ワーケーションに関する国からの補助金制度

テレワークの普及に伴い、働き方の一つとしても注目されているワーケーション。その流れを地域に取り入れたいと考えている自治体の方もいるのではないでしょうか。一方で、「どのような受け入れ体制があればよいのかわからない」「費用面でのハードルが高い」といった悩みもあるでしょう。そこで今回は、国から自治体へ向けたワーケーションの補助金制度の種類や、役立つ情報サイトをご紹介します。

国から自治体への補助金制度とは

自治体がワーケーションの誘致に取り組む際には、活用できる国の補助金制度があります。自治体がワーケーションの推進やサテライトオフィスの設置などを実施する際に必要な費用の一部を、国が補助するもので、補助金の内容は制度によって異なります。地方創生や関係人口の創出などを目的に、ワーケーションを誘致したい自治体を支援する制度のため、うまく活用することでワーケーション誘致のハードルを下げることができ、地域に人を呼び込むきっかけにもなります。

ワーケーション促進に有効な自治体向けの補助金の種類

ワーケーションを地方に取り入れるうえで活用できる、国の補助金制度にはどのようなものがあるのでしょうか?ここでは4種類紹介します。

デジタル田園都市国家構想推進交付金

デジタルを活用し、地域の課題解決や魅力向上の実現に向けた取り組みを支援するのが「デジタル田園都市国家構想推進交付金」です。

この交付金は、「デジタル実装タイプ」と「地方創生テレワークタイプ」の2つの枠組みがあり、このうち「転職なき移住」の実現や、地方への新たな人の流れを創出するワーケーション促進には、「地方創生テレワークタイプ」が活用できます。補助対象となる事業には、働く場所を作るなどの「サテライトオフィス等の整備や開設支援、活用促進事業」等が該当します。

なお、2022(令和4)年度の募集については、同年5月時点でスケジュール等が未発表となっているため、今後の公募スケジュールはHPなどを確認しましょう。

活用事例

新潟県三条市では、交付金を利用して民間のサテライトオフィス等開設支援事業を行い、JR燕三条駅構内の一部をサテライトオフィスとして改修しました。

<URL>デジタル田園都市国家構想推進交付金(内閣官房デジタル田園都市国家構想実現会議事務局)

地方創生テレワーク交付金

「地方創生テレワーク交付金」は、地方に働く場所を創出し、東京圏一極集中を避け、地方への人の流れを生み出し活力ある地域社会の実現を図ることを目的に作られた交付金制度です。この交付金は、自治体がサテライトオフィスやシェアオフィス、コワーキング等を開設・運営等を行う場合が対象となります。

なお、2022年度の公募予定については5月時点で発表されていないため、HPなどの情報を確認しましょう。

活用事例

新潟県糸魚川市では、交付金を利用してサテライトオフィス等整備事業を行いました。標高100mの高台にある美山公園施設を自然体験型サテライトオフィスへの改修、北陸新幹線糸魚川駅至近の民間シェアオフィス開設資金の一部として活用しました。

<URL>地方創生テレワーク交付金(内閣府地方創生推進事務局)

地方創生推進交付金

地域のワーケーションの活性化を促す「地方創生推進交付金」は、「地方版総合戦略」に定められた自主的・主体的な事業で、先導的な取り組みに必要な経費の一部を、国が地方自治体などに交付するものです。地方自治体の実情に応じた、「まち・ひと・しごと創生」に役立てる事業が効率的に進むよう、国が支援しています。

この交付金は、移住および定住の促進につながる事業や地域社会を担う人材の育成・確保に資する事業が対象です。自治体でワーケーションを促進し、地域での新たな働き方の創出や人の流れをつくりたい場合には申請できるでしょう。

なお、2022(令和4)年においては、6月中に募集申請の受付を開始する予定です。

活用事例

山口県では、交付金を利用して多様な団体が連携し行った「やまぐち創生テレワーク」×「山口型ワーケーション」×「地域づくり」という広域的で一体的な移住・還流促進事業を行いました。

<URL>地方創生推進交付金(内閣府地方創生推進事務局)

農山漁村振興交付金

「農山漁村振興交付金」は、観光地に集中する旅行者を農山漁村に呼び込み、農泊を観光コンテンツとして活用するため整備等を行う取り組みを支援する制度です。

この制度の中の1つである農泊推進対策の「農泊地域高度化促進事業」で、ワーケーション促進に向けた支援を受けられます。交付対象となる取り組みは、ワーケーション受入対応のための、Wi-Fi環境やオフィス環境(机、椅子、アクリル板等)の整備、企業等への情報発信等があります。

なお、2022(令和4)年度は、すでに公募期間が終了となっています。2023年度以降の実施については、HP等を確認しましょう。

活用事例

宮城県蔵王町では、この交付金を活用し、一棟貸しの宿泊施設に無線LANを完備し、ワーケーションに適した環境の整備を行いました。

<URL>農山漁村振興交付金(農林水産省)

ワーケーションを推進する際に役立つ情報サイト

地域でのワーケーションを促進するにあたり、情報源や相談先として役立つサイトをご紹介します。

地方創生テレワーク相談窓口

内閣府では、地方創生テレワークを推進しようと考えている自治体に向けて、「地方創生テレワーク相談窓口」を開設しています。この窓口では、地方の状況に応じた個別相談が可能です。なお、相談を受けた場合には、別途内閣府より調査やアンケートへの回答が必要になる場合もあります。

<URL>自治体向け 地方創生テレワーク相談窓口

ワーケーション自治体協議会

ワーケーションの普及促進を目的に、2019年11月に設立されたのが、ワーケーション自治体協議会(WAJ)です。ワーケーション自治体協議会では、ひとつの自治体では難しい情報発信力について、自治体同士で連携して解決するための活動を行っています。他の自治体の具体的な取り組みを知りたいなど情報交換をしたい場合には、会員になることを検討してみてもよいでしょう。長野県及び和歌山県知事が全国の自治体に参加を呼びかけ、2021年2月時点の会員自治体数は170となっています。

<URL>ワーケーション自治体協議会

一般社団法人日本ワーケーション協会

一般社団法人日本ワーケーション協会とは、リモートワークやワーケーションができる独自性のある地域や企業などを増やし、新たなワークやライフスタイルを通した地域活性をビジョンとしている団体です。協会では、「ワーケーションコンシェルジュ」という独自の制度を実施しており、ワーケーションを通した地域活性化の活動を支援するような人材を創出しています。自治体と企業のマッチングを行い、より魅力あるワーケーションを発信するためのサポートも実施しているため、興味のあるときには検討してみてもよいでしょう。

<URL>一般社団法人日本ワーケーション協会

ワーケーションに関する補助金を上手に活用しよう

国では、内閣府の地方創生推進事務局などが中心となって、地方創生を目的としたワーケーションの補助事業を進めています。ワーケーションは、自治体にとって関係人口を増やし、地域活性化が図れるきっかけになることが期待されます。国からの補助金制度を上手く活用して、地域でのワーケーション促進に取り組んでみてはいかがでしょうか。

【関連ページ】日本ワーケーション協会に聞いた、ワーケーションのもつ地域活性の可能性