“見る”だけが旅じゃない。リトアニアの「触って、聴く」街歩きツアー

旅は楽しい。今まで見たこともない景色や、そこでしか出会えない人との出会い。その場所だからこそ味わえる食べものや、独特な香り。ときに人生を変えるようなストーリーに出会うこともある。

しかし、視覚障害のある人にとっては、旅に関するハードルも多い。例えば、未だ多くの観光地の案内や表示が視覚情報に頼っているため、ガイドなしでは十分な情報が得られない。また、慣れない土地での移動も、視覚障害のある人にとっては大きなハードルになるという。

そこで、世界遺産にも登録される旧市街で知られるリトアニアの首都ビリニュスには、視覚障害のある人だからこそ楽しめる「触って、聴く」街歩きツアーを始めた。その名も、「Touch and Hear Vilnius(触って、聴くビリニュス)」だ。

2023年に始まったこのツアーは、専用のオーディオガイドに導かれ、1時間半ほどかけて12のスポットをめぐり、ビリニュスの歴史や街のストーリーを知ることができるというものだ。ビリニュス市のマーケティングチームが街の視覚障害者コミュニティと協力して作り上げたもので、オーディオガイドは街の観光サイトから誰でも無料で聞くことができる。

オーディオガイドは、こんな風に始まる。

「こんにちは!私はビリニュスです。私は700年の歴史の中で作られた、自分自身の魅力的なストーリーを集めました。(中略)私のことをもっとよく知ってもらうために、普段は訪問しないような場所に、あなたをご招待します……」

ツアーの目的地になっているのは、ビリニュスの歴史的な彫像「ミンダウガス王の記念碑」や16世紀後半のビリニュスの街が描かれたブロンズ模型、ティーポットが埋め込まれた観光客に人気の外壁「ティーポットウォール」など。そのほとんどで、触れる・聴くといった体験が盛り込まれているのが醍醐味だ。

例えば、リトアニア大公宮殿とその隣の城の間の狭い道では、「手を叩いてみたら、壁に音が反響するのを聴くことができるでしょう」と、聴くことに意識を向けさせる。街のブロンズ模型では、「指で街を歩き回り、腕で街全体をカバーしてみましょう」というように、文字通り「歴史に触れる」ことができる。ティーポットウォールでは、建物の外壁に埋め込まれた形や触り心地の異なるいくつものティーポットを触って楽しめる。彫像やモニュメントの前では、その背後にあるストーリーが、見えなくてもイメージできるような形状や様子の解説と共に語られる。

さらに、目的地から目的地への道順も、視覚障害をのあるでもひとりで安全に街をめぐれるよう、オーディオガイドがフレンドリーに案内してくれる。

「バス停のシェルターや道路を背にし、道の左側に沿って石畳の道を60歩ほど進んでください。(略)左側の横道を一本通り過ぎて真っ直ぐ進むと、足元の石畳が荒い石の舗装に変わったことを感じ取れます。途中でオークの枝が頭に触れることがあっても驚かないでくださいね。直進して22歩ほど歩くと……」

歴史ある街の特徴を上手に活かし、そのストーリーをより多くの人に開いていくビリニュスの取り組み。それは、目が見える人にとっても、「見ること」ばかりに気を取られて忘れてしまいがちな「五感を使って旅を楽しむ豊かさ」に、改めて気づかせてくれるものではないだろうか。

※本記事は、ハーチ株式会社が運営する「IDEASFORGOOD」からの転載記事となります。

【参照サイト】Touch and Hear Vilnius
【参照サイト】Three good things: tour operators innovating for blind and neurodiverse people
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Livhub 編集部

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