企業向けワーケーション補助に力を入れている自治体まとめ。それぞれの特色を知って、導入を検討しよう

企業がワーケーションを導入することによって、より柔軟な働き方の実現や従業員の満足度向上が図れると言われています。しかし、中には「コストに見合うほどの効果があるのか分からず導入をためらっている」「企業向けのワーケーションを受け入れている自治体や施設がわからない」という事業者の方もいるのではないでしょうか。できるだけ費用を抑えてワーケーションを導入したいときに活用できるのが、地方自治体が行っている補助制度やサポート事業です。今回は、企業向けのワーケーション補助金や、誘致促進事業に力を入れている自治体の例を紹介します。

企業向けのワーケーション補助金とは

企業向けに自治体が取り組むワーケーション補助金とは、企業がワーケーションを実施する際に必要な費用を、ワーケーション滞在先の自治体が一部負担してくれる制度のことです。地方創生や関係人口の創出などを目的に、ワーケーションを誘致したい自治体が取り組むもので、補助金の対象費用など、制度の内容はそれぞれの地域によって異なります。

企業が活用できる補助金ですが、混同されやすいものに助成金があります。まずは、補助金と助成金との共通点・相違点を説明します。

補助金と助成金の違い

補助金と助成金の共通点は、「国や自治体などの公的な資金が財源であること」と、「原則として返済は不要であること」です。補助金は国や自治体の予算に組み込まれており、助成金は民間企業の保険料が財源となっているため、利用者の返還義務はありません。申請内容が認められれば、給付金を受け取れる仕組みです。

一方、補助金と助成金の異なる点は、申請期間の長さや対象者、支給金額などです。補助金は企業向けに支給されるもので、公募期間が決まっているケースが多く、支給額は数百万円から数十億円までなど、補助金の種類によっても大きく異なります。
これに対し、助成金は個人を対象としたもので、いつでも申請することが可能です。また、支給額は数十万円程度のケースが多いでしょう。

ワーケーションに活用できるサポートを探す場合は、自治体が補助金と助成金のどちらを実施しているのか、事前に確認しておきましょう。

企業向けのワーケーション補助がある地域

実際にどの自治体がワーケーションに関する補助やサポートを行っているのでしょうか。経費の一部を補助金・助成金として給付している自治体と、お試し利用などを通じたワーケーション体験の促進事業に取り組む自治体に分けて、事例を紹介します。

補助金・助成金を交付している自治体

ワーケーションを目的に、企業や事業者が自治体に訪れる際の経費の一部に対し、補助金または助成金を交付している自治体の例です。補助金・助成金制度を実施している自治体では、補助額や要件、申請方法などは異なりますが、申請後審査が通れば、実費として補助金・助成金が受け取れます。企業側には、「計画の段階から経費が可視化され、管理がしやすくなる」といったメリットも期待できます。

栃木県日光市

日光市では、市内でワーケーションを実施する民間企業等に対してその費用の一部を支援する「日光市ワーケーション実施支援補助金」制度を設けています。対象者は、市内の宿泊施設を利用して1泊以上のワーケーションを実施する民間企業およびその社員などです。

補助額は、ワーケーションを実施する社員の宿泊に要する1泊ごとの経費(宿泊施設に支払った1人分の宿泊費)に、それぞれ2分の1を乗じて得た額の合計額(上限5,000円、1円未満の端数がある場合は切り捨て)です。

申請には、日光市のHPでダウンロードできる「補助金交付申請書」といった書類の提出が必要になります。

<URL>日光市ワーケーション実施支援補助金

長野県岡谷市

岡谷市では、市外・県外企業等のワーケーションを受け入れるため「岡谷市ワーケーション等実施支援補助金」制度を設けています。対象は、市内の宿泊施設を利用し、2泊3日以上のワーケーションを実施する市外企業としています。

補助内容は以下の3つです。
・交通費2分の1(上限:1人あたり1回10,000円)
・宿泊費2分の1 (上限:1人あたり1泊5,000円)
・レンタカー代2分の1 (上限:1日あたり10,000円、1企業等につき1日1台まで)

申請には、岡谷市のHPからダウンロードできる「ワーケーション等実施支援補助金交付申請書」や「ワーケーション実施計画書」といった書類の提出が必要になります。

<URL>【岡谷へ行こう】ワーケーション受け入れについて

北海道富良野市

富良野市では、市外企業の社員等が市内の宿泊施設に滞在し、ワーケーションを実証した場合に費用の一部を補助する「ワーケーション実証費用助成金」を交付しています。対象者は、市外の企業・団体およびその役員と社員、フリーランス、事業主としています。(同一の企業等に所属する社員等による実証を行う場合は、同一期間で10人まで等の条件あり)

