※本記事は、ハーチ株式会社が運営する「IDEAS FOR GOOD」からの転載記事となります。
IDEAS FOR GOOD が運営するソーシャルグッドな体験プログラム、「Experience for Good」。今回の舞台は、穏やかな海と気候、美しい自然、豊かな食と文化に恵まれ、今も伝統的なモノづくりの文化が根付く場所、「瀬戸内」だ。
旅のテーマは、気候危機をはじめとする喫緊の社会課題を前にして、世界中で注目が高まっている新たな経済・社会概念「サーキュラーエコノミー(循環経済)」。瀬戸内には、この「循環」の本質を考える上でのエッセンスが詰まっている。
今回の旅では、瀬戸内の歴史や文化に根付く「モノづくり」、現在の直線型経済が抱える矛盾を映し出す「廃棄物」問題、そして未来に向けた問いを与えてくれる「アート」という3つの異なる視点から、瀬戸内の歴史・現在・未来を捉え、参加者の皆様とともに「人間と自然との関係性」について再考し、循環経済の実現に向けたヒントを探求していく。旅の見所をいくつかご紹介したい。
「石」から学ぶ、人間と自然の関係の本質
「花崗岩のダイヤモンド」とも呼ばれる日本一の銘石、「庵治石」の産地であり、世界的な彫刻家イサム・ノグチが居を構えたことでも知られる香川県高松市の牟礼町・庵治町。この「石」というものと向き合うことは、自然と向き合うことを意味する。というのも、石は人間が最も最初に使いこなした道具であり、技術や文明の始まり。そして、石を彫刻することは、人間が自然に介入する最も原始的な行為でもあるからだ。
かつてドイツ人アーティスト、ヨーゼフ・ボイスは「社会彫刻」という概念を提唱し、人は誰もが創造性を持った芸術家であると主張した。まさに私たち人間は、あらゆる活動を通じて地球に彫刻を加え、その形を少しずつ変えてきたのだ。それらの行為がいま私たちにどのような影響をもたらしているのか。私たちは彫刻家の集団としてどのようにコレクティブによりよい未来を削り出していけるのだろうか。
本ツアーでは、約3万枚の庵治石を用いてつくられた交流拠点施設「やしまーる」や、スタイリッシュなプロダクトデザインを通じて庵治石の魅力を現在に伝える「AJI PROJECT」を訪れ、自然を作り変えてきた人間の過去の歴史に思いを馳せながら、人間と自然との関係性の本質に迫っていく。
日本最大の産廃事件の現場・豊島が教えてくれること
そのようにして、石から始まった人間のテクノロジーや科学は、長い時間を経て私たちの暮らしを便利で豊かにしてくれた一方で、大量生産・大量消費・大量廃棄というシステムと、それに伴う負の外部性を生み出した。その象徴的出来事とも言えるのが、高度経済成長期の1970年代に始まった香川県・豊島を舞台とする日本最大の産廃不法投棄事件・豊島事件だ。
豊島事件は、循環型社会や住民自治のあり方など、日本の持続可能な未来を考える上で重要な教訓を数多く残してくれている。それにも関わらず、ほとんどの人はその本質はおろか、事件のことすらも知らないままだ。そして、そうした歴史の傍らで今も瀬戸内海には多くのプラスチックごみが溢れ、衣類回収現場には一度も着られずに捨てられた服が大量に積み上げられている。今回の旅では、豊島事件の当事者として不法投棄業者や行政と闘った豊島住民、石井亨さんから、廃棄物問題の本質について学ぶ。
さらに、現在も続くリニアエコノミー(直線型経済)の矛盾を体感するべく、大量の廃棄衣類が積み上がる山城四国リサイクルプラザ・ウエス工房を訪れるほか、瀬戸内の海洋ごみ問題に長らく取り組み続けているNPO法人アーキペラゴの森田桂治さんに、海洋ごみ問題との向き合い方を学ぶ。
循環する未来に向けた実践者の挑戦
今回の旅で大事にしているのは、日本社会や瀬戸内が直面する課題について学ぶだけではなく、その解決に向けて動き出している地域の実践者とも出会い、つながるという点だ。
