2005年、アメリカはテキサス州のオースティンで始まったバケーションレンタルサイト「HomeAway(ホームアウェイ)」。設立以降、急速にユーザー数を拡大し、アメリカやイギリス、フランス、ドイツ、ブラジル、オーストラリア、シンガポールなど、各地でバケーションレンタルサービスを買収し、その後、2015年12月、オンライン旅行予約世界最大手のExpedia Group(エクスペディアグループ)に仲間入りしました。
2019年4月時点で世界190ヶ国、200万件以上の物件が掲載されており、毎月4,000万人以上の旅行者にリーチできる世界最大級のバケーションレンタルサイトであるホームアウェイは、ファミリーやグループが利用しやすい「一棟まるごと貸切物件」「家主不在型物件」に特化し、利用者数を伸ばしています。バケーションレンタルを利用した旅行者からの満足度は高く、82%がまた利用したいと回答しています。
そんな魅力あるバケーションレンタルを日本に広めるべく2016年に立ち上がったホームアウェイの日本支社が今回、かねて開設していた日本語版サイトについて、ホームアウェイのグローバルのプラットフォームへの移行を発表しました。今回の移行により、ゲストとホスト双方のユーザーエクスペリエンス(顧客体験)に大幅な改善があったことから、Livhub編集部では、日本版ウェブサイトの機能改善や同社の今後の展望について、ホームアウェイ日本支社長である木村奈津子氏に詳しくお話を伺ってきましたので、その内容をお伝えします。
すでに民泊ホストとして活躍されている方、また民泊ホストを始めようとしている方、バケーションレンタルに関心のある方、バケーションレンタルを利用してみたい方、さらには宿泊業界、旅行業界関係者の皆様はぜひご覧ください。
慶応義塾大学、ワシントン州立大学交換留学奨学生。2005年から2007年までアマゾン・ジャパンにて音楽&DVDプロダクト・マネージャー、2007年から2016年までエクスペディア・ジャパン シニア・マーケティング・マネージャー、エクスペディア 北アジア/ジャパン マーケティング・ディレクターを経て、2016年10月 HomeAway K.K 日本支社長に就任。
消費財の海外マーケティング、インターネットマーケティング、PRとブランディングを得意とし、ソニー、アマゾンなど複数のグローバル企業で常に日本文化と海外文化の狭間に立ってきた。これまでに仕事、プライベートで40都市以上に居住+旅行。2007年より世界最大のオンライン旅行サイトの日本法人立上げ期よりエクスペディアのマーケティング責任者を務め、北アジア(日本、韓国、香港、台湾)のサイト立ち上げ、マーケティング戦略なども統括し、オンライン、オフライン広告、ソーシャルメディア、PR等を統合したマーケティング手法でブランド認知とビジネス拡大を牽引してきた。2016年よりエクスペディアが買収した世界最大級のバケーションレンタルサイト「HomeAway」日本法人の社長を務め、国内の仕入れと日本サイトのマーケティングを管轄する。
グローバルサイトへの移行で大きく機能改善!スピードアップで使いやすく
今回、ホームアウェイの日本版サイトが、グローバルのウェブサイトへの移行を果たしました。この移行により、旅行者が検索できる物件数が大幅に増加、そして、ホストの販路も大幅に拡大しました。
まず、ゲスト側のメリットについて、お話しします。これまで日本版のウェブサイトで海外の物件を検索するときは、HomeAway傘下のtravelmobというアジアの旧プラットフォームからhomeaway.comに連携していたこともあり、すべて英語表記でした。それが、今回の移行で、グローバルでのホームアウェイの取扱物件200万件以上に物件詳細も含めてすべて日本語でアクセスできるようになりました。
ホテルの掲載を中心としたOTAでは、アメニティの種類やアクセスなど、あらかじめ決められた項目をホストにチェックしてもらい標準化されたテンプレートに基づき多言語に翻訳するのが通常ですが、バケーションレンタルの場合、ホテルと違い個人所有のユニークな物件も多いため、ホームアウェイの場合は、例えば、ホストや物件の歴史、物件周辺の魅力、アクセスなどを自由に書くことができます。これは非常に多くのバリエーションがあり、ホームアウェイにとってはそれを翻訳すること自体がチャレンジングな試みでした。
例えば、ハワイなど日本からの旅客が多い国のホストは、日本人向けに翻訳のプロに依頼し、日本語で物件の説明文を用意している方も多くいらっしゃいますが、一般的に海外のホストからすると日本語はメジャーな言語ではないため、英語やスペイン語で物件の説明文を用意することが多くなります。それを自動翻訳により、日本語で読むことができるようになり、しかもかなり高い品質で提供できるようになりました。日本国内のウェブサイトでは日本語で表示されるのが当たり前ですが、アクセスできる海外の物件数が大幅に増えたこと、そして日本語に対応したのは非常に大きなメリットです。また、動作のスピードもかなり速く、使いやすくなりました。
ファミリー・グループにやさしい「トリップボード」の機能が追加!
