再エネシフトが地域財源の確保につながる。兵庫・神鍋高原からはじまる「1% for Local」

地方の財源不足は、国内における深刻な課題だ。総務省によれば、社会保障関係費や人件費の増加などにより、令和6年度の財源不足はすべての地方自治体を合わせて、1.8兆円にものぼった(※)。さまざまな課題が山積する中、こうした財源不足により市民にとって必要な取り組みが行えず、歯がゆい想いをしている地方自治体は多いという。

そうした地域課題を、再生可能エネルギーを通して解決できないだろうか。そんな想いから生まれたのが、再エネを提供するハチドリ電力が始めた、電気代の1%を地域に寄付できる「1% for Local」という仕組みだ。2024年12月、兵庫県豊岡市日高町の神鍋高原と最初のパートナーシップを組む形でローンチされた(※)。

「1% for Local」の仕組みはシンプルだ。企業や個人がハチドリ電力に切り替える。その際、電気代の1%の寄付先としてウェブサイトにリストアップされている「地域の活動」を選ぶと、地域のために活動する団体に寄付を送ることができ、その地域の共同基金が蓄えられるのだ。こうして貯められた基金は地域にとっての新たな財源となり、地域で必要な活動や施策に使われる。

地域共同基金「1% for Local」の仕組みについて説明する図。

image via ハチドリ電力

ハチドリ電力は、2020年に設立された100%再エネ由来の電力を提供する電力会社だ。これまで同社は、証書を付与した透明性の高い再エネ提供に加え、電気代の1%を社会的取り組みを行う団体や個人に寄付する「ひとしずくアクション」や、また他の1%を再エネ発電所の増設につなげるなど、電力を通して気候変動や社会課題を解決しようとする取り組みを行なってきた。

「1% for Local」は、同社代表の池田将太氏が講演のために訪れた神鍋高原で、地方自治体の財源不足という社会課題を知ったことから生まれたという。こうした課題を自社の事業を通して解決したいと考えた結果、まずは神鍋高原と最初のパートナーシップを組む形で取り組みを始めるに至ったのだ。

兵庫県北部に位置する神鍋高原は、1923年のスキー場開山以降、農業や雪を中心とした観光産業の発展で栄えてきた地域だ。しかし近年では、気候変動による降雪量の減少や異常気象による農作物被害など、自然環境の変化に伴う課題に直面しているという。

そこで同地域では、持続可能な観光を通して地域の活性化を行う一般社団法人神鍋高原観光協会(以下、日高神鍋高原観光協会)が主体となり、2023年1月に「神鍋高原ゆきみらい100年宣言」を発表。次世代の子どもたちと雪がある喜びを共有するため、カーボンニュートラルの実現や持続可能な自然観光地域への転換などを進めている。こうした背景から、同団体が神鍋高原を代表し、地域共同基金の受け皿となっている。

神鍋高原とは、今回の正式リリースを前にして日高町エリアを中心に約30拠点がハチドリ電力の電力プランへ切り替えを実施するなど、観光や地域振興に関わる拠点を中心に強い連携が生まれているという。

日高神鍋観光協会の会長である岡藤泰明氏は、「『1% for Local』でいただいた基金の有効な使い道について、地域の皆さまと話し合い、アイデアを実現していくこと。そして地域でもさらに自然エネルギーの利用を増やすことでカーボンニュートラルの実現を目指します」とプレスリリースにて語る

またハチドリ電力代表の池田氏は、「地域に経済的なメリットが生まれることは、再エネに切り替える大きなモチベーションにつながります。さらに、それを県や市といった単位よりもより小さな愛着が持てる範囲の『地域単位』で行うことで、より地域の人たちが自分ごと化しやすいのだということを、今回の連携で実感しました」とIDEAS FOR GOODの取材に語っている。

今後は神鍋高原との連携をモデルに、寄付先地域の選択肢を増やしていく予定だという。地域経済を補完しながら脱炭素への取り組みも進めていける新たな仕組みの広がりに、期待を寄せたい。

※本記事は、ハーチ株式会社が運営する「IDEAS FOR GOOD」からの転載記事となります。
地方財政制度(総務省)

【参照サイト】ハチドリ電力、電気代の1%で地域に新たな財源を生み出す地域共同基金「1% for Local」を開始
【参照サイト】ハチドリ電力
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Livhub 編集部

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