旅×解放。リトリートがもたらす心身の癒しと自己発見

リトリート_アイキャッチ

「日常を取り巻くあらゆることから解放されたい」
「日々の喧騒から遠く離れた空間に身を置きたい」

多くの人々がストレスからの解放を渇望している現代。

2023年に行われた旅の目的に関する消費者調査では、旅の目的として家族旅行に次いで「リフレッシュ・リトリート」「温泉旅行」が多く、旅に得たいこととして43%もの方が「リラックス」と回答しています。この結果は、癒しの補給先として「旅」「旅先でのアクティビティ」を選択する人々が増加していることを示しているといえるでしょう。

このような変化のなか、心身に癒しをもたらす旅として需要が高まっているのが、新たな旅の形「リトリート」です。

日常から物理的にも精神的にも隔絶された場所でしか得られない”本物の癒し”をもたらすリトリートとは?

現代人を救う旅「リトリート」の魅力に迫ります。

【4つのR】癒しの旅「リトリート」とは

リトリートとは、日常から物理的にも精神的にも離れた環境下で、心身を癒し回復させる休息の旅のこと。

表面的なリフレッシュ・リラックスだけではなく、自身と向き合うことによる自己探求・自己成長に繋がる旅として、心の健康を重視する傾向にある現代において注目されています。

また、旅先での滞在や体験を通して自身を癒し、本来の自分を取り戻すという点では、同じく近年旅行業界を賑わせている心身の健康を目的とする旅「ウェルネスツーリズム」と密接な関係にあるといえるでしょう。

リトリートの語源

リトリート_語源

リトリートは、もともと宗教的な場面で、日常生活から離れ自己を内省する機会を指す言葉として認識されてきました。

その語源は、避難所や隠れ家、引きこもりを意味する「リトリート(Retreat)」や、再治療を意味する「リトリートメント(retreatment)」にあるといわれています。

近年、欧米で「日常生活から離れ、心身ともにリセットする」といった意味で使われるようになったことで、限定的な場面ではなく、より広い範囲で適応可能な言葉として世界中に浸透しつつあります。

日本では、日常から離れた環境下での滞在が癒しに繋がるとの観点から「転地療法」「転地療養」と称されることも。この日本独自の表現は、次に述べるリトリートと旅行の違いからみても、非常に的確といえるでしょう。

リトリートの特徴~旅行との違い~

リトリート_旅行との違い

一般的な旅行とリトリートの違い、それは「旅の目的」です。

一般的な旅行の主な目的は「非日常の体験」。
レジャーやグルメ、文化体験など、旅先で日常では味わえない経験そのものが重視されます。

一方、リトリートの一番の目的は「心身の癒し」。
日常の喧騒から離れ、慌ただしい日々を忘れて心身を回復させつつ自分と向き合うことが重要であり、アクティビティはその手段に過ぎません。

そのため、リトリートは、まず自分の日常から可能な限り離れた場所に身を置くことからはじまります。
そして、ストレスから解き放たれた状態で自身と向き合い、自分の考えや悩み、将来の展望について考えを巡らせます。

そうして本当の自分を取り戻したとき、日常との向き合い方が大きく変わっていく。
つまり、リトリートは一時の癒しではなく、継続的なリフレッシュをもたらす旅なのです。

リトリートで得られる癒しの効果【4つのR】

リトリート_メリット

リトリートのメリットは、次に挙げる「4つのR」に集約されています。

メリット 効果 具体的なアクション例
Rest(レスト) ・肉体的疲労の解消
・心身の休息
・マッサージ
・温泉・スパ
Relaxation(リラクゼーション) ・ストレスの解消
・心身のリラックス
・ヨガ
・メディテーション
Recreation(レクリエーション) ・アクティビティでの気分転換 ・スポーツ
・ハイキング
Retreatment(リトリートメント) ・非日常空間での心身の開放 ・森林浴
・デジタル・デトックス