ホームアウェイはファミリーやグループに特化していることもあり、4人以上で旅行するときに、どのような機能があったらもっと素敵なバケーションレンタルの物件を簡単に見つけることができるかについて、テストやリサーチをしています。例えば、別々の場所に住んでいる友達4人がハワイに行く場合、大概、1人か2人で宿を探し、メッセージツールでいくつかの物件のリンクを送り、「ここはどう?」などとコメントが返ってくるといった具合で決めていくのではないでしょうか。このように候補となる物件を集約するのは数が多ければ多いほど難しくなりがちです。
そこで、これを解消するために「トリップボード」という機能ができました。使い方は簡単で、例えば、テーマを設定するときに「ハワイ2019年6月」などと記入し、物件ごとのハートマークで選ぶと、トリップボードに追加されます。このトリップボードをシェアすることができます。
例えば、友達にメッセージを送るツールでリンクをシェアすることもできますし、Facebookでシェアすることもできます。そして、シェアされた友達からコメントが入り、5人や10人の意見がトリップボードに集まります。そして、宿泊物件のイメージを確認しながら、みんなの意見で「ここがいいね」と決めることが、友達、グループ、家族、2世帯、3世帯と離れていても、簡単にできるようになりました。
今後は宿を決めやすくなる機能が続々と増える予定です。例えば、ペイメント(決済)について、現在はスプリットペイメント(割り勘)の機能はありませんが、大人数の宿泊費用を誰かが一人で初めに払わなければいけなくなるのを避けるため、いずれはその機能を導入できるように働きかけていければと考えています。
絞り込み検索機能が充実!魅力あるバケーションレンタル・民泊物件をもっと選びやすく
絞り込み機能も改善されました。料金設定や物件タイプも世界中には多くのタイプがあり、例えば、シャトーやボート、城などがあり、見ているだけでも選ぶのが楽しくなるほど、検索項目が増えました。ほかにロケーションについても、オーシャンフロントやオーシャンビュー、山や湖など、細かく選択できるようになりました。
また、海外版で「ファミリーOK」「ペットフレンドリー」「キッチンが素敵」といった項目から選択することができるようになるなか、日本版でもそうした物件を選んでいただけるようになるなど、より細かく、物件を絞り込むことができるようになっています。
ホストの販路が大幅拡大!エクスペディアほか連携先での集客を実現
続いてホスト側の最大のメリットは、販路が広がったことによる圧倒的な集客力です。アジアの物件を、多くの欧米諸国の人々に販売できるようになったのは非常に大きな進歩です。
ホストとしてホームアウェイに物件を掲載すると、ホームアウェイを利用する全世界の月間ユニークユーザー約4,000万人に物件をアピールできるようになったほか、エクスペディアグループの一員として物件をホームアウェイだけでなくエクスペディアの海外ユーザーにもアピールできるようになります。さらに、ホームアウェイは海外の航空会社や比較サイトなど、巨大なウェブサイトとのパートナーシップを組んでおり、ホームアウェイ以外からの集客も見込めるのはホストにとっての大きなメリットです。
そのほかにも、例えば、これまでは何らかのトラブルが発生した場合のデポジットについて、オフラインでしか請求できなかったのをオンラインで請求できるようになったり、料金設定が柔軟にできるようになったりと、細かい機能の追加や改善によって、より安心して利用いただけるようになりました。また、コンテンツに関しては自由なフォーマットで提供された物件詳細も、日本語で提供されれば全世界の主要な言語に自動翻訳され、ご自身で英語などの翻訳を提供されたい場合は、多言語での翻訳を提供することもできるようになりました。
このように、ホストにとっては、販路が広がり、多くの世界のユーザーから検索されやすくなったのはもちろん、サイトの動作のスピードがあがり、簡単に各項目を設定できるようになったのも大きなメリットです。
ホストに魅力の機能が続々!移行までと今後のサイトアップデートについて
テクノロジーに継続的に大きな投資をしている会社として、いかにホストが使いやすいツールを提供できるか、いかにユーザーがITのメリットを享受できるかは非常に大切ですので、これまではグローバルのプラットフォームに移行させることを第一優先としてきました。ようやくその準備が整い、ホストとして活躍したい方への掲載のお願いや、旅行者の皆様に使っていただけるように活動する土壌ができました。
今もホスト、ゲスト双方に役立つ多くの情報が入ってきており、今後もプラットフォームとして大きく進化していきます。特にホスト側に関しては、グローバルでレベニューマネジメントに関するツールやシミュレーションのツールなどに非常に大きな投資をしており、将来そうした機能も日本版に追加される予定です。例えば、予約が入りにくいホストはなぜ予約が入らないのか、競合となる物件はどのような物件なのか、競合との違いはどこにあるのか、競合はホームアウェイからどれほどの売上があるのか、アメニティは何を置いているのか、広さ・立地はどうなのかなどといった「分析」や「気づき」をわかりやすく確認できるようにするツールです。