香川県・庵治町から瀬戸内の文化と暮らしに根付いた循環型ライフスタイルの発信を目指す拠点「庵治サーキュラーパーク」の開業を目指す、地域アパレルメーカーの「中商事」、香川の名産であるうどんの残渣を活用したバイオマス発電に取り組む「うどんまるごと循環プロジェクト」など、瀬戸内のユニークな実践者の元を訪れ、参加者とともに瀬戸内から日本の循環する未来を考え、共創につなげていく。
アートを通じて、問いを立てる
さらに、この旅に欠かせない最後の要素が「アート」だ。旅路では、庵治石を美しく加工するAJI PROJECTに加えて、英国の美術雑誌で世界一と称されたこともある、自然と建築が一体化した「豊島美術館」を訪れる。
大自然とアートの中に身を置き、自らの五感を自然の中に開いていくと、言葉に頼らずとも自然と心の内側から未来に向けた「問い」が生まれてくる。瀬戸内芸術祭でも知られる現代アートの聖地・瀬戸内で、アートを鏡にして自分と向き合い、心の声と内なる願いに耳を済ませてみよう。旅を終えて日常に戻ったとき、その内なる声が次のアクションに向けた大きなエネルギーとなるはずだ。
こんな方におすすめ
- 地域における循環型の取り組みに興味がある方
- 地域で循環型の取り組みを実践したい方
- 瀬戸内地域に興味がある方
- アート/日本の伝統を通して社会を捉えてみたい方
- サーキュラーエコノミーに興味がある人とつながりたい方
- 循環型のライフスタイルを実践したい方
- その他、興味がある方であればどなたでも大歓迎
今回の訪問先
やしまーる(屋島山上)~庵治石とアートと建築~
2022年8月、高松市屋島の山上にオープンした地域の交流拠点施設「やしまーる」。瀬戸内国際芸術祭の作品の一つであり、瀬戸内海や市街地を望む同施設では、ゆったりと季節の移ろいを感じながら、源平合戦をテーマとしたパノラマアート作品などを通して屋島を知ることができる。3万枚の庵治石を使用した屋根瓦でつくられた屋根も見どころで、建物自体がアート作品になっている。3日間を過ごす香川を一望できる屋島山上が、旅のはじまりの地だ。
AJI PROJECT ~石から人間と自然との関係を問い直す~
石の産地である高松市・庵治で、産地の抱える課題と向き合いながら、その魅力を国内外に発信し、歴史ある産業を後世に遺したいと設立された株式会社蒼島。本ツアーでは、同社が運営する「暮らしに寄り添う庵治石プロダクト」をコンセプトにしたブランド「AJI PROJECT」のギャラリーを見学する。
最近では、加工した石よりも、採掘現場から持ち運ばれたそのままの石を求める人もいるという。自然を加工することで価値を生みだしてきた人間社会や経済のあり方について根本から見つめ直すきっかけをくれるのが、庵治石の産地の現場なのだ。人間と自然との関わりを考える上で欠かせない「石」を通じて、モノとの向き合い方を本質から考えてみたい。
山城四国リサイクルプラザ・ウエス工房 ~リニアエコノミーの矛盾~
廃棄された衣料品を回収し、ウエス(清掃に用いられる布)を製造、出荷を行っている山城四国リサイクルプラザ・ウエス工房。毎日のように中古、新品問わず大量の衣料品が運ばれてくる場所だ。ここでは、衣料品の回収の流れや廃棄の課題などをスタッフの方に伺いながら、施設を見学する。
売り場に並んでいたのとほぼ同じ姿で、値札もタグもついたままに回収現場にたどり着いた大量の衣服たち。東南アジアで作れらたこれらの服の中には、一度も着られることがないまま再び東南アジアへと輸出されるものもある。大量に積みあがった衣服を目の前にして、あなたは何を思うだろうか。大量生産・大量消費を伴うリニアエコノミー矛盾を体感することは、サステナビリティについて考える上での強い原体験となるだろう。
うどんまるごと循環プロジェクト ~地域の未利用資源を、地域の力に ~
