イタリアが教えてくれた幸せなメンタリティの保ち方

旅は心を豊かにしてくれる。美しい街並みや食べたことのない料理、非日常な体験はそれだけでリフレッシュできるし、ストレス過多な社会から物理的に離れると抱えていた悩みが小さく感じられたりするものだ。

しかし先日のイタリア旅では普段の旅とは少し違った感覚を覚えた。 旅でリフレッシュすることがストレスへの対症療法だとしたら、イタリアの人々のようなメンタリティで生きることができれば、そもそもストレスを抱えず暮らしていけるのではないかという、原因療法的なヒントを与えてもらったような気がしたのだ。

イタリアが教えてくれた幸せなメンタリティのヒントをいくつかご紹介したい。

その1「古いもの・手元にあるものを大切にすること」

イタリアの人々は古いものを手直ししながらとにかく長く使う。世界遺産の建造物や芸術作品だけでなく、日用品や着るものまで長く大切にし、次世代まで受け継ぐのが当たり前の価値観なのだ。イタリアの街中では最新の家具や家電を売る店を見つけることは難しく、代わりに骨董品を売る店が多く並ぶ。

彼らには「これを使っていたら他人からどう思われるか」という他人目線の思考がない。ハイブランドなど消費を促す広告やマーケティングに溢れた日本では常に話題の商品やトレンドの洋服を買いたくなる衝動に駆られるが、そのような消費を繰り返しても幸せになれないことは誰しも体感したことがあるはずだ。「新しいもの」の価値は時間の経過と共に薄れていくが「古くて良いもの」は価値が落ちることなく心を満たし続けてくれる。企業のマーケティングや周囲の流行りに流されず、長く愛せるものだけを買い、手入れしながら大切に使う。心豊かに暮らすために、そんなイタリア人の習慣をぜひ見習いたいものだ。

その2「笑顔で挨拶をすること」

イタリアに訪れて驚いたことの一つが笑顔と挨拶だ。満面の笑顔で「チャオ」と挨拶されたら、こちらも負けないくらいの笑顔とを大きな声で「チャオ」と返す。それがマナーであり、自分が怪しい者ではないというアピールにもなる。そしてその笑顔のまま会話が始まり、さようならの「チャオ」までずっと笑顔なのだ。ここで言う笑顔とは微笑みのような笑顔ではなく「今この瞬間が最高に楽しい」というレベルの満面の笑みである。

イタリア人は陽気な人がとても多く、話す内容もポジティブかつユーモアに富んでいる。おしゃべり好きなので初対面だろうが躊躇なく話しかけてくれるため、こちらも笑顔でいる時間が多くなり、在宅勤務とマスク生活で衰えた私の表情筋はぷるぷると引きつり毎日痛みを覚えるほどだった。 (ちなみに2022年9月時点のイタリアでは、公共バスなどの着用を促される場所以外では誰もマスクをしていなかった)

赤の他人だろうが関係なく笑顔で「チャオ」を連発し、とにかく話す。それだけで楽しい気持ちになり、活力が湧いてくる。これが日常なら嫌なことがあってもすぐに元気になれる気がする。まさに心の免疫である。 ただし大都市などの観光地には騙そうと近寄ってくる人物も多いのでくれぐれも注意したい。

その3「ありのままの自分でいること」
Italy-self

イタリアに住む日本人に話を聞くと、皆口を揃えて「イタリア人はマイペースだ」と言う。急にお店を閉めるし、遅刻もするし、仕事の納期も平気でずらす。他人に気を使ってお世辞なども言わないし、嫌な時は嫌だと主張する。悪気があるわけではなく単純に優先順位の最上位が「自分の気持ちと自分の都合」なのだ。

見ず知らずのイタリア人といきなり会話が始まるのも、こちらの都合などお構いなしに話しかけてくる場合が多いからだ。そして自分の喋りたいことを楽しそうにひたすら喋って去っていく。そもそも筆者はイタリア語がわからないのだがそんなこと彼らには関係ないのだ。話したいから話す。マイペースである。

しかしそのマイペースさのおかげで彼らはストレスを溜めずに毎日を過ごすことができているのだと思う。他人に迷惑をかけないことを美徳とする日本人のメンタリティも素晴らしいが、他人のことばかり優先する自己犠牲の精神は行きすぎるとストレスのもとになってしまう。

イタリア人はいい意味で他人に興味がない。自分がマイペースな分、人にも寛容だ。 だから言いたいことを言うし、人に言われたこともいちいち気にしない。こちらも「何か変なことを言ってしまっていないだろうか」などと気にするだけ無駄なのである。 もし他人に気を使いすぎてストレスをためやすい人がいるとしたら、イタリア人に倣ってもう少しマイペースに生きていいのかもしれない。

最後に少し脱線すると、昨今サステナブルというワードがマーケティング用語のように使われているが、物を長く大切に使い、必要以上の消費をせずとも幸せを感じながら暮らすイタリア人の生き方こそ見習うべき究極のサステナビリティなのではないかと考える。サステナブルな社会を目指すのであれば最も必要なのは企業努力だけではなく我々消費者の意識改革なのかもしれない。

【関連記事】“あるもので美味しく” イタリアの郷土料理から学ぶ 、足るを知る幸せな生き方
【関連記事】必要なものは全て持っている。39ヶ国を働きながら旅したジャクリンさんの気付き
【関連記事】サステナビリティに関するLivhub記事一覧

The following two tabs change content below.

沼野裕貴

東京都出身。国内外の美味しいものを求めて旅をすることをライフワークに、今日も次の旅先で何を食べようか考え中。仕事はコンテンツマーケティング業。最近の趣味はストウブ集めとストウブで料理を作ること。