Livhub編集部は7月6日、楽天とLIFULLが共同で設立した新しい民泊事業会社、楽天LIFULL STAYが開催する「民泊新法をチャンスに変えるセミナー」に参加してきました。会社設立後初となる今回のセミナーでは、先月9日に可決された住宅宿泊事業法(以下、民泊新法)の施行に向けて民泊市場への参入を検討している事業者らが数多く集まり、会場は超満員となりました。ここでは簡単に当日の内容をご紹介したいと思います。
セミナー当日の様子
楽天のリーチ力×LIFULLの物件ネットワーク
セミナーの冒頭では、楽天LIFULL STAYでシニアアカウントマネジャーを務める本田靖明氏より楽天LIFULL STAYに関する簡単な説明がありました。楽天LIFULL STAYは、一言で言えば楽天グループが持つユーザーへの圧倒的なリーチ力とLIFULLが持つ全国の広大な物件ネットワークを掛け合わせることで民泊新法施行後の民泊市場を一気に取りに行くためのプラットフォームです。民泊新法のスキームを活用して、全国の不動産オーナーや事業者に対して新たな収益機会を提供するのが同社の役割となります。
国内・海外 × 民泊・マンスリーを網羅したプラットフォームへ
続いて、楽天LIFULL STAYの事業戦略室長を務める齋藤恵亮氏からは同社の今後の戦略に関する説明がありました。齋藤氏によると、楽天LIFULL STAYでは訪日外国人のインバウンド市場だけではなく国内の市場もターゲットに含めていくとのことで、具体的には民泊とマンスリー運用を掛け合わせ、ターゲットも国内・海外の両方を含めることで、物件の収益を最大化するためのスキームを開発中とのことでした。
国内のマンスリー需要については新規にオープン予定の「LIFULL HOMESマンスリー」で、国内の民泊需要については楽天グループのネットワークを活用して集客を行う予定とのことです。また、海外からのマンスリー需要については楽天も出資するシンガポール発のサービスアパートメントレンタルプラットフォーム、メトロレジデンス社との連携により、そして海外からの民泊需要については先日発表されたHomeAwayとの連携をはじめとする複数の民泊プラットフォームとの提携によりカバーしていくとのことでした。
物件オーナーや事業者は、楽天LIFULL STAYが新たにオープン予定の民泊プラットフォーム「Vacation Stay(仮称)」と契約をすることで、これらの連携プラットフォームを活用したワンストップ集客ができるようになるとのことで、今後のローンチが非常に楽しみなスキームでした。
人口減少時代に求められるハイブリッド運用
そしてセミナーの後半は、特別講師として船井総研の木部正章氏がマンスリーマンション運用の成功事例について解説しました。同氏によると、現在の不動産賃貸市場は人口減少により空室率が上昇しているなか、これまでの単なる仲介(貸し方1.0)やリノベなど付加価値をつけて売り出す仲介(貸し方2.0)のモデルでは収益を上げ続けるのが難しくなっており、通常の賃貸だけではなく「マンスリー」や「民泊」を組み合わせたハイブリッド型モデル、「貸し方3.0」への移行が求められているとのことでした。具体的には、ホテルの稼働率が高い時期は宿泊単価を高く設定できる民泊運用で収益を上げながら、それ以外の時期をマンスリーで埋めていくといった手法が求められるとのことです。
同氏の話の中でも興味深かったのは、マンスリーマンションを利用するユーザーの用途は出張や旅行以外にも通院や受験、新しい部屋探しのための一時的滞在やリフォーム中の仮住まいなど様々なので、宿泊市場とは異なり必ずしも「駅チカ」ではなくても高い稼働率を期待できるケースがあるという点です。また、マンスリーは大都市圏と地方商圏でもニーズが異なり、例えば地方であれば工場の近くなどのニーズが高いという話も出ていました。
増加し続ける賃貸物件の供給数とは裏腹に人口は減少し続けており、既に一部のエリアでは空室率が30%を超えるほど需給バランスが崩れつつある不動産賃貸市場。この市場で利益を上げるためには、民泊やマンスリーを活用したハイブリッドな運用スキームがより重要性を増していることが良く分かりました。
民泊で収益を上げるために
セミナーの最後では、再び楽天LIFULL STAYの齋藤氏より民泊で収益を上げるための戦略についての話がありました。同氏によれば、新法施行後はマンスリー事業者による民泊参入、その逆に民泊事業者によるマンスリー市場参入も想定され、賃貸管理会社が一般賃貸物件をより収益性の高い民泊物件に転用していく動きも進むだろうとのことでした。
例えば日当たりが悪く契約が決まらない空き家を民泊に回す、賃貸より宿泊に変えたほうがより収入が期待できるエリアを民泊に回す、またマンションやアパートの計画物件を宿泊施設に変えていくことで収益アップを狙うといったパターンが挙げられていました。
また、通常賃貸で運用するべきか、マンスリーがよいのか、それとも民泊が適しているのかは物件タイプや立地によっても異なるため、楽天LIFULL STAYではセミナー参加者向けに同社の事業スキームで運用した際の収益予測も一件まで無料で提供するほか、実際の物件運用に際してはパートナーとの連携による運用代行パッケージも提供予定とのことでした。これまでは通常の賃貸で運用してきたので民泊ゲストとのやりとりなど民泊運用については全くノウハウがないという方でも安心して楽天LIFULL STAYのスキームに参画することができそうです。
そして、今後は保険や参入時の家具セットアップなど周辺領域の支援も行っていくとのことで、不動産運用に課題を持っている事業者にとっては新たな収益機会が得られる大きなチャンスを感じるセミナーとなりました。
今回のセミナーは今後も東京、大阪、京都、福岡の4か所で開催予定なので、興味がある方はぜひ参加してみてはいかがでしょうか?
セミナーを終えて
民泊新法下における民泊運用は年間営業日数180日という制限がつくため、新法を活用した民泊を行う場合にはマンスリー運用との組み合わせが一つの有効なスキームとなることが予想されます。
ただし、物件をマンスリーとして貸し出す場合、一回の契約で45日~60日といった長期の稼働が見込める一方で、1日あたりの単価は3,000円~5,000円と当然ながら民泊よりも安くなるため、年間収益を最大化するためには物件に対する需要を先読みしながらいかにマンスリーと民泊を上手に組み合わせられるかがポイントとなりそうです。
花見や紅葉の季節などホテルの稼働率が高い時期は民泊で宿泊単価を高く維持しながら運用し、その他の時期を企業の出張ユースを上手く取り込んでマンスリーで運用するといった切り分けもよいかもしれません。また、マンスリー向きの立地と民泊向けの立地は異なるため、自身の物件はどちらのスキームをメインとする運用が向いているのかを見極める力も問われるでしょう。
未だ民泊新法自体の細則が固まっていないうえ、各自治体がどのような上乗せ条例で民泊を規制するかも不透明なので、具体的な戦略を練るには情報が足りない部分もあります。しかし、新法施行後に違法な民泊物件の供給が急減すれば、一時的に宿泊施設の需給バランスが崩れて合法民泊に大きな収益機会が訪れる可能性は十分にあるので、いずれにせよ準備は早めに進めておくのがよさそうです。
既に残りのセミナー日程の枠もかなり埋まってきているとのことなので、興味がある方はぜひ早めに楽天LIFULL STAYのセミナーに申込まれることをおすすめします!
【参照サイト】楽天LIFULL STAY
(Livhub 編集部)
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