「好きな時に好きな場所で暮らす多拠点生活」というコンセプトで2019年1月にサービスをローンチし、現在も地方自治体や企業と連携しながら全国の空き家を活用し、定額制のライフプラットフォーム「ADDress」を展開する株式会社アドレス。そのインパクトは昨年話題になった「多拠点生活」「アドレスホッパー」というようなムーブメントにも大きく影響を与えている。
そのサービススタートから2年が経過した。今回はサービスの現状と今後の展開や課題について、同社拠点開発兼家守事業部長の後藤伸啓氏にオンラインでお話を伺った。
1983年生まれ。兵庫県西宮市出身。2010年当時勤めていた会社の転勤により東京へ。当時黎明期だったシェアハウスに入居し、住人兼管理人として様々なイベントを企画、運営。その頃シェアハウスの同居人として現在ADDressの代表を務める佐別当隆志氏と出会い、時を経て2019年ADDressへ参画。クラウドファンディングの責任者として累計5000万円以上の資金を集めた後、拠点開発事業部と家守事業部の責任者に就任。1年で100拠点以上の物件立ち上げ、100名以上の家守採用を実施し、全国47都道府県へ物件進出を達成。
全国47都道府県にADDressの拠点を
Livhub
後藤さん、今日はよろしくお願いいたします。ちなみに今日はどちらからでしょうか?
後藤さん
今日は自宅からです。会社でNagatacho GRiDというシェアオフィスを借りているのですが、席は1つしかなく、社員がフルリモートOKの会社になっています。自宅だったり、ADDressの家、コワーキングスペースだったり、それぞれが自由な環境で仕事しています。
Livhub
ADDressらしい、イメージ通りの働き方ですね。
後藤さん
全国住み放題のサービスを展開しているのに、毎日同じ事務所に定時に出勤して、みたいなのはちょっとイケてないなと。自分が一番パフォーマンスを発揮しやすい環境で働いてね、という感じの会社です。
Livhub
いい環境ですね。現在、社員の方は何名ほどいらっしゃるのでしょうか?
後藤さん
社員はもう15名ぐらいになりました。ほかにもいろいろな働き方の業務委託の方などがいて、全部で40人位です。
Livhub
サービス開始のころと比べると、規模が大きくなりましたね。
後藤さん
あのときはオープンしたばかりで、物件も10件ぐらいしかなかったと思います。
Livhub
現在の物件数は130物件とウェブに書いてありましたが、間違いないでしょうか?
後藤さん
ちょうど4月末で155物件になりました。今は毎月約15~20軒ペースで物件が増えています。
Livhub
以前掲げていた全国47都道府県に展開するという目標はもう達成されたのですか?
後藤さん
4月末でついに達成しました。あとは年内に300物件達成を目標に掲げています。
Livhub
成長のぺースが著しいですね。まず最初に現在の事業の概要と、スタート時期と変わってきた部分があれば教えていただけますか?
後藤さん
基本は変わらず月4.4万の定額で日本各地でADDressに登録している家に住めるサービスです。ただ最近はより時代の変化に合わせて、多種多様な物件を扱っています。全物件の半数弱ぐらいが自社管理物件で、残りの半分位が宿泊施設との提携物件になります。自社管理物件はADDressがサブリースで直接借り上げて、会員向けに賃貸で貸し出すというスキームで運営しているものになります。提携物件は1部屋単位で宿泊施設と契約して、ADDress物件として登録していただいています。今は提携物件が増えているところが、初年度と違う部分ですね。
Livhub
やはりコロナ禍での宿泊施設の不振が背景にある?
後藤さん
それもありますが、そういう課題に直面した宿泊施設のオーナーさんがコロナ禍でこれからの新しい宿泊施設の在り方、存在意義などを真剣に考えていて、試行錯誤されている方が沢山いらっしゃいます。ADDressは定額会員制のサービスなので、そのプラットフォームに物件登録すればいろいろな会員さんが来てくれる。そしてワーケーションニーズなどがありますね。短期ではなくその地域に深く関わりたいという会員さんもいるので、今までの顧客層と違うところを取り込むためにADDressと提携いただく宿泊施設が増えました。
Livhub
スタート当初は空き家をうまく活用した事業という印象だったのですが、宿泊施設との提携物件が増えるという流れは予想されていましたか?
