目的地は川沿いのカフェ。出社前のミニワーケーション

隅田川

家を出て自分を1人、街に放つ。ほーらゆけゆけ、自由に進め。じかんには余裕がある。

いつもの平日の朝なら聞いていられない、ゆったりとした音楽を聴きながら駅までの道を歩く。降っていた雨が霧雨になり、登った歩道橋の上でおりたたみ傘を閉じて、ふらふらと手に持ちながら歩く。

霧雨の中、歩道の木の葉をおじいさんが剪定している。パチンとハサミで葉を切るのを眺める。水溜りに雫が落ちて円が広がる。通り過ぎる人の傘が水面に映る。景色がゆっくりと、いろいろと、見える。ちゃんと、見える。

駅の階段を降りながら、ぷるるるるると発車音が鳴り、みんな急いでかけだした。次でいいやとゆっくり歩く。ドアが閉まり次の駅に向かう電車を見送る。

みんなマスクをして、小さなスマホを片手に。もう片手に傘を持って座っている。感情はあまり見えない。

そうそうこの感じ。毎日こんな箱のなかに長いこと揺られてたな。

エレベーターすら久しぶりに乗った。全てが真新しく見える。知らなかった。田園都市線の座席は夏の稲穂のようなものが描かれていて、山並みのように曲線を描いている。久しぶりの外出に日常が更新されていく。

会社への通勤がなくなって、たまに気が向いた時に移動するようになったことで、移動の価値が格段に上がった。移動しているだけで楽しく、自分の当たり前がはずれて、多様な世の中を楽しめている感覚がある。世界は広いなあ、なんて思ったりする。

目的地のカフェのある最寄駅で電車を降りて、地下鉄の階段を上がると、葛飾ナンバーの車が目に入る。葛飾の漢字をみただけで、なぜかわくわくする。

隅田川がすぐそこだ。大きな川が見える。いい青の橋がかかっている。橋の真ん中まで行き、川面の写真を撮る。足早に過ぎゆく地元の人たちが、私のカメラにつられ、川面に顔を向ける。

隅田川2

「隅田川沿いで仕事がしたい」そう思って調べてきた目的地のカフェにつく。朝7:00からやっているホテルにあるカフェ「PITMANS」。グレーの落ち着いた店の中で、宿泊者とおもわれる女性がゆっくりと川を眺めながら朝ごはんを食べている。

PITMANS

ヴィーガンのコーンスープを頼んでみた。コーンの皮が少し残っていて、食感も含め美味しい。子供の頃家族みんなでキャンプに行った時に釜戸で焼いたパンの匂いが、お皿の上のパンから香る。さて、コーヒー飲みながらひと仕事しますか。

1時間30分、集中して仕事をして、散歩をしながらオフィスに向かう。海の匂いのする隅田川をはなれ、浜町をぬけ人形町方面へ。道すがら、緑あふれるホテルを見つける、次はここで仕事しよう。

午後からの出社。午前中家で仕事をして、いつも通り会社に向かうこともできる。だけど、目的地をちょっと変えて会社のそばのカフェを目指してみる。目的地が変わるだけで、移動も楽しくなる。仕事も捗るし、人生も楽しい。ちょっと午前にミニワーケーション。おすすめです。

【参照サイト】PITMANS
【関連ページ】働きたいように働ける社会のために、ワーケーションができること

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飯塚彩子

“いつも”の場所にずっといると“いつも”の大切さを時に忘れてしまう。25年間住み慣れた東京を離れ、シンガポール、インドネシア、中国に住み訪れたことで、住・旅・働・学・遊などで自分の居場所をずらすことの力を知ったLivhub編集部メンバー。企画・編集・執筆などを担当。