世界で発生するマグニチュード6以上の地震の約2割が、日本に集中している(※)。地震はいつ起こるか分からない。普段から備えておくに越したことはない。
しかし、いざ旅行中となるとどうだろうか。
初めて訪れる地であれば、どこに何があるのか分からないことがほとんだ。旅先で美しい景色を楽しみながらも、もしもの時に備え、事前に避難場所を知っているに越したことはない。
「観光×防災」という新しいカタチについて知ろう。
(※)世界で発生するマグニチュード6以上の地震の約2割が|国土交通省
「観光×防災」という新しい取り組み
全国のホテルや旅館にリゾートバイトという形で人材派遣している株式会社グッドマンサービスは、2024年12月20日、全国の観光地と防災施設の二面性をもつ場所を紹介する特設サイト「Evacuation Site seeing 防災観光地」を公開した。この革新的なプロジェクトは、観光地の魅力を発信しながら、災害時に役立つ情報を提供する。
観光振興と防災啓発を同時に進めることで、国内外の旅行者に安心して訪れることができる環境を作り出す。また、日本の新たな魅力を感じてもらうことも目指している。
安全と体験が融合した「防災観光地」
「Evacuation Site seeing 防災観光地」で紹介される防災観光地には、様々な特徴がある。
1)宮城県石巻市「マルホンまきあーとテラス」
宮城県石巻市の複合文化施設「マルホンまきあーとテラス」は、東日本大震災後の復興のシンボルとして建設された。ホールや博物館、アトリエなどの機能を持つ4階建ての施設で、昭和初期の風景を継承しつつ、新たな文化の発信地となっている。
2)三重県度会郡「錦タワー」
三重県の錦タワーは、津波災害から生命を守る「安心」の塔として地域住民から親しまれている。5階建で、平時の際には1階が消防倉庫、2階が地区住民の集会所、3階には東南海地震津波被災時等の写真、防災資料の展示を行い、防災意識啓発の提供の場として整備されている。
3)静岡県磐田市「津波避難タワー」
磐田市の津波避難タワーは、土日祝日に開放され、地域の防災拠点としての役割も果たしている。隣接する「渚の交流館」では、遠州地域の新鮮な魚や野菜を味わえる飲食店や物販店があり、海辺にちなんだ体験教室や地域産業の魅力を体験できるイベントも開催している。
静岡県磐田市の経済観光課管轄商業観光グループの大石さんは、「防災教育や減災意識の定着を図っている」と述べている。
4)高知県中土佐町「第1号・2号津波避難タワー」
太平洋を一望できる立地に建つ、高知県中土佐町の津波避難タワー。円柱形のデザインで漂流物を受け流しやすい構造になっている。周囲の景観と調和するよう設計されており、2016年度にはグッドデザイン賞を受賞。普段は展望台として開放されている。
高知県中土佐町総務課危機管理室の山岡さんは、「観光を通じて災害時の避難先を把握できる素晴らしい取り組み」と評価している。
5)高知県黒潮町佐賀地区「津波避難タワー」
高知県黒潮町にある、国内最大級の津波避難タワー。7階建のビルに相当し、津波から人々を守る。平時には、地元自主防災組織による有料プログラムも用意されており、その収入は津波避難タワー内の備蓄品購入に充てられる。付近ではホエールウォッチングやサーフィンも人気。防災ツーリズムの盛んな街として注目されている。
6)石川県「禄剛埼灯台台地」
能登半島の最先端である禄剛崎に建つ、禄剛埼灯台。明治時代に建設された歴史的建造物で、その台地が津波避難場所に指定されている。1998年に「日本の灯台50選」に選ばれ、2009年には「近代化産業遺産」に認定されている。
7)大阪府「大阪城公園」
歴史のロマンがあふれる天守閣を中核に据えた、大阪城公園。「太閤さんの城」として大阪の人々に親しまれているこの地は、桜の名所としても有名。大阪城公園は、歴史的価値と防災機能を兼ね備えた都市公園の好例だ。
より多くの人々に「防災観光地」を知ってもらうために
グッドマンサービスは、全国の宿泊施設にポスターを掲出する予定だ。これにより、より多くの人々に防災観光地の存在を知ってもらい、防災意識の向上と観光地の新たな魅力発見につなげることを目指している。
「Evacuation Site seeing 防災観光地」は、観光と防災という一見異なる分野を融合させることで、持続可能な地域振興の新しいモデルを提示している。この取り組みが、安全で魅力的な日本の観光地づくりにどのような影響を与えるか、今後の展開が注目される。
【参照サイト】観光✕防災で全国の緊急避難場所を紹介「Evacuation Site seeing 防災観光地」12月20日(金)公開 全国の宿泊施設にポスターも掲出|PRTIMES
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