

グッドデザイン賞も受賞したこの施設は、市民参加の議論を経て「ごみから学び、集い、まちに溶け込み、まちにつながる」をテーマにつくられた場所。施設には見学コースが設けられており、開館時間であれば予約なしで自由に見学ができる。

ということで見学をすべく中に入ると、にこやかに受付の方が出迎えてくださった。外観もさることながら、中も本当に美しい…改めてごみ処理場とは思えない場所だ。

武蔵野クリーンセンター中

なんだか覗き窓のような場所を見つけて歩いて行って驚いた。額縁の中におさめられた綺麗な一枚の写真かのように、ごみ収集車がそこから見えたのだ。

ごみ収集者の見える小窓

(こんなにごみ収集車を美しいと思ったのは初めてだ…)

次から地下のスペースに出たり入ったりするごみ収集車を眺めていると、後ろから高い声がした。振り返ると小さな子がお母さんと一緒にクリーンセンターに入ってきたところだった。

「しゅーしゅー!がーがー!ごみごみ」

嬉しそうに男の子はごみ収集車の元へ走ってくる。ひっきりなしに入っては出ていくごみ収集車を見終えたその子が次に向かった先は、収集車に集められたごみが毎日80台分、100トン集められる場所「ごみピット」。ここは5階建てのビルがすっぽりと入るほどの大きさで、約6日分のごみを溜めることができる場所なのだという。5階建てのビルでいち地域の6日分…我々は日々どれだけ多くのごみを出しながら生活しているのか、体感としてその総量をイメージするのに役立つ光景が目の前に広がっていた。

ごみピット

ごみピットはまるで巨大なUFOキャッチャー。大きなクレーンがウィーンと動き、ごみを持ち上げては離す動作を繰り返す。ごみは温度が下がると燃やす時に有害物質が出やすくなる。それを防ぎ、均一に規定温度で燃やすため、巨大クレーンがごみをかき混ぜているのだ。

その光景を見ながら、男の子は目を輝かせていた。ごみ問題…と考える一方で、巨大クレーンの姿にワクワクと目を輝かせる自分がいることにも気づいた。

「親子連れでいらっしゃる方はたくさんいらっしゃいますよ。学校終わりには、中学生なども遊びにきてホールで遊んだりしています」

武蔵野クリーンセンターホール

ホール

受付の方がそう教えてくださった。施設内を歩いていると「武蔵野クリーンセンター屋上のとりくみ」といったポスターを見つけた。

武蔵野クリーンセンターの屋上には野菜を育てるベジタブルガーデンと、廃材などを使って作られたリサイクルガーデンがある。ベジタブルガーデンでは、地域の希望者が持ち寄った生ごみで作った堆肥を用いて野菜づくりをしているという。訪れた日は、生ごみの持ち寄り日だったようで、施設の外には市民の方がバケツをもって来ている姿が見られた。屋上は予約制で見学も可能だ。

引用元:武蔵野クリーンセンター

「『むさしのエコreゾート』は行かれましたか?もしまだであれば、是非行ってみてください。ここをまっすぐ行って左の階段を降りた先にあります」

武蔵野クリーンセンターの隣、元々は旧・武蔵野クリーンセンターが入っていた建物を一部リノベーションして作られたという施設に向かう。

エコリゾート

むさしのエコreゾート

天気の良い平日の午前中。お散歩コースにもってこいなのだろう、てくてく歩く小さな子供連れのお母さんを2、3組見かけた。改めてごみ処理場の隣だとは思えない光景だ。

天井が高く心地の良いこの空間は、地球温暖化を背景に、ごみをはじめさまざまな環境について市民や事業者、市などが一緒に考え、学び合い、行動・活動するための環境啓発施設。

エコリゾート ものづくり工房

むさしのエコreゾート内、ものづくり工房

環境啓発施設という漢字6文字を見るとなんだか難しそうに思えるが、エコリゾートのなかにはワクワクがいっぱい!施設内の一角は「ものづくり工房」になっており、厚紙や牛乳パック、はぎれ布や毛糸、宝箱と書かれた段ボールに入った空き箱の山など、ごみになってしまうはずだった宝物が山ほど置いてある。

空き箱

宝箱

アップサイクル猿

はぎれなどから作られたお猿さん

施設の奥のカフェスペースには本棚があり、「今、気候が変だ!」「生物多様性。つながるいのち」「もりやみどりをかんじてみよう」など、環境問題を考えるうえでヒントや学びになりそうな本がたくさん。最高な本棚に、取材ということも忘れて、長い間眺めてしまった。武蔵野市民以外もだれでも無料だというから驚きだ…。

本棚

「ごみ問題」「環境問題」と聞くとなんだかネガティブで暗いイメージがどうしても付き纏うけれど、武蔵野クリーンセンターとむさしのエコreゾートではポジティブに明るく楽しみながら、そうした問題と対面することができた。

苦しいものは何度も見られない。でも楽しいものなら何度だって見に来たい。次は子供も連れて「学び」にというより、「遊び」に来よう。

武蔵野クリーンセンター
・公式HP:https://mues-ebara.com/
・住所:武蔵野市緑町3丁目1番5号

むさしのエコreゾート
・公式HP:https://musashino-ecoresort.com/
・住所:武蔵野市緑町3丁目1番5号

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飯塚彩子

“いつも”の場所にずっといると“いつも”の大切さを時に忘れてしまう。25年間住み慣れた東京を離れ、シンガポール、インドネシア、中国に住み訪れたことで、住・旅・働・学・遊などで自分の居場所をずらすことの力を知ったLivhub編集部メンバー。企画・編集・執筆などを担当。