SDGs取り組み状況調査で旅行業が業種別最下位、最高は金融・保険業

立教大学観光学部の野田健太郎教授と株式会社JTB総合研究所は「観光産業におけるSDGsの取り組み推進に向けた組織・企業団体の状況調査」の調査結果を発表した。旅行業でSDGsに取り組む企業の割合は16.0%で、業種別でもっとも低い結果となった。業種別の最高は「金融・保険」で85.7%だった。

SDGs(Sustainable Development Goals)とは、持続可能な開発目標のこと。2030年に向け、17の目標と169のターゲットが国連で定められた。国や自治体だけでなく、民間企業でも貧困や飢餓、エネルギー、気候変動といった世界の諸課題の解決に向け、SDGsの取り組みが広がっている。

本調査では、従業員1001人以上の企業で91.7%がSDGsに取り組んでいる一方、従業員数100人未満の企業ではSDGsに取り組む割合が2割前後であることがわかった。回答した旅行業の企業は76.5%が従業員10人以下であるため、SDGsへの取り組みに十分なリソースが割けないとみられる。

旅行業と宿泊業を含めた観光産業においては、SDGsに取り組むうえでの課題について「必要な人材が不足している(38.5%)」「運用する時間的余裕がない(35.9%)」「必要な予算が確保できない(35.9%)」の回答が他業種より大幅に高かった。

SDGsの取り組みに対して期待する支援策は「SDGsに取り組む際に利用できる補助金」が69.2%ともっとも高かった。そして、「SDGsに取り組んだ企業に対する認証、認定」「SDGsをテーマにした地域との連携」がいずれも61.5%で、「SDGsをテーマにしたビジネスマッチング(56.4%)」「SDGsを活用したビジネス策定の支援(46.2%)」と続いた。他業種と比べて、ビジネスにつながる支援を求める傾向が強かった。

「SDGsに取り組むとどんな効果があると思っているか」という問いに対しては「売り上げの増加」「収益の増加」「取引先の増加」という回答が他業種より大幅に高い結果となり、営業活動の効果への期待の高さがうかがえる。観光産業は取り組み率が低いにもかかわらず、過度にビジネス効果への期待が高い、もしくはビジネス効果への期待がなければ積極的に向き合わないとも受け取ることができる。

本調査から、観光産業におけるSDGsの取り組み状況や課題を他の業種と比較し分析した結果、観光産業のSDGsへの取り組みは著しく遅れていることが明らかになった。今回のアンケートに回答した企業の大半が中小規模の旅行業者だったため、SDGs達成への活動に時間や人材を充てられず、SDGsへの取り組みに着手できないのが現状とみられる。

調査を担当した立教大学観光学部の野田教授とJTB総合研究所は「近い将来、インバウンド旅行市場の中核となるZ世代は、すでに旅行分野でも社会・環境問題に対して積極的になっています。中長期の視点でSDGsに取り組むことで、働きがいや生産性を高めながらビジネスとしても効果をあげ、経済価値と企業としての価値をともに高めていくことができれば、観光産業の魅力が高まると考えられます」と総括した。

【参照ページ】観光産業におけるSDGsの取り組み推進に向けた組織・企業団体の状況調査・研究レポート – JTB総合研究所
【参照サイト】JTB総合研究所

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