空き家を民泊転用すると違法民泊になるケースは?注意点と対策

民泊の届出数が増加する中で、制度を理解しないまま民泊事業に新規参入した事業者が違法民泊として削除などの処罰を受ける事例が発生しています。

空き家は民泊転用による有効活用が推進され、補助金が出る自治体もある事から転用が検討されることが多い物件ですが、制度を理解しないまま経営した結果、違法民泊となってしまうケースがあります。

この記事では違法民泊の実態、空き家を民泊転用した時に違法民泊となるケース、対策や注意点をご紹介します。

1.違法民泊の状況

2018年に施行された住宅宿泊事業法(民泊新法)や民泊サービスの需要増加により、民泊の届出が増える一方で「違法民泊」が問題視されています。

以下の表は観光庁が2018年9月に住宅宿泊事業法における届出住宅について、自治体にて適法性を調査・確認した結果を取りまとめた結果となります。

※国土交通省「9月末時点における民泊物件の適法性の確認結果について」より引用

「違法認定あり・削除対象」「適法性の確認不可・再報告対象」となった理由としては、事業者の氏名等が異なっている、所在地が異なっている、施設名称が異なっている等となっています。

観光庁は住宅宿泊仲介業者等に対し「違法認定あり・削除対象」の物件は削除、「適法性の確認不可・再報告対象」の物件は一定期間内に情報が修正されない場合は削除と指導しています。

適法と確認できなかった民泊は16%と言う結果となり、届出が増加している分、民泊に関する法律を知らない、事業経営に慣れていない新規参入の事業者が増えていると見られています。

違法民泊は法律上の問題だけではなく、衛生管理上の問題や火災といった事故発生時の対応の問題、近隣住民から理解を得ていない事に関する苦情が発生するケースがあり、中長期的な運営が難しく物件に損害を被る可能性があります。

このような違法民泊の背景に、高齢化社会により空き家問題が増加し、自治体から補助金が出る事から空き家を民泊に転用した結果、違法民泊となってしまったケースが増えていることも要因の一つと言えるでしょう。

2.空き家が違法民泊となるケース

空き家が違法民泊となるケースとしては、旅館業法の許可を得ていない、住宅宿泊事業法の届出を行っていない等、手続きを行っていない事が挙げられます。

また申請を行っても許可や認可が得られず、民泊として認められていない施設が民泊サービスを行うケース、集合住宅で管理規約上問題があるケースがあります。

2-1.届出を出していない、許可・認可を得ていない

民泊を始めるにあたっては、下記3つの届出のいずれかを行う必要があります。

  1. 旅館業法での都道府県知事の許可
  2. 国家戦略特区法上(特区民泊)の認定
  3. 住宅宿泊事業法の認可

上記の3ついずれかの手続きを行わず、無断で住宅を利用して旅行者に宿泊を提供する民泊サービスを行った場合、違法民泊となり罰則の対象となります。

これらの申請をしていたとしても、旅館業法による簡易宿泊所としての許可を得られなかった、国家戦略特区法(特区民泊)の認定を受けていない、住宅宿泊事業法の届出が受理されなかったにも関わらず民泊サービスを行っているケースでも違法民泊となります。

2-2.管理規約に違反している

空き家がマンションやアパート等の集合住宅で民泊サービスを提供する場合、管理規約で禁止されている物件では規約違反となります。

管理規約を確認し許可されている場合、規約に明記されていなくてもオーナーの許可を得られたケースでは民泊運営を行うことができます。

規約に明記されていない場合は、民泊経営を許可する旨を書類に明記してもらう事で後のトラブル防止に役立ちます。

3.違法民泊にならないための対策と注意点

違法民泊にならないためには、旅館業法・国家戦略特区法(特区民泊)・住宅宿泊事業法の許認可や届出を行い、3つの制度の違いを理解しておきましょう。

3-1.3つの制度いずれかの許可・認可・届出を行い運営する

空き家に限った事ではありませんが、住宅を民泊として転用する場合には旅館業法での都道府県知事の許可、国家戦略特区法(特区民泊)の認定、住宅宿泊事業法の届出のいずれかを行いましょう。

3-2.3つの制度の違いを理解する

民泊を合法に運営するためには、旅館業法、国家戦略特区法(特区民泊)、住宅宿泊事業法いずれかの許可・認定・届出が必要ですが、管轄する省庁が異なるためそれぞれ規定が異なります。

例えば、旅館業法では簡易宿泊所として厚生労働省からの「許可」が必要で、国家戦略特区法では内閣府から「認定」を受ける、住宅宿泊事業法では国土交通省、厚生労働省、観光庁に「届出」を行うことで運営ができます。

最低床面積の規定や近隣住民とのトラブル防止措置も制度により異なるため、以下の表で確認してみましょう。

旅館業法簡易宿所営業 特区民泊 住宅宿泊事業法
許認可など 許可 認定 届出
提供日数の制限 なし 2泊3日以上の滞在が条件 年間営業日数180日以内(条例で引き下げ可能)
宿泊者名簿の作成・保存義務
玄関帳場の設置義務 なし(条例による設置義務付けも可能) なし 宿泊者名簿の作成・保存ができれば物理的設置は求めない。
最低床面積(3.3㎡/人)の確保(宿泊人数の制限) 一居室の床面積原則25㎡以上(自治体の判断で変更可能)
上記以外の衛生措置
(換気、採光、照明、防湿、清潔などの措置)

(換気、採光、照明、防湿、清潔などの措置)

(定期的な清掃等)
非常用照明などの安全確保の措置義務
(建築基準法において措置)

(建築基準法において措置)

(家主居住型で民泊部分の面積が小さい場合は緩和)
消防設備の設置(消火器、誘導灯、連動型火災警報器)
(建築基準法において措置)

(建築基準法において措置)

(家主居住型で民泊部分の面積が小さい場合は緩和)
近隣住民とのトラブル防止措置 なし
(近隣住民への適切な説明、苦情対応)

(宿泊者への説明義務、苦情解決の義務)
(届出時にマンション管理規約、賃貸住宅の賃貸契約書の確認)
不在時の管理業者への委託義務 なし なし

非常用照明といった安全確保の措置や、消防用設備の設置義務は3つの制度全てで義務付けられています。

住宅宿泊事業法(民泊新法)による運営は住宅専用地域での営業が可能で、許可や認定ではなく「届出」であるため、3つのうち最も参入のハードルが低い民泊の形態であると言えますが、年間180日の営業日数の制限がありますので注意しましょう。

また住宅宿泊事業法の対象となる物件の要件の一つに、「現に人の生活の本拠として使用されている家屋」という文言があります。特定の人が継続して居住しているという状態を指しますが、空き家の場合は人が居住していないケースが多いため注意が必要です。

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まとめ

空き家を民泊転用して違法民泊にならないためには、3つの制度いずれかの許可・認可・届出を行い運営する、3つの制度の違いを理解する事が重要です。

また空き家は人が住んでいないケースが多いため、住宅宿泊事業法の「現に人の生活の本拠として使用されている家屋」という要件に該当しない場合は注意しましょう。

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Livhub 編集部

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