土に触れる。
自然の産物を手先で直に触れ、土の匂いというものを感じる。
山深い自然豊かな土地で、土と触れ合い窯の中で炎を育て、作品をつくる。
この人間の根源的とも言うべき営みは、人の心におおらかさと温かさを生む。
日本六古窯「丹波焼 」に根付くもの
日本では昔からものづくり文化が発展しており、佐賀県の有田焼、岐阜県の美濃焼などの陶器、そして伝統工芸品など美しい作品が多く存在する。
兵庫県丹波篠山市の立杭地方で、800年を超える歴史を刻む「丹波焼 」も日本のものづくりの根源を感じられる焼き物のひとつ。日本六古窯と呼ばれ、日本遺産にも認定されている。他には瀬戸、越前、常滑、信楽、備前がこれに該当する。
丹波焼の発祥は、平安時代末期から鎌倉時代のはじめと言われている。850年以上受け継がれる産地もあり、時代の要請に応じて作る物や作り方の変化を繰り返し、今日も約60もの窯元が、技法も造形も用途も多様なものづくりを手仕事で行っている。「日常使いできるもの」「暮らしに寄り添う作品」「美しく多様な作品」など、世代を超えて愛され続けるための努力が、職人さんたちの手によってなされているのだ。
しかし日本のものづくり文化というものは、その技術を継承する難しさや職人さんの高齢化によって、窯元数や職人の減少傾向にある。
陶工の営みに触れる「陶泊」とは
丹波立杭陶磁器協同組合は、持続的な産地のあり方を模索し、美意識を磨くために何度も訪れることができる郷になることを目指して、観光庁「第2のふるさと事業」として2023年より新たに「陶泊」という取り組みに参画している。
「陶泊」とは、丹波焼の職人の工房に泊まり、その暮らしに溶け込み、土づくりから作陶を体験できる旅。陶芸版の農泊のようなもので、陶芸体験などから一歩踏み込み、陶工の自宅などに宿泊して生活を共にすることで、職人の手仕事や里の空気、文化などを味わうことができる。
また、宿泊の前後では、若手陶工たちが「さとびとガイド」と呼ばれるツアーガイドとして窯元巡りなど地域内を案内してくれる。陶工との交流を通じて、地域の日常に触れることができるのも「陶泊」の醍醐味のひとつだ。
そして、何といっても陶泊の最大の楽しみは、普段できない焼き物づくりができること。教えてくれるのはもちろん、現役の職人。例えば土堀や粘土作りといった作陶のプロセスも体験することができる。
丹波焼の魅力を探るオンラインイベントも
一般募集は、2024年の春から。それに先駆け、11月5日にはオンラインイベント『丹波焼の工房で探る「多様な美意識が生まれ、育まれる里の本質とは?」』を実施予定だ。第1回目となる今回は、丹波焼の代表的な窯元のひとつである「俊彦窯」の清水剛さんの工房にお邪魔して、数々のローカルプロジェクトを手掛けるトランクデザイン・堀内康広さんと教育プロデューサーの澤田哲也さんが、様々な視点から丹波焼と立杭地区の魅力を紐解いていく。
オンラインイベントの日時は、11月5日(日) 20:00~21:30。参加費は無料。イベントの詳細・申込みページをはこちらから。
陶工の人柄に触れ、一緒に土を触り暮らしに寄り添う。夜は、星空を眺め語り合い、早朝には幻想的な丹波霧に息をのむ。そうすると見えてくる、丹波焼の歴史や創作の根源…。
そんな里山の自然の中に滞在し、伝統に思いをはせる「陶泊」にぜひ参加してみよう。 きっと日常を豊かにする新しい体験となるはず。
【参照サイト】陶泊
明田川蘭
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