日本ではデジタル庁が発足し行政手続のオンライン化が進められており、2023年にはパスポートの更新申請がオンラインで出来るようになった。海外に目を向けてみると、やはりパスポートのDX(デジタルトランスフォーメーション)が進んでいる。
例えば、フィンランドは世界初のデジタルパスポートをテストしている。ヘルシンキでフィンエアーの一部のフライトに搭乗する際に、DTC(デジタル旅行認証情報)を用いて出入国審査を行う。具体的には、携帯電話でデジタルIDを提示するというもの。これに手続きがより迅速でスムーズになることが期待されている。この試験的な取り組みは、フィンエアー、フィンランド警察、空港運営会社Finaviaの共同で行われている。
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このプロジェクトへの参加者はスマートフォンにアプリ(FIN DTC Pilot)をインストールする。次に既存の紙のパスポートを持参して、ヴァンター中央警察署の免許サービスで同意書に署名し、顔認識に使う写真を撮影して登録。旅行の際にはフライトの 36~4時間前にアプリからデータをフィンランド国境警備隊に送信する。
ヨーロッパの国家間において国境検査なしで国境を越えられるシェンゲン圏内では元々、国境審査がなく移動はスムーズだが、この技術が実装されると出入国の際も手続きが便利になるかもしれない。テストの成果次第では、デジタルパスポートがEU(欧州連合)にも普及する可能性がある。
ところ変わってシンガポールのチャンギ空港では、2024年に紙のパスポートが不要になる予定となっている。かわりに生体認証を行うことで、パスポートや搭乗券なしで飛行機に乗れるようになるという。
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パスポート以外の行政手続に関しても北欧とシンガポールは、やはりDX化が進んでいる。
フィンランドもシンガポールも人口は約550万人で、ほぼ同等の規模だ。小回りが利くため、イノベーションを迅速に実装しやすいということも言えるだろう。
それぞれの地域に目を向けると、フィンランドの位置する北欧諸国ではITに関する多くの先進的な取り組みが見受けられる。実際にフィンランドでは高速インターネット接続を国民の法的な権利に定めている。
都市国家であるシンガポールは国土は限られているが、地理的な利点を生かしてヒト・モノ・カネを動かすアジアのハブになることを生存戦略にしてきた。
DXは革新や改善の手段である。「何のためにDXを行うのか」。その目的や戦略、そして未来の理想像を明確化することで、日本でもさらにDXが進んでいくことだろう。
【参照サイト】No more queuing at the border: Finland tests digital passports in world first
【参照サイト】Singapore’s Changi Airport is going passport-free in 2024 but you’ll still need your passport
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拓馬

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