後藤さん
予想してなかったですね。
Livhub
偶然訪れたコロナ禍にADDressのプラットフォームが偶然フィットした?
後藤さん
そうですね。ただし、ADDressはクローズドの会員制サービスで、そこが民泊や旅館業を運営されている宿泊施設とは違う部分です。ユーザー層やニーズも異なっているので、ADDressと提携いただいたり、近隣にADDressの家ができたとしても、お客様の奪い合いにはならないかと思います。
また、地域の宿泊施設とは共存を目指していて、例えば今までは施設を使わないような企業が使ってくれたりとか、そのエリアに今まで興味がなかった人達がADDressの物件ができたことでそのエリアに来てその地域のことを深く知ることもあります。ADDressは住まいに特化した機能なので、それ以外の飲食店や銭湯・温泉などは、会員さんがその街に出て楽しんでくれています。つまり地域や街全体が一つの体験拠点のような感じですね。
そして外の地域の人やお店とのハブ役になるのが*家守(やもり)の役割です。宿泊施設オーナーさんやそのスタッフにも家守の役割をやってもらっていて、ただ寝泊りする部屋を提供するだけではなく、地域のつなぎ役として会員さんをサポートすることをお願いしています。
Livhub
家守は単に施設の管理者ではなくて、コミュニティ・マネージャー的な役割も担っているのですね。そして地域のホテルや旅館の方々も、ADDressが競合サービスではなく、特定の対象に対する会員制サービスだと認識してくれていると。
ADDressはこれまでになかったサービス形態なので、それが地域の旅館業の人からはどう見えるのかは気になっていましたが、そういった共存は素晴らしいですね。
次に会員さんとか家守さんの属性についてお聞きしたいです。まず会員はどういう属性の方が多いのでしょうか?
後藤さん
2019年のサービスローンチ当初は、クラウドファンディングで会員を集めていたので、定額の全国住み放題サービスというところに興味を持った、新しいもの好きの人が多い印象でした。
コロナ禍の前だったので、住む所に自由がきく働き方をしている人となると、自営業とかフリーランスとか、自由に動けるライターやクリエイティブ関係の方が多かったんです。ただ最近はリモートワークができる会社員の人も圧倒的に増えてきています。そういう方々がADDressというプラットフォームを使って、働き方や暮らしを見つめ直す機会が最近は増えてきている。
Livhub
なるほど。
後藤さん
そして以前に比べて20代から30代が中心になってきています。
Livhub
ユーザーの年齢が少し下がってきた?
後藤さん
今までは30代から40代だったのですが、学生を含めて若い人の利用も増えてきています。そういう方々は今まで多拠点生活をしたくても場所に縛られることが多くて利用できない方が多かった。そういう潜在的なニーズを持っていた人が、コロナ禍を経てADDressを利用できるライフスタイルに変わったのが大きい。緊急事態宣言もありましたけど、宣言が出るとADDressの会員数が増えるという現象が起きていました。
Livhub
コロナ禍によるリモートワークの普及と、密を避けるトレンドが後押しになって、多拠点生活が一般化したのでしょうか。
後藤さん
そうですね。多拠点生活が手の届きやすい存在になってきたことが大きい。
Livhub
予想もしなかった社会の流れですね。
後藤さん
代表の佐別当も「コロナ禍を予測してサービスを作ったんですか?」と言われるくらい、追い風な部分も多いです。
Livhub
その意味では、今の社会に必要なプラットフォームですね。
後藤さん
自治体や国の動きとしても、新しい生活様式の推進をするために、最近「全国二地域居住等推進協議会」が発足しました。もう600以上の自治体が参加を表明していて、そこにADDressが民間から参画しています。
【関連ページ】地域と街を体験拠点に。4.4万円で全国住み放題プラットフォーム「ADDress(ADDress)」の今とこれから<後編>
(Livhub編集部 石塚和人)
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