旅行のあり方は、時代とともに変化する。今、ただ「人気だから」「ガイドブックで見たから」という理由ではない、新たな旅のきっかけや観光に着目する人が増えているようだ。
コロナ禍を経て18~29歳のいわゆるZ世代の間では、地域を訪れるだけでなく訪問先での体験や交流など地域との関わりを求める「地域体験交流型」の旅行スタイルへの注目度が高まっている(※)。さらに「地域のためになること、貢献できることを選びたい」という人が増えているという。
こうした人とのつながりや地域への貢献を大切にする旅は、世界各地でも需要が高まり、その体験ができる宿泊先を見つけることができる検索サイトも多く生まれている。どんなホストが見つかるのだろうか。それぞれのサイトを見てみよう。
ドイツ:socialbnb
ドイツ発の「socialbnb」は社会・環境に貢献するプロジェクトを行っているホストが掲載されているサイトだ。同社のメンバーは、カンボジアを訪れた際、トゥクトゥクドライバーだったSeng Chanty氏と出会い、無料で英語を学べる学校を建設したいという彼の願いを知った。建設資金を募るために、Seng氏の自宅の部屋を旅行者に貸すアイデアを共同で立ち上げたことが、socialbnb誕生のきっかけだったという。
それぞれの宿泊施設やホストが行うプロジェクトは、教育・平等・自然保護・健康・アニマルウェルフェア・スポーツとカテゴリーに分けられ、自分が興味のある分野に絞って宿泊先を探すことができる。多くの場合、宿泊者はそこで実施されているプロジェクトに参加する機会を得ることができ、地域への貢献や学びの場となっているのだ。
同サイトでは、宿泊料金と手数料の内訳を公表。はじめにホストがプロジェクト運営に必要な値段を設定し、その15%分を手数料として上乗せして合計金額を掲載している。手数料は予約時に支払い、ホストへの支払いは宿泊者から直接支払われるため、透明性が確保されている。
【参照サイト】socialbnb
アイルランド:Homestay
2013年にアイルランドで生まれた「Homestay」では、170以上の国や地域から、6万3,000以上のホームステイができる部屋を探すことができる。学生や一人旅の旅行者がサービスの主な対象者だ。
同サイトは、実際に住んでいる家の部屋を提供し、ゲストと共に時間を過ごすことができるホストを中心に掲載している。誰も家にいない間貸し出す形式のホストは掲載していないという。財布に優しい宿泊方法を提供しつつ、地元住民と共に時間を過ごし、地域ならではの体験を得ることを重視しているのだ。
空き部屋の貸出の際は、ホストとゲストがオンラインでやり取りを済ませ、効率良く宿の予約から利用までを完了させることも増えた。一方で、旅行先だからこそ出会える人とのコミュニケーションの温かさも大切にしたい。
【参照サイト】Homestay
フランス:GreenGo
フランス発、国内のサステナブルな宿の検索サイト「GreenGo」。ホストとして掲載されるためには、サステナビリティに関わる100項目もの掲載基準のうち9割をクリアしなくてはならない。また最低限のサステナビリティ基準を必ず満たすよう、同社スタッフが各ホストと話す機会を設けているとのこと。
しかし、これだけではない。ホストにはカーボンフットプリントの計算ツールを提供し、「①持続可能な開発の価値観の遵守・②金額に見合った公正な価値の提供・③温かいローカルな歓迎の保証」を主軸としたGreenGo憲章へのサインを求めている。
GreenGoは、地球温暖化の現状と、CO2を多く排出してきた観光業界への課題意識から生まれた。その厳格な基準と憲章に共感するホストならば、自然環境と真剣に向き合いながらゲストを温かく迎えてくれるはずだ。
【参照サイト】GreenGo
イタリア:Fairbnb
人気の観光地イタリア・ベネチアにおけるオーバーツーリズムと、それに伴う地域アイデンティティの衰退を課題と捉えて生まれたのが「Fairbnb」だ。短期滞在が旅行者とホストの両方にとってより良いものとなる仕組みづくりを目指している。
同サービスの特徴は、予約手数料の半分が、宿泊者が自ら選ぶローカルプロジェクトに届くこと。これにより宿泊者は、旅行先での地域の取り組みに貢献できる。さらに、地域住民は自身がサイトに登録して宿泊機会を提供するほど、地域のプロジェクトへより多くの資金を届けられる。ホストにとっても、地元の力になる機会なのだ。
オーバーツーリズムの課題は政策で制限をかける印象が強いが、こうして市民を中心にやさしい繋がりを作ろうとする動きもあるのだ。
【参照サイト】Fairbnb
「地域と繋がる」旅へ、出かけてみよう
いかがだっただろうか。今回の記事では欧州発のサイトをメインに紹介したが、日本でも、まちと一体となって運営する宿を掲載する「まちやど」や、全国の農山漁村の体験・宿泊がさがせる「農泊ポータルサイト」などがあり、地域のことを知る体験に繋がる旅のあり方が広がりつつある。
また、地方で人手を必要とするホテルや農家のもとで無料で宿泊しながら短期的に仕事としてお手伝いできる「おてつたび」のように、旅と仕事を掛け合わせることで新たな交流を模索する動きも見られる。
これからは「あの人に会いたい」「あの農園でまた一緒に作業したい」──そんな思いで旅支度を始める人が増えていくのではないだろうか。
※本記事は、ハーチ株式会社が運営する「IDEAS FOR GOOD」からの転載記事となります。
※ 地域とのかかわりを求めるZ世代 コロナ禍を経て「地域貢献意識」は上昇し、Z世代の男性は4割を超える||じゃらんリサーチセンター
【参照サイト】Alternative Accommodation Platforms Prioritize Social Connection, Community Care|Sustainable Brands
【参照サイト】おてつたび
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