線路はつづくよどこまでも。電車に乗って5時間で行ける範囲を見える化する地図「Chronotrains」

train-europe

スロートラベルという名のもと、欧州を中心にいま「電車」の旅が注目され始めている。

理由は明快。飛行機や自家用車に比べ、電車利用時のほうが二酸化炭素排出量が圧倒的に少ないからだ。国土交通省のデータによると、鉄道のCO2排出量は、航空の約6分の1程とされている。(※1)

そうした背景もふまえ、ヨーロッパで開発されたサービスがある。Chronotrainsは地図上で任意の場所を指定すると、そこから電車に乗ってそれぞれ1時間、2時間、3時間、4時間、5時間で到達できる範囲が色分けされて表示される。例えば、ロンドンを選択したら、ロンドンから電車を使って1時間、2時間、3時間、4時間、5時間で行ける範囲を教えてくれるのだ。ビジュアル的な動きがあり、操作して見るだけでも楽しい。

Chronotrainsを開発したのはフランスのソフトウェアエンジニアであるBenjamin Tran Dinh氏。ヨーロッパ域内30,000カ所の駅のデータを取得してChronotrainsのインタラクティブマップをローンチした。Chronotrainsの着想にいたるインスピレーションになったのが、ドイツ鉄道のお得な運賃を調べるウェブサイト「Direkt Bahn Guru」だ。

日本でも目的地への行き方を調べる際に、電車の経路や所要時間をインターネットで調べるのは一般的だろう。まだ具体的な訪問地が定まっていないヨーロッパでの旅行の計画をたてるときに「Chronotrains」を使って視覚的に行き先を探すととても便利だ。

電車でここまで色々な場所に行けるという選択肢の広さが目に見える形になっており、日本の電車データにも対応してほしいと願わずにはいられない。

航空便は短時間で遠くに行くことができて非常に便利で、数多くのLCC(格安航空会社)が参入し費用も手頃な移動手段になった。一方で、飛行機は巨大なジェットエンジンを見てのとおり大量の燃料を消費し、二酸化炭素を排出する。世界のCO2排出量の実に2.5%がフライトによるものだといわれている。(※2)

電車はエネルギー効率がよく地球に優しい乗り物だ。飛行機ほどのスピードは出ないが、空港でのチェックインや手荷物検査に時間を取られることもない。

そしてレールの上を走行中に次々と車窓に飛び込んでくる景色を眺めれば、それは移動時間ではなく楽しい観光の時間へと一変するだろう。

日本国内を見ると、電車の旅には「時間」という点のほかに「値段」というより大きな課題も、電車旅の促進を阻んでいるように思う。

より多くの人が、環境負荷の低い電車という手段で旅を楽しめるように、変化が起きていくことを期待したい。

(※1)東京都環境局/交通機関の種類とCO2排出量
(※2)経済産業省/次世代航空機に向けた研究開発・社会実装の方向性

【参照サイト】chronotrains / How far can you go by train in 5h?
【参照サイト】Direkt Bahn Guru
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拓馬

昔からつい遠くに趣いてしまう癖があり、気がついたら海外でノマド(遊牧民)に。インターネットという大自然の恩恵に浴し、世の中を斜に眺めながらの独り言。リアルの大地とデジタルという名の大空のはざまにさすらい、いまだ見ぬ世界への旅路を今日もゆく。