以前は「3つのR(Rest・Relaxation・Recreation)」とされていたリトリートのメリット。
近年、新たに「Retreatment」が追加され、心身の健康を保つためには、ストレスをもたらす環境から物理的に距離を置くことが重要だとの考え方がより浸透しつつあります。

【8つの癒しの形】リトリートのアイデア

リトリートで大切なのは、日常から物理的・精神的に解放される環境に身を置くこと。
心身の癒しに繋がるアクションは、人それぞれ異なるため、プランに細かな制約は存在しません。

現在日本では、次のようなアイデアを含むリトリートプランが提供されています。

リトリートのアイデア 期待できる効果
自然豊かな場所での滞在・アクティビティ ・ストレスホルモンの分泌抑制
・心身の解放
瞑想(メディテーション) ・自律神経のバランス調整
・集中力の向上
ヨガ・ピラティス ・心身の不調改善
・集中力の向上
ファスティング ・消化器官の過活動抑制
・体のリズムの正常化
デジタル・デトックス ・ストレス環境からの解放
・目や脳の疲労緩和
・肩こりや腰痛の軽減
ものづくり ・自由な自己表現
・自己探求
芸術鑑賞 ・自由な自己表現
・自己探求
温泉・スパ ・新陳代謝向上による疲労軽減
・心身の緊張緩和

自然が好きな方なら、森林浴をしているときや海を眺めているときに、もっともリラックス状態を実感できるでしょう。

日々仕事に追われている方なら、業務関連の連絡を一時的に断つデジタル・デトックスによって、ストレスから解放され、本来の自分を取り戻せるかもしれません。

今の自分が最も強く求めている環境、アクションを選択し、自身を癒す旅へと出かけましょう。

旅行以外にも広がるリトリート

旅の形として浸透しつつあるリトリート。
近年では、旅行形態の一種としてだけでなく、リトリートの要素を取り入れたさまざまな商品やパッケージが提供されはじめています。

たとえば、大阪府の結婚式場「九段会館テラス」では、リトリートをテーマとするアフタヌーンティーを提供。グリーンカラーを基調とするスイーツは、その人気の高さから、ブライダルフェアでも振舞われています。

また、ヨガやピラティス、クラシックバレエのスクールや、関連アイテムの販売等を幅広く手掛ける「チャコット株式会社」では、リトリートをテーマとするヨガプログラムを展開。2024年6月に、都内で気軽にできるリトリート体験として、オリジナルスムージー付きヨガイベントを開催し、好評を博しました。

ストレス環境下で、一人ひとりが自分で自分を癒し、心身の健康を自身で守ることが求められている現代。

リトリートは、現代人に必須な考え方として、今後ますます幅広い分野で取り上げられていくことでしょう。

【国内事例】日常からの解放を叶えるリトリート5選

「自然に心身を委ねたい」「居心地の良いホテルで過ごしたい」「アクティビティでリフレッシュしたい」

リトリートが新たな旅の形として定着しつつあるなか、日本では、現代人が求める”癒しの形”を取り入れたリトリートプランが登場しています。

ここでは、5つの国内事例を通して、リトリートの魅力をお伝えします。

【千葉県】自然に思う存分癒されるグランピング×リトリート「リトリートグランピング千葉亀山」

千葉県最後の秘境とも称される奥房総・亀山湖。
水と緑と美しい自然が広がる千葉県最大の湖のほとりにある「リトリートグランピング千葉」は、千葉県初の温泉付きグランピング施設として誕生した、1日6組限定のレイクリゾートです。

施設内には、ドーム型テントや全天候型BBQスペース、専用サウナ、客室専用風呂など、完全プライベート空間でラグジュアリーなグランピングステイを堪能できる設備が完備されています。