「もったいない」を合言葉に、2012年に結成されたNPOや企業、行政、農家、教育機関、ボランティアなどが関わる「うどんまるごと循環コンソーシアム」。産学民官のこの協働プロジェクトでは、廃棄処分されるうどんを「資源」として有効活用しながら、新しい協働の循環型社会づくりを目指した活動を行っている。今回は、うどん残渣や食品廃棄物からバイオガスをつくり発電する「うどん発電」を見学する。
瀬戸内ビーチクリーンアップ ~問題ではなく、解決策になるツーリズムを~
2日目の朝は、瀬戸内海に漂着するごみを回収するクリーンアップ活動を行う。牡蠣の養殖パイプをはじめとして、様々な海洋プラスチックが漂着する瀬戸内海の海岸を綺麗にしながら、地域の海洋ごみ問題について身体で学ぶ。
庵治サーキュラーパーク ~循環する瀬戸内の未来をともにつくる場所~
高松市庵治町に拠点を構え、地域に根差したモノづくりに取り組むアパレルメーカーの中商事株式会社が、2022年11月にオープン予定の地産地消型の複合施設「庵治サーキュラーパーク」。「地域で循(めぐ)る暮らしかた」をコンセプトとした同施設では、「衣・食・住」から、地域内で資源を循環させる暮らしの提案を行っていく。地産地消をコンセプトにしたカフェやショップなどが集まるほか、瀬戸内ならではの「アート」と資源循環を組み合わせたワークショップなどの体験もできる場所だ。当日は、オフィス2Fにあるニット工場も含めて、施設内を見学できる時間を設ける予定。繊維のモノづくり現場の雰囲気を味わおう。
豊島のこころ資料館 ~豊島事件に学ぶ、目指すべき循環経済の未来~
香川県・豊島を舞台とする日本最大の産業廃棄物不法投棄事件、豊島事件。自然豊かだったこの地には、1970年代ごろから大量の産廃が持ち込まれ、違法に処理されるようになり、長期にわたって環境や健康に大きな被害を与え続けてきた。2017年に廃棄物の撤去が完了してからも、現在まで地下水の浄化などの課題が残っている。今回は、そんな豊島事件の当事者であり、不法投棄業者や行政と闘い続けてきた石井亨さんにお話を伺う。
持続可能な社会の対極にある「大量生産・大量消費・大量廃棄社会」について、歴史的な出来事を通して考えながら、実は当時から目指されてきた「循環型社会」の未来のあり方を問う時間になるはずだ。
豊島美術館 ~アートを通じ、循環する未来に向けて自らと対話する~
ツアーの最後には、瀬戸内海を望む豊島唐櫃(からと)の小高い丘に建設された「豊島美術館」を訪れる。休耕田となっていた棚田を地元住民とともに再生させ、その広大な敷地の一角に据えられた水滴のような形をしたこの建物で、大自然とアートに触れる時間を過ごす。広大な空間の中で静かに佇み、頭ではなく「心」で自分自身と対話しながら、旅を締めくくる。
企画概要
- 日程:2022年11月25日(金)~27日(日)(2泊3日)
- 参加定員:13名(先着順、最小催行人数:7名)
- 参加費用:税込58,000円(※1)
- 旅行代金に含まれるもの:現地バス代、乗船料、食事代(7食:1日目昼・夜、2日目朝・昼・夜、3日目朝・昼)、体験料・入場料・見学料、旅行保険代
- 添乗員:なし(ただし、記事下部に記載のハーチ株式会社スタッフが同行いたします)
- 主催:東交トラベル株式会社(※2)/企画:ハーチ株式会社
- 締め切り:2022年11月1日(火)
※1 全国旅行支援による割引が可能です。対象者は、11/25(金)、26日(土)の2日間が割引対象となり、お一人様あたり8,000円ずつ、 合計16,000円割引されます。27(日)は貸切バスなどの交通を使用しないため、適用外となります。また、地域クーポンはお一人様あたり11/25(金)が3,000円、11/26(土)が1,000円となります。なお、これらの割引を受けるには、ワクチン接種や陰性証明などの確認が必要です。ツアー初日、高松駅で集合時に、①運転免許証などの本人確認ができるもの②ワクチン接種または陰性を証明できるものの両方を確認いたします。
※2 香川県高松市朝日新町32-10 営業時間 平日・土曜 9:00~17:00 日曜・祝日はお休み
