空き家を民泊運用するメリット・デメリットは?賃貸経営・売却と徹底比較

全国的に空き家の増加が問題となっています。空き家というと、実家などを相続したものの、管理が疎かになってしまっている家という印象があります。

しかし、平成26年の国土交通省による「空き家実態調査」によると、一時的・二次的な使用をしている空き家が全体の4割も占めています。賃貸用・売却用の空き家を入れると、実に5割以上の空き家は、少なくとも人が住める程度の管理をしている状態になっていることがわかります。

空き家となった実家を処分すべきか、あるいは活用すべきか、決めかねていたり、活用したいと思っていても、どのように活用すべきか悩んでいたりして、そのまま放置しているという方も多いのではないでしょうか。

この記事では、空き家活用方法として、民泊・賃貸・売却の3つの方法のメリット・デメリットについて、徹底比較します。

1.空き家を民泊として活用するには

一般的に、空き家を民泊として活用するとなると、2018年6月に施行された住宅宿泊事業法によることになります。

住宅宿泊事業法では、設備要件と居住要件があり、設備要件は「台所、浴室、便所、洗面設備」があればよいものとされています。基本的には、通常の居住用に管理されている住宅であれば、大掛かりなリフォームは必要ないでしょう。

客室の面積基準を満たすことや玄関帳場を設置することなどが義務づけられている旅館業法による簡易宿所などに比べると、設備要件のハードルはかなり低いといえます。

ただし、住宅宿泊事業法の民泊であっても、家主が滞在して自ら宿泊業の運営管理を行う場合には、居住要件を満たさなくてはいけません。これらの居住要件をクリアできない場合は、家主不在型の民泊を行うことになるでしょう。

家主不在型の民泊では、住宅宿泊の管理業務を専門の住宅宿泊管理業者に委託することが義務付けられています。

これらの背景から、家主不在型の民泊として住宅宿泊管理業者に宿泊業の運営管理を委託し、宿泊事業法に定められた年間180日の営業制限の範囲内で活用するのが、空き家の民泊経営で最も多いケースであるといえます。

また、空き家の立地する地域の用途制限をクリアしており、多少のリフォーム費用をかけても本格的に民泊活用を目指すのであれば、旅館業法の簡易宿所許可を取得して運営するという選択肢もあります。簡易宿所であれば、営業日数の制限はありません。

2.賃貸活用のメリットとデメリット

空き家を活用しようという場合のスタンダードな方法は、賃貸活用する方法です。通常の居住用として賃貸する方法が最も多いと言えますが、シェアハウスや高齢者向け優良賃貸住宅など、専門業者の管理やサービスなどを付加して賃貸活用する方法もあります。

人が住める程度の管理をしている空き家であれば、賃貸する際に大規模なリフォームが必要になる可能性は低いといえます。

2-1.賃貸活用のメリット

賃貸活用の最大のメリットは、毎月の家賃収入が見込めることです。空き家の場合でも税金や修繕費などの維持費が発生しますが、賃貸に出せば家賃収入を得ることができ、家の維持費と相殺することが可能です。

賃貸用のリフォーム費用は多少かかりますが、入居者が付けば、トータルとして運用益を得ることも十分期待できます。賃貸に出していると、普段の清掃や軽微な修繕は、入居者がおこなってくれます。多少なりとも、空き家の劣化を抑えることができます。

また、実家などの思い入れのある空き家を残しておくことが可能です。入居者が退去した後には、再び自分で住むこともできます。運用益を得ながら空き家を残しておくことが可能になる点も賃貸活用のメリットと言えるでしょう。

2-2.賃貸活用のデメリット

賃貸活用のデメリットとしては、初期のリフォーム費用や入居中の修繕費がかかることが挙げられます。万一、入居者がつかない場合は、家賃が入らずに維持費だけが出ていくという可能性もあります。

また、不動産投資として考えた場合、戸建ての場合はアパートなどの集合住宅の運用に比べると利回りが低くなる傾向があります。

さらに、頻繁に空き家を利用したいと考えているオーナーにとっては、入居者の入居中は家を利用できないのもデメリットといえます。

3.売却のメリットとデメリット

空き家を売却すると、物件の維持管理の手間や税金の費用、将来的に発生する相続などの問題が解消するため、最もシンプルな選択肢と言えます。空き家を売却すると、次のようなメリットとデメリットが考えられます。

3-1.売却のメリット

売却のメリットは、空き家をまとまった現金に換えることができるということです。立地や広さなどにもよりますが、大きな金額になれば数千万単位で現金が入ってくるため、目先の収入不安がある場合は検討したい選択肢の一つとなるでしょう。

