何百年の歴史ある建物に滞在し、百の物語を味わう。奈良井宿にホテル「BYAKU Narai」8月4日開業

江戸時代の人はどんな旅をして、どんな宿に泊まっていたのだろうか。京都から江戸まで約532km。この長い距離を、雨の日も雪の日も、草鞋を履いて何日もかけて歩く。旅の途中には、疲れを癒してくれる重要な場所である宿場町が何箇所もある。今と昔では、道行く手段も過ごし方も異なるが、それでも変わらない町並みが残る場所がある。

⻑野県塩尻市にある「奈良井宿」。ここは、江戸時代に京都と江戸をつないだ中⼭道のちょうど真ん中に位置する宿場町だ。当時、多くの旅⼈で栄え「奈良井千軒」と謳われた。今なお引き継がれる江⼾時代の町並みは、国の重要伝統的建造物群保存地区に選定されており、南北1kmほど続く道には、宿場時代そのままの老舗旅館や千本格子の家々など、往時の⾯影を⾊濃く残している。

そんな奈良井宿に、新たなホテルブランド「BYAKU(ビャク)」の第一号、『BYAKU Narai』が8⽉4⽇に誕生する。新ブランドの開発およびクリエイティブディレクションは話題の書籍「進化思考」の筆者でもある太⼑川 英輔氏が率いるNOSIGNERが担当している。

奈良井宿 街並み

『BYAKU Narai』は、「宿」という文字に隠れている「百の家」「百の⼈」という意味から、“地域に眠る百の体験をお客様に届け、百年前の建築を未来に遺す宿”をビジョンに掲げる。そのビジョンから、ホテルでは、町や建物に眠る百の体験や物語を体感することができる。⽇々の⼩さな季節の移ろいや、歴史が息づく建物、江⼾期から親しまれる⼯芸の美しさなど、普段⽣活の中でつい⾒逃してしまうような様々な“気づき”が、ホテルには隠れている。

かつて酒蔵であった「歳吉屋(トシヨシヤ)」と曲物職⼈が暮らしていた「上原屋(ウエハラヤ)」の⼆棟から成る施設内は、ホテルだけでなく、レストラン、酒蔵、バー、温浴施設、ギャラリーの計6つの業態で構成される。

ホテルの客室は、全12部屋。歴史ある建造物の構造を活かし、全部屋の間取りが異なる個性的で多様な空間が用意されている。⼀般的なホテル客室とは⼀線を画した、古⺠家ならではのユニークな宿泊体験ができる。

客室「百五」(歳吉屋)

客室「百九」(上原屋)

​レストラン「嵓kura」では、奈良井宿の気候や⾵⼟が育んだ⾷材を使い、地域に受け継がれる郷⼟料理や調理法といった⾷⽂化をアレンジした、新しい形のメニューを楽しめる。「味わい」と同時に、知的好奇⼼を充⾜させ、⼟地について新たな発⾒や驚きを感じられる「⾷体験」も堪能できる。空間は、旧杉の森酒造で酒造りの主たる作業が⾏われていた場所を再生。新と旧が織りなすモダンな作りとなっている。

「嵓kura」内観パース(メインホール)

酒蔵は、株式会社Kirakuが1793年創業の造り酒屋「杉の森酒造」を事業承継し、再生した。名を新たに「suginomori brewery」とし、京都・伏見の松本酒造で杜⽒として⼿腕を発揮してきた松本⽇出彦⽒監修の元、新⽇本酒ブランド「narai」を展開している。

2021年秋に開業予定のバーは、かつて奈良井宿のシンボル的な存在であり、多くのファンに愛されていた「杉の森酒造」の商号を継承し、当時味噌蔵であった建物を改修。名前を新たに「TASTING BAR suginomori」とし、同施設内のsuginomori breweryと提携して、地域住⺠も観光客も楽しめる憩いの場となる予定だ。⽇本⼀標⾼が⾼い蔵元で製造された、鮮度の⾼い⽇本酒も味わえる。

「TASTING BAR suginomori」内観パース

信濃川の源流である⼭の湧⽔を引き込んだ温浴施設「⼭泉 SAN-SEN」も、2021年秋に開業予定だ。奈良井宿の⽣活⽤⽔であると同時に、⽇本酒製造の仕込み⽔として活⽤されるなど、奈良井宿に住む人々にとって湧⽔は重要なライフラインである。ここもまた、地域住⺠や観光客など多くの人々が集まり、癒しの場となる。

「⼭泉SAN-SEN」内観パース

四⽅を⼭々に囲まれ、独特の歴史や⽂化を形づくってきた奈良井宿。その地域に古えより宿る百の物語を深く味わうことのできる「BYAKU Narai」。百年の歴史の宿る建築や文化を未来に遺す一役を担いに訪れてみてはどうだろうか。

BYAKU Narai
住所 長野県塩尻市奈良井551
電話番号 0264-34-3001
予約 予約ページ

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明田川蘭

大の旅好き&温泉好き。一人で海外へ、一人で車を走らせて日本の名湯へ。アフリカ大陸と北極南極以外に降り立ち、行った国は30を越え、巡った温泉地は100を超える。沖縄観光メディアの編集者やホテルメディアの立ち上げ経験あり。「旅は人の心を豊かにする」と本気で思い、記事を執筆している。