晴れた空に伸びる飛行機雲。見つけると嬉しくなる景色だったはずが、ある事実を知ってから残念ながら見え方が変わってしまった。
2022年のIPCC報告書(※1)では、航空による地球温暖化への影響の約35%は飛行機雲が原因であり、その影響はジェット燃料の燃焼による二酸化炭素排出のそれをはるかに上回ると指摘している。
飛行機雲がつくられる方法は二通りあるが、そのうちの一つは飛行機の排気ガスに含まれている「水蒸気」が極低温な外気に急激に冷やされ、水滴や氷の粒になることで形成される。飛行機雲は、日中には太陽光を反射して宇宙に戻す働きをするが、夜間には宇宙に逃げていくはずの地球の熱を閉じ込めて吸収し、温室効果をつくってしまうのだ。
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カーボンニュートラル(炭素中立)というように、二酸化炭素への意識は高まってきている。本来、カーボンニュートラルは「温室効果ガス」の排出量と吸収量を均衡させることを意味し、二酸化炭素以外の温室効果ガスも対象に含んでいる。しかし、「カーボン・炭素」という言葉が多く使われることでその他温室効果ガスの存在を認識できていない人も少なくないのではないだろうか。実際には、例えばゴミの埋め立て地や水田などから排出されるメタンは二酸化炭素の28倍の温室効果があり(※2)、水蒸気は現在の大気において最も大きな温室効果を有している(※3)。
そうした事実も踏まえ、欧州連合(EU)は、2025年1月から航空会社に、二酸化炭素だけでなく窒素酸化物、すす(煤)、水蒸気の気候変動への影響を追跡し報告することを義務付ける計画だ。
草案では、2027年までは欧州経済領域(EEA)およびスイス・英国のフライトに限定し、欧州域外で離発着する国際便は2年間、排出量の開示規則を免除するとしている。
しかし、この新たな提案に対して、航空業界は二分している。国際航空運送協会(IATA)は、現時点でフライトにおけるCO2以外の排出量を正確に監視することは不可能だと指摘。IATAのウィリー・ウォルシュ事務局長は「EU外の国際線に範囲を拡大すれば、法的懸念が生じる」という旨の書簡を欧州委員会に送り、国際線を除外するように求めている。
一方で、Ryanair、easyJet、Wizz Airといった格安航空会社(LCC)は、将来のCO2以外の対策すべてを誤った方向に導きかねないとして、長距離の国際便を含むあらゆるフライトを対象にすべきだと主張している。
国際線の飛行機が離発着する空港は、いずれかの国の管轄下にあるが、大気は国境を越えて地球全体を移動している。温室効果ガス削減の対策を公平で実質的なものにするためには、欧州と航空業界だけではなく、世界全体で議論を進める必要があるだろう。
なお、航空業界は気候変動への影響が大きいことで知られるが、温室効果ガスが排出されるのは、飛行機に限ったことではない。
サステイナブルな社会の実現に向けて、京都議定書では排出量削減対象としてCO2の他にメタン、亜酸化窒素(一酸化二窒素)、ハイドロフルオロカーボン類、パーフルオロカーボン類 、六フッ化硫黄なども挙げられている。
私たちの身近な生活や経済活動においても、何か温室効果ガスを削減できる方法はないか再点検をすることが必要かもしれない。
(※1)2022年IPCC報告書
(※2)環境省/メタンの全大気平均濃度の2021年の年増加量が2011年以降で最大になりました~温室効果ガス観測技術衛星GOSAT(「いぶき」)の観測データより~
(※3)環境省/温暖化への疑問 にお答えします!
【参照サイト】EU drafts plan to exempt long-haul flights from new emissions rules
拓馬
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