奄美大島の北部エリアにある、奄美の豊かな大自然に包まれ、森と共生する環境共生型リゾート「MIRU AMAMI」。株式会社ADXと株式会社ネストアット奄美が共同で進めてきたこのプロジェクトにおいて、14室の新宿泊棟が2024年7月下旬にグランドオープンを予定している。
奄美大島には大小約200の集落があり、集落ごとに独特な文化や慣習を残している。その伝統的な集落文化に敬意を表し、既存の「Sea Village」エリアの13棟と今回新築する「Forest Village」エリアの14棟をそれぞれの集落として表現、同じリゾート内でも趣の異なる滞在を楽しむことができる。
新設された「Forest Village」エリアの14棟は、ADXが今年4月に発表したブランド「EARTH WALKER」のカスタムシリーズを採用。このシリーズは、森や湖畔など都市からアクセスしやすい自然の中で快適に暮らすことを目的としており、「MIRU AMAMI」はその初の施工事例となる。
奄美の自然に溶け込むようなデザインとサステナブルな設計
「MIRU AMAMI」の特徴は、奄美の自然環境に溶け込むデザインと環境への配慮だ。各宿泊棟は植木鉢を積み重ねたような構造で、自然の中にうずまるような感覚を味わえる。葉が落ちて、大地に分解されて、やがて新しい命の土台となるように力を再び得て、青い空と海の待つ開けた世界を体験できる、そんな自然の不思議な力が満ちる空間となっている。
内装には、コルクの壁や芭蕉和紙、夜光貝など自然由来のマテリアルを使用し、経年変化も楽しめる工夫が施されている。環境への配慮は設計段階から徹底されている。
従来のリゾート開発は、森やビーチを切り開く大規模な造成や大量のコンクリートを使った基礎工事、建設現場から出る大量の廃棄物など、自然環境への負荷が高かった。一方今回建設したヴィラは従来の開発とは一線を画し、自然環境負荷を最小化したサステナブルな工法で開発が行われている。
具体的にはADXは独自の「森のカルテ」というアセスメントを行い、環境情報を取得可能な光学式の三次元スキャナ「3D LiDAR(スリーディーライダー)」を用いた調査で地形を生かした配置計画を立てた。また、奄美大島の亜熱帯海洋性気候に適応し、地域固有の生態系に配慮した建築方法を採用するべく、高床式の独立基礎工法や国産針葉樹を使用したバイオ素材のフラン樹脂加工技術を取り入れ、環境負荷の低減に取り組んでいる。
さらに、床、壁、天井などの構造体をパネルとしてあらかじめ工場で製造し、現場で組み合わせて建築する「パネル工法」を採用することで建設期間を従来の1/3に短縮し、現地での環境負荷を抑えている。これは、サーキュラーエコノミーの観点からも注目すべき取り組みだ。建設資材の効率的な利用と廃棄物の削減につながるからだ。
可能な限り環境負荷を抑えた、環境共生型リゾートに
ADXの安齋好太郎代表は、奄美大島の生物多様性の高さを強調し、「可能な限り環境負荷を抑え自然に溶け込む建築の在り方を模索してきた」と述べている。この姿勢は、持続可能な観光開発のモデルケースとして評価できる。
一方で、このようなプロジェクトにおいては、長期的な環境モニタリングの実施が計画されているが、その結果をいかに今後の開発に反映させていくかが重要だ。また、地域社会との共生や経済効果の波及など、社会的側面での持続可能性も注視する必要がある。
「MIRU AMAMI」の取り組みは、自然環境と観光産業の共生という世界的な課題に対する一つの解答を示している。今後、このようなアプローチが他の地域や施設にも広がっていくことで、持続可能な観光の実現に近づくことが期待される。
【参照サイト】Miru Amami | Miru Collection
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