アメリカのサイトではすでにそういった新しい機能が追加されており、私も実際に本社のあるオースティンでデモを見てきました。そのデモでは、立地やスペースなど競合についての情報をホームアウェイのシステムが自動で選び、競合としてチェックする相手が決まっていました。この相手はもちろんホスト側でも自由に決定できます。そして、旅行者が他の物件と見比べた後、予約が入ると、何がきっかけで物件の予約につながったのかがわかるようになっていました。このようにホスト側が競合の情報も把握しながら、運用の改善につなげていくことができるツールはホストの皆様に大きな魅力を感じていただけることと思います。
一般的なシミュレーションツールでは、供給側の価格帯の平均値が提供される場合が多いですが、それと同時にホームアウェイ側の、エクスペディアも含めた旅行者側の見ている価格帯や日にちごとの需要ボリュームなど、需給双方のバランスが見てわかるようになると利益率の向上にもつながります。例えば、予約が多い日、少ない日も季節ごとに違います。ここで、年間を通して、一律に価格を設定していると、ローシーズンは適切な価格帯でも、ハイシーズンは価格を上げれば、もう少し利益を獲得できるといった予測がわかるようになります。
また、価格を提案する機能もあります。収益最大化が目的なのか、稼働率を高めるのが目的なのか。ホストによって目的が違ってくると思うので、目的別に見合った価格帯を提案するイメージです。詳細に関してはリリースの日をお待ちいただければと思います。
今後の展望とこれからホストとして活躍したい方へのメッセージ
ホームアウェイはファミリーとグループにフォーカスしています。日本はそれらの利用者のポテンシャルがかなり大きいと考えています。訪日客には、2世帯で訪れたり、具体的には、両親、友達と友達の家族と一緒に来るなど、6~7人で来たいというニーズがありますが、日本では東京、京都、大阪といった都市部において、大勢で泊まれる物件はまだまだ少ない状況です。弊社としてもグローバルの統一したメッセージとしてファミリー、グループに利用していただきたいというのが確固とした方針として決まっているため、日本では50㎡以上くらいの広めの物件を保有するホスト志望の方にぜひ物件をリストしていただきたい、参加していただきたいと考えています。今もホテルの数はそれなりにありますが、ホテル以外に宿泊したいニーズがある顧客層が、新たな顧客層になるとみています。
例えば、日本に行くか、タイに行くかを比較している家族がいる場合、コストパフォーマンスはタイのほうがいい、またタイのヴィラと日本のマンションを比べると、どうしても家族はヴィラのほうがいいとなるように、現在、日本で提供されている施設の多くはファミリーフレンドリーではないことが多いです。一方で、古民家や別荘や空き家活用など、ポテンシャルがある物件はまだまだあると考えています。ですので、そうした物件を積極的に掲載していきたい、そしてファミリー・グループの皆様に泊まってもらい、豊かな旅行をしていただける土壌を作っていきたいと思っています。
これまで民泊やバケーションレンタルに関心があった方でもホームアウェイの日本版のウェブサイトがグローバルプラットフォームへ移行したことを知らない方は多くおられると思います。2017年時点では統合の予定もなかったため、営業やマーケティング活動も行ってきましたが、直近1年は統合に向けた準備に徹してきました。そして、今回の統合により、ホストとして物件を掲載することによるメリットを大きく享受いただけるようになったと考えております。そして実際にそのメリットを知り、感じていただきたいと思っています。現在、ホームアウェイは欧米からの集客力があり、エクスペディアとの関係もあり、さらにアジアでもエクスペディアのマーケットシェアは拡大しているので、ホームアウェイとエクスペディアの両軸でインバウンドを集客できるのは、物件を掲載いただく最大のメリットです。ですので、ぜひホームアウェイに掲載していただきたく、特に50㎡以上のファミリー・グループ向け物件のホストに参画してもらいたいと思っています。そして、ファミリー・グループの旅行をともに、もっと豊かにしていきましょう。
編集後記
今回、ホームアウェイ日本支社長である木村奈津子氏にお話を伺ったことで、ホームアウェイのウェブサイトが大幅に機能改善し、ゲスト、ホストともに、より便利に利用できるようになったことがわかりました。特にゲストにとっては、国内外200万件以上の物件の中から、希望する条件に合った物件を簡単に見つけることができるようになり、一方、ホストにとってはエクスペディアほかの提携サイトにも集客の導線が広がることから、インバウンドによる物件の稼働率アップがさらに期待できるようになりました。そして2019年はプライシング(料金設定)やペイメント(決済)に関する便利な機能のリリースも予定されているとのことで、ホームアウェイのさらなる集客拡大が期待されます。これから新たに民泊ホストとして活躍したいオーナーや事業者の皆様は、毎月4,000万人以上の世界の旅行者が利用するホームアウェイのプラットフォームに登録し、ぜひ活用してみてください。
【公式ウェブサイト】ホームアウェイ | 民泊予約 : ヴィラ、コテージ、ロッジ、アパート等
【関連ページ】HomeAway(ホームアウェイ)
(Livhub編集部)
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