旅は、自分らしさを解放し、新しい体験を通じて心を豊かにする素晴らしい機会だ。しかし、すべての人が同じように安心して旅を楽しめているわけではない。
世界最大級の宿泊予約サイト、ブッキング・ドットコムが2024年7月12日に発表した最新の調査結果は、LGBTQ+旅行者が直面する現実と、より包括的な旅の実現に向けた取り組みを明らかにした。
調査が示すLGBTQ+旅行者の現状
調査は世界27カ国・地域の11,469人のLGBTQ+旅行者を対象に実施された。日本のLGBTQ+旅行者の36%が旅行中に不当な扱いを経験したと回答し、この数字は前年の25%から大きく増加した。
特に注目すべきは以下の点である。
- 日本のLGBTQ+旅行者の40%が、アイデンティティによって旅行時の不安が高まると回答
- トランスジェンダーの64%、インターセックスの57%が同様の不安を抱えている
- 日本の回答者の46%が「ありのままの自分でいられること」を重視
「Travel Proudプログラム」:インクルーシブな旅の実現へ
ブッキング・ドットコムは、これらの課題に対応するため「Travel Proud」プログラムを展開している。LGBTQ+の旅行者が抱える課題について理解を深められるよう、宿泊施設をサポートするこのTravel Proudプログラムでは、宿泊施設向けに無料のオンライントレーニングを提供し、「Proud Certified」認証を付与する。
Travel Proudプログラムの成果
- 世界で67,000軒以上の施設が認証を取得
- 日本では2024年4月から導入を開始し、約440施設が参加
- 11カ国語で提供され、定期的なトレーニングを実施
グローバルパートナーシップの拡大
ブッキング・ドットコムは、より包括的な旅行環境の実現に向けて、以下の組織とパートナーシップを結んでいる:
- 国際LGBTQ+旅行協会(IGLTA)
- 世界平等基金(GEF)
- Stonewall National Monument Visitor Center
残された課題とインクルーシブな観光の未来へ向けて
日本のLGBTQ+旅行者の53%が「インクルーシビティの高まりにより旅行がより快適になった」と回答している一方で、34%が「LGBTQ+フレンドリーでない目的地への旅行を取りやめた経験がある」と回答した。
一方でAgoda Company Pte. Ltd. (本社:シンガポール、CEO:オムリ・モーゲンシュターン)が行った最近の調査によると、タイの画期的な同性婚法制化は、施行後2年以内に、年間400万人の海外旅行者を新たに呼び込み、観光収入を年間約20億USドル増加させる見込みであることが明らかになっている(引用元:アゴダ発表、タイで同性婚の法制化により、新たに年間400万人の観光客誘致に意気込み)。
Agoda Companyの調査からは、LGBTQ+ツーリズムを始めとした多様性を考慮したツーリズムが広がることで、誰もが安全に楽しめるインクルーシブな観光と、観光業界の経済的利益や市場活性化を同時に実現することができる可能性があるといえる。これら二つの調査から、多様性と寛容さに溢れる観光の未来を目指すべき根拠は大いにありそうだ。
【参照サイト】ブッキング・ドットコム、2024年の調査から、LGBTQ+の旅行者は安全で最高な旅を選択していることが明らかに|PRtimes
【参照サイト】Travel Proud
【参照サイト】アゴダ発表、タイで同性婚の法制化により、新たに年間400万人の観光客誘致に意気込み| KYODO NEWS PRWIRE
【関連記事】旅行時は特別な配慮より「個を尊重した多様な選択肢」を。観光業におけるセクシュアルマイノリティ対応の研究成果を発表
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