旅好きの人にとって、好きな場所を移動しながら仕事ができる環境は理想だろう。しかし子どもができて親になると、家庭内外での仕事に忙殺され、気軽に旅をするのが難しくなる。
デンマークの起業家であり、働きながら中国、フランス、スペイン、ネパール、アルゼンチンなどを旅してきた、ニコライ・アストラップさんと妻のミシェル・ロードゴー=イェッセンさんも、同じような壁にぶつかっていた。
そこで彼らは、その解決策として、働く親たちが“デジタル遊牧民”として複数の家族と共に世界中を旅する「トラベリング・ビレッジ」を開始。旅をしながらワーク・ライフ・バランスを維持することが、子どもを持つ親たちにとって不可能ではないことを示したのだ。
デンマークの「bofællesskaber(生活協同型住居)」からインスピレーションを得たトラベリング・ビレッジは、2024年1月から5月の4ヶ月間で、ベトナムのホイアン、タイのコ・ランタ、日本の京都の3ヶ所をめぐった。
参加者は、デンマーク、アメリカ、インド、アイルランド、イタリア、オランダ出身の19家族。1歳から14歳までの34人の子どもを含めて総勢70人だ。共同住宅の手配、共同活動、共同保育が提供され、働く親をサポートするように設計されたプログラムでは、約5週間滞在する各拠点でコミュニティを育成し、絆を育みながら家族がくつろぐための生活空間を作り出す。
トラベリング・ビレッジでは、各家族がプライバシーを確保するための十分なスペースを考慮して、指定の半径約2.4キロメートル以内に現地の宿を見つけるよう奨励。また、グループ全体が顔を合わせる場として、共同食事会を週2回開催することにした。
親たちは、複数の滞在先でコミュニティを作り、子どもたちと一緒にサッカーゲームやヨガワークショップ、地元の文化体験などに参加する。またプログラムでは、子どもたちは地元の子どもたちと交流し、遊びや探検を通して自主的に学べるよう、毎日数件のイベントが用意される。そうして家族は数週間ごとに居住地を変え、新しい環境に適応しながら、仕事、社交、家族の責任をバランスよく維持していく。
「It takes a village to raise a child(子どもを育てるには村が必要だ)」ということわざがアフリカにあるように、安全で健康的な環境を子どもたちに提供するには、多くの人々が知恵や力を貸してくれるコミュニティ、つまり「村」が必要だ。その村は、必ずしも定住地である必要はない。
デジタル遊牧民というユニークな環境での暮らしは、地域や家族同士の助け合いなど何世紀にもわたって人々の間で培われてきたつながりが基盤となっている。参加メンバーとのつながりや、他国のコミュニティの中で知識を共有し互いに学び合う相互成長は、このプログラムに参加する親にとっても子どもにとっても、かけがえのない冒険となることだろう。
※本記事は、ハーチ株式会社が運営する「IDEASFORGOOD」からの転載記事となります。
【参照サイト】Traveling Village
【参照サイト】A solution for working parents who want to travel
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