また、空き家には国の政策によって売却によって発生する譲渡所得税を減額する優遇措置があります。譲渡益から3,000万円を控除できるので、条件に該当する空き家であれば、売却するメリットは大きいでしょう。(*国税庁「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」を参照)

また、空き家を売却してしまえば、今後の維持費用がかからなくなるのもメリットです。賃貸に出した場合の修繕費用もかからず、家を所有していることから生じうるあらゆるリスクから解放されるのも大きなメリットです。

3-2.売却のデメリット

売却の根本的なデメリットは、売却後には空き家を利用することができない、ということです。他人の手に渡れば、取り壊されてなくなってしまう可能性もあります。

思い入れのある実家をできる限り残したいと考えている人にとっては他に多少のメリットがあっても、心理的に受け入れがたいデメリットになり得ます。

一見、多額の現金収入があるように思える売却ですが、その分、多額の譲渡所得税が発生する可能性もあるというデメリットがあります。長期保有の場合は、住民税も含めると売却益の20%、5年以内の短期保有の場合は、売却益の39%が税金として課税されます。(*国税庁「譲渡所得(土地や建物を譲渡したとき)」を参照)

また、立地が郊外であるなど、空き家の属性が売買市場に適していない場合は希望価格での売却が難しい可能性もあります。そのため、空き家の売却を検討するのであればまずはどのくらいで物件が売却できるのか不動産会社の査定を受けておくことが大切です。

最大10社の不動産会社へ同時に査定依頼が出来る「リガイド」や、提携企業数が1600社以上の「イエウール」などの不動産一括査定サイトを活用し、複数の不動産会社の査定結果を比較してみましょう。

4.民泊活用のメリットとデメリット

これまで、空き家を賃貸に出した場合と売却した場合のメリット・デメリットをみてきました。要点をまとめると、賃貸に出すのは、空き家を残したい人にメリットが大きいですが、空室率が高いと運用益はそれほど期待できず、住みたいときに住めなくなります。

売却するのは、空き家を残したい人には向かないが、現金収入がほしい人にはメリットがある方法といえます。

これらと比較して、空き家を民泊として活用するのは、どのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか。

4-1.民泊活用のメリット

民泊として空き家を活用するメリットとして、経営に成功すれば、賃貸活用するよりも高い収益を得られる可能性があることが挙げられます。

現状はコロナ禍で宿泊ニーズが大幅に減少していますが、今後ニーズが回復して来れば、高単価の宿泊料収入を得られる可能性はあるでしょう。

住宅宿泊事業法を利用すれば、空き家を民泊用として利用する際のリフォーム費用は最低限に抑えられます。180日の営業制限があっても、コストに見合うだけの利益を出せる可能性があるでしょう。

収益を追求するならば、営業制限により宿泊用に稼働できない時期は、アイディア次第で、マンスリーマンションや貸イベントスペースなどの運用収益も期待できます。

空き家に思い入れがあって残したい人、定期的に利用したい人にとっても、民泊として活用する方法は向いていると言えます。宿泊用として常に一定レベル以上の管理ができ、稼働していない時期には自己居住用にすることもできます。

4-2.民泊活用のデメリット

民泊活用のデメリットとしては、収入の変動が大きいことが挙げられます。収入を宿泊業という事業に依存するため、今回のコロナショックのように、環境の変化によって需要が減り収入が減少するリスクもあります。

また、初期投資や維持管理の費用がかかる、というデメリットもあります。宿泊用として利用するには、最低限の家具・家電をそろえる必要もあり、賃貸活用よりも初期投資の費用がかかります。

維持管理についても、住宅宿泊管理業者に委託すると、稼働していない日であっても、最低限の委託管理の固定費はかかってしまうでしょう。

また、宿泊業特有のトラブルのリスクもあります。住宅宿泊事業法による民泊は住宅街でも可能ですから、不特定多数の宿泊者を受け入れることで、宿泊者と近隣住民との間でトラブルが起きるリスクもあります。

民泊活用する場合、このような宿泊業としての事業上のリスクを処理する覚悟が求められます。

まとめ

空き家の活用方法について民泊・賃貸・売却のメリット・デメリットを比較しました。

できるだけ手間を省きたい方は売却、手間をかけてでも家を残したい方は賃貸や民泊、観光地へのアクセスが良い立地の場合は民泊を検討しやすいでしょう。

また、空き家を民泊として活用する方法は、賃貸活用するよりも利益を上げられる可能性があり、自己居住用としても利用できるというメリットがある一方で、収入・費用面やトラブルのリスクや、立地条件によっては民泊運営に適さない場合もあります。

まずはどのような活用方法が適しているのか、この記事でご紹介したそれぞれのメリットとデメリットを比較し、検討してみてはいかがでしょうか。

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Livhub 編集部

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