「僕達人間の存在にとっての必需品とは何なのでしょうか。食もそうですし、衣も住もそうでしょう。しかしそれ以前にもっと最重要なもの。それは、空気と水、です。しかしこの二つの重要性を、それがあまりにも身近で当り前すぎる為、僕らは普段忘れてしまっています。ではその空気と水を供給してくれているものは何か。森です。それも森の葉っぱです。しかし人類は古今東西、森を見るとき、木材になる幹ばかり見て葉を見ることを忘れていました。(後略)」
引用元:富良野自然塾とは・倉本聰からのメッセージ|富良野自然塾
これは「富良野自然塾」の塾長である作家・倉本 聰さんの言葉。
人間はこれまで “生きるため” だけではなく、“生きる楽しさを見つけるため” に、さまざまな人工物を造ってきた。それ自体は悪いことではないかもしれない。しかし、それが今になって不要となった場合、元の場所に還す必要があるのではないか。
富良野自然塾では、ゴルフ場跡地を元の森に還す「自然返還事業」を行っている。平成17年に閉鎖した富良野プリンスホテルゴルフコースを、まさに今元の森に還す取り組みをしている。森に還すとは、単に植樹をすることではない。近隣の森から、種や実生や若苗を採取し、移植可能な時期まで育てて初めて地面に植えつけるという、とても忍耐と歳月のかかるものだ。
また、そのフィールドを使った「環境教育事業」も行っている。北海道という大自然を五感で感じることのできる、数々の体験プログラムを用意している。「緑の教室」では、私たちが生きていくのに欠かせない、酸素と水を提供してくれているのは木の葉っぱだということや、森との関係性などを学べ、「裸足の道」というプログラムでは、目隠しをして裸足になり、芝生・砂利・落ち葉・丸太などの工夫された道を歩くといった、視覚以外の感覚で地球を感じることができる。
そして「植樹体験」では、50年後100年後の森の姿を想像しながら、元ゴルフ場の固い地面をスコップで掘って実際に木を植える。木の種を手に取ったり、小さな実生を見つけたりして、木の命の営みも学べる “生きるため” にとても大事な体験である。
こうしたプログラムをぜひ、北海道富良野に訪れ、体験してみてはいかがだろう。
「旅をする」ということは、その土地に来るまでに飛行機や車を利用する。文明はすばらしいものだが、そうした乗り物を動かすためにも、街を照らす明かりやエレベーターを利用するためにも、多くのCO2を排出している。
東京から2泊3日で富良野へ行く場合、約19kgのCO2を排出した計算になる。これは実にトドマツ1本が1年に吸収するCO2量に相当するのだ。(※1)
そう思うと、 “生きるため” に必要な酸素と水を供給する木の葉っぱが、それを作る森がいかほどに大切なのか、気づくだろう。
美しい自然環境を次の世代へ残すためにも、旅先で出したCO2を吸収する分の木を、ぜひその旅先で植えていく、そんなトラベルをしてみては?
富良野自然塾では6:30~17:00の間、所要時間60分で植樹体験ができる。大人3,000円、小中学生1,000円で、自然の中でいただける挽きたてコーヒー付きだ。希望者には、植樹地点(GPS座標)を記した認定書も発行される。
訪れて楽しいだけではなく、訪れることでその場所がより良くなるように。私たちにできることはきっと沢山あるはず。
(※1)富良野自然塾 | Zero Carbon Traveler
【参照サイト】富良野に来たら木を植えて帰ろう「ゼロカーボントラベラー」| 富良野自然塾
明田川蘭
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