2017年の春。カナダに住む女性Yaa Biragoは、友達と共にヨーロッパへの誕生日旅行を計画していた。しかし直前になり友人は旅行をキャンセル。Biragoはそれならと1人で旅をすることにした。ローマに着き、Airbnbで予約していた宿泊場所まで向かう途中、ホストからの道順の案内が不正確だったため道に迷ってしまった。そしてアパートの前まできたとき、彼女は見知らぬ人に道端で性的暴行を受けた。
世界保健機関(WHO)の調査によると、生涯を通じて世界中の女性の約3人に1人、約7億3600万人が身体的、あるいは性的な暴力の被害を受けており、その数値は過去10年間ほとんど変化していないという。さらにその数値は低中所得国に住む女性の方が高く、世界に存在する格差問題も浮き彫りにしている。
見知らぬ土地で突然性的暴行を受けたBiragoは、その日泊まるはずだったAirbnbのホストに連絡をした。すると彼はこう言ったという。「よくあることだよ。私はこのアパートのオーナーではないから何もできない。」そして、この場所よりは安全だと彼が思う別のアパートをメッセージで紹介しただけでやりとりは終わった。もしホストが女性だったならば、この出来事に心を寄せ、大通りや駅で待ち合わせをして別の宿まで付き添ってくれたのではないか、と彼女はそのとき思ったのだという。
この経験をきっかけとしてBiragoは、女性が安全で快適に旅行をするためのソーシャルネットワーキングプラットフォーム『Femmebnb』を2020年に設立した。
Femmebnbでは、女性ホストが女性のみに自分の家を貸すことができる。プラットフォームは会員制で、入会時にはホスト・ゲストともにすべてのメンバーがIDや公共料金の支払い証明書などと共に厳重な信用確認の過程を経ることで、安全性と信頼性の確保を行っている。
さらにFemmebnb内には、「Her Community」という名のコミュニティができる予定だという。そこでは、Femmebnbの会員である世界60ヵ国4,000人以上の女性とつながることができ、旅行仲間を見つけたり、同じような興味を持つ人とつながったり、旅のおすすめ情報を共有しあったりすることもできるようになる。
新型コロナウイルス感染拡大により、現在も旅行における制限は続いているが、旅が再開できるようになったときのためにFemmebnbはプラットフォームのウェイティングリストを作成しており、そこには応募開始から4ヶ月で550人程の女性が登録しているという。
性別や国籍に関わらず、すべての人が安心して暮らし、移動を楽しめるように。Femmebnbの旅はまだ始まったばかりだ。
【参照サイト】femmebnb
【参照サイト】WHO Devastatingly pervasive: 1 in 3 women globally experience violence
【転載元】世界のソーシャルグッドなアイデアマガジン IDEAS FOR GOOD 安全な旅を求めて。ホストもゲストも女性のみ登録できる宿泊サービス「Femmebnb」
最新記事 by Livhub 編集部 (全て見る)
- 白川郷への旅を「すんなり」させる。岐阜県白川村が日本初オーバーツーリズム対策総合サイトを公開 - 2024年12月13日
- 韓国・高級ホテルの家具を低所得世帯に提供。行政がつなぐモノの支援 - 2024年12月10日
- この冬は、あたたかな台湾へひとり旅。温泉リゾート「星のやグーグァン」期間限定のスパプラン - 2024年12月9日
- 阿蘇小国郷のていねいな暮らしに触れる。黒川温泉で叶う10の体験「Kurokawa Echoes.」 - 2024年12月6日
- 【後編】都会人と自然をつなぎなおし、インナーネイチャーを育む。東京山側の場「自然人村」の可能性 - 2024年12月5日