助成対象となるのは以下の2つです。
・宿泊費2分の1(上限:1人あたり1泊5,000円、7連泊まで)※1
・レンタカー代2分の1(上限:1日あたり2,500円、8日分まで)

※1 市と事前協議した上で、市が主催または関与する地域振興・課題解決を目的としたイベント等への参加等をする場合、宿泊費の助成限度額を10,000円、助成割合を4分の3まで引き上げ

申請には、富良野市のHPでダウンロードできる「ワーケーション実証申込書」や「助成金交付申請書」といった書類の提出が必要になります。

<URL>【ご案内】令和4年度「ワーケーション実証費用助成金」について

ワーケーション体験のサポートがある自治体

ここでは、企業が自治体にサテライトオフィスを設置することを想定した「お試しオフィス」として使用する際の賃料や光熱費などを支援するといった取り組みに力を入れている自治体の例を紹介します。

青森県三戸町

三戸町では、サテライトオフィスの設置を検討している企業や、テレワークの体験希望者を対象に、町内にある3LDKの木造平屋住宅を、「お試しサテライトオフィス」として利用可能な取り組みを実施しています。対象者は、現在三戸町外に本社があり、三戸町でのサテライトオフィス設置を考えている企業のほか、三戸町外に居住する個人など。期間は3ヶ月以内で、利用期間中の室料と水道・光熱費などは無料です。

3ヶ月の長期滞在ができるのが特徴で、オフィス機能と居住スペースが備わっている住宅を利用するため、実際に暮らす体験をしながらワーケーションができます。従業員数人でのチームビルディングや、現地での長期研修を実施したい企業におすすめです。

<URL>お試しサテライトオフィスで仕事をしてみませんか?

広島県庄原市

庄原市では、新たなビジネスや働き方を見つけたい事業者に向けた「お試しオフィス・
おいでん彩」を実施しています。実際に本社と離れた場所で勤務し、意思疎通などが問題なくできるかを確認するため、専用のオフィス「おいでん彩」が利用できる取り組みです。

対象者は庄原市においてサテライトオフィスの開設を検討している事業者などで、滞在期間は原則2週間。利用者に対しては、広島駅・広島航空など、交通拠点までの往復交通費とレンタカー代など、移動に関わる費用と、「おいでん彩」の利用料と宿泊料を補助しています。

「おいでん彩」は旧総領中学校寄宿舎の1階を改修し、ワーケーションしやすい環境へと整備したオフィスで、Wi-Fi環境(最大1Gbps)やスクリーン、デジタル複合機なども完備されています。そのまま施設内で宿泊できるため、移動の手間が省けるのも便利なポイントです。

<URL>お試しオフィス・おいでん彩

鹿児島県錦江町

錦江町では、ワーケーション体験をしたい企業や町内にサテライトオフィスの設置を検討している企業に向け、「錦江町お試しサテライトオフィス〜南国田舎ワーケーション体験〜」を実施しています。

対象は、IT関連企業やテレワークに適した業態の企業・学術研究機関などで、ワーケーション体験は3日~14日間、お試しサテライトオフィス利用は1日~7日間の受け入れを実施しています。利用者には、宿泊料や移動費の一部、レンタカー費用などを補助しています。(ただし、利用目的によって補助額が異なります)

オフィス内のコアワーキングスペースでは、他社との交流もできるためネットワークの構築に役立てることができます。南国暮らしならではのライフスタイルやアクティビティ体験を通して、従業員のコミュニケーション促進も期待できるでしょう。

<URL>「錦江町お試しサテライトオフィス~南国田舎ワーケーション体験~」ご利用案内

ワーケーション補助金を利用するときの注意点

補助の内容を事前に確認する

補助金の対象や条件、申込方法などは、自治体ごとに異なります。そのため、補助金を利用する際は、事前に対象の自治体のHPなどで詳細を確認しておくことが大切なポイントです。申請時に不明点があれば直接自治体の窓口に問い合わせて、確認しておくとよいでしょう。

最新の実施状況を確認する

自治体によっては、感染症予防などの理由から、募集を一時中断したり、年度によって実施していなかったりする場合もあります。事前に各自治体のホームページや電話、メールなどによる問い合わせを利用し、最新の実施状況を確認することをおすすめします。

自治体のサポートを活用してワーケーションを導入してみよう

さまざまな補助やサポートを行い、企業向けのワーケーション誘致に力を入れている自治体は各地にあります。企業では、このような補助を活用することでコストを抑えてワーケーションの導入を検討できるでしょう。各自治体の補助内容を調べ、新しい働き方を取り入れてみてはいかがでしょうか。