香川県知事旅行業登録2-239 総合旅行業務取扱管理者 川畑亮
連絡先:ryo19763411@yahoo.co.jp
ツアー全体に関するご質問などは上記メールアドレスにお願いいたします。なお、見学・体験など本ツアーの内容についてのお問い合わせはIDEAS FOR GOODお問い合わせフォームよりお願いいたします。
旅のしおり
1日目(11月25日)
9:00:高松駅集合
9:35~10:10:やしまーる(屋島山上)見学
11:00~12:00:AJI PROJECT見学
12:10~13:00:昼食
13:50~14:50:衣料品回収現場見学
15:25〜17:00:うどんまるごと循環プロジェクトにてバイオマスプラントの見学
17:45:宿到着
18:00~19:00:1日目振り返り
19:30~21:00:夕食
2日目(11月26日)
8:00~9:00:朝食
10:00~12:00:ビーチクリーンアップ(ビーチのごみの状況次第で、直前に場所を決定します)
12:30~13:15:昼食
13:20~14:40:庵治サーキュラーパーク見学
14:45~15:30:海ごみに関するワークショップ
16:30:フェリー乗船
17:10:豊島 家浦港着、宿へ
18:00~19:30:夕食
20:00~21:00:2日目振り返り
3日目(11月27日)
7:30~8:30:朝食
9:30~11:30:産廃跡地、豊島のこころ資料館見学
12:05~13:15:昼食
13:35~14:45:豊島美術館見学
15:05:家浦港着、フェリー乗船(フェリーにて振り返り)
16:00:高松港着、現地解散
宿泊場所について
- 1日目:昭和の宿 こみの、せせらぎの宿 里山(香川県木田郡三木町小蓑)
上記二つの宿に男女分かれてご宿泊いただきます(※ 人数の関係で、夕食会場であり宿泊可能な集会所にご宿泊いただく可能性もございます。)。
- 2日目:古宿 たかまつ屋(香川県小豆郡土庄町豊島家浦)
かつて旅館だった建物を宿屋として再びオープンした「たかまつ屋」にご宿泊いただきます。
※両日共に男女別の相部屋となります。お部屋割りのご希望は承りかねますので、ご了承ください。
持ち物について
- 動きやすい服装(スニーカーの着用をおすすめいたします)
- 防寒具・雨具(薄手のレインコート・折り畳み傘など)
- マスク(感染症対策のため)
- 酔い止め(1日目の宿が山の中にあります。また豊島まではフェリーに乗船しますので、酔いやすい方はご準備ください。当日は購入の時間がとれませんので、あらかじめご持参いただくことをおすすめします)
新型コロナウイルス感染症対策について
新型コロナウイルス感染症対策のため、プログラム中は飲食時を除いてマスクの着用をお願いいたします。また、到着時には体温検査を実施します。少しでも体調が優れない方、体調に不安がある方は参加をお控えください。
ツアーガイド紹介
加藤 佑(かとう ゆう)
IDEAS FOR GOOD 創刊者。Harch Inc.の創業者。循環経済専門メディア「Circular Economy Hub」、横浜市における地域循環経済プラットフォーム「Circular Yokhama」などに従事。キーワードは「循環思考」。英国CMI認定サステナビリティ(CSR)プラクティショナー
伊藤 智子(いとう ともこ)
IDEAS FOR GOOD編集部。大学時代の1年間をフランスで過ごした経験から、移民難民との共生に関心を持ち、大学卒業後は英国大学院にて開発人類学を専攻。帰国後、多様な人たちを巻き込みながらポジティブに社会課題を解決したいと、IDEAS FOR GOODに参画。取材や記事編集、ニュースレターでの発信、YouTubeの動画制作などに携わる。
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