また、天体観測や焚き火リトリート、ネイチャーガイド、ヨガなどのアクティビティも充実。
自然のなかで、気心知れた友人、家族、パートナーとともに過ごす時間は、ストレスから解き放たれることの重要さを改めて実感させてくれるでしょう。

住所 千葉県君津市豊田65
HP https://www.kameyama-glamping.com/

【三重県】海とアートを楽しむ伊勢志摩の複合リトリート施設「UMILABO」

Image via UMILABO公式HP

廃業した真珠養殖場をリノベーションし誕生した、企業研修や宿泊が可能な複合施設「UMILABO」。
約300箇所以上の養殖場が空き家として残されている英虞湾活性化の一環として生まれた隠れ家のようなこちらの施設では、コワーキングや日帰り、宿泊など、さまざまな利用プランが用意されています。

ノイズのない環境で過ごす静寂のひとときや、伊勢の御神木のオイルを使用したサウナでととのう時間、焚き火の前で語らう夜。ここで過ごす1分1秒のなかに、私たちに日々ストレスを課している日常はありません。

「国立公園内」という非日常的な環境のなかで、完全なリトリートを体感してみてはいかがでしょうか。

住所 三重県志摩市阿児町鵜方 福川原(UMILABO Harbour)
HP https://umilabo.co.jp/%20

【長崎県】「五島リトリート ray by 温故知新」

自然豊かな五島のシンボル「鬼岳」の噴火により形成された溶岩海岸を見下ろす高台に位置する、スモールラグジュアリーリゾート「五島リトリート ray by 温故知新」。オーシャンビュー・露天風呂付きの全26室からなるこちらの宿では、悠久の大自然を眺めながら、解放感にあふれたひとときを満喫できます。

施設内には、五島の椿をはじめとする島の恵みを使用し、島のエネルギーを感じながら施術を受けられるスパも。
さらに、ステンドグラスづくりや椿の搾油、民話と民謡など、五島の地でしか体験できないさまざまなアクティビティも用意されています。

潮の香り、五島の風、悠久の空を独り占めできる贅沢な空間で本当の自分を見つめる時間は、日常からの解放とともに、自身との向き合い方を考え直すきっかけを与えてくれるかもしれません。

住所 長崎県五島市上崎山町2877
HP https://goto.by-onko-chishin.com/
各種予約サイト

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じゃらん楽天トラベル

日常から遠く離れた場所でのリトリートで“本物の癒し”を

美味しいものを食べたり、好きな映画を観たり、素敵なアクセサリーを身につけたり……。
日常生活のなかに自身にとっての”癒し”を組み込み、ストレス過多の日々を乗り越えている方もいらっしゃるでしょう。

ただ、その効果は一時的なもの。目の前のご褒美で自分を奮い立たせる”誤魔化し”は、根本的な解決には繋がりません。

本物の癒しは、自身を疲弊させている環境そのものから離れてはじめて手に入れられるのです。

リトリートを通して心身の健康を取り戻すには、ある程度の期間日常から離れた場所に身を置くのが理想的といえるかもしれません。

しかし、まとまった休暇をとるのは、忙しい現代人にとって決して容易ではないでしょう。それならば、まずは週末の日帰り旅、あるいは1、2泊のショートステイで、意識的に日常を忘れて過ごしてみませんか。

無理のないリトリートプランで、本物の癒しを体感すれば、自己と向き合い、自分を癒す時間の大切さを改めて実感できるはずです。

【参照サイト】リトリートグランピング千葉亀山公式HP
【参照サイト】UMILABO公式HP
【参照サイト】五島リトリート ray by 温故知新公式HP
【参照サイト】オリックス・マネジメント株式会社「旅の目的に関する消費者調査を発表」
【参照サイト】バリューマネジメント株式会社「【九段会館テラス】“リトリート”がテーマの人気アフタヌーンティーも味わえるブライダルフェアを2日間限定で開催!」
【参照サイト】株式会社オンワードホールディングス「『チャコット代官山本店』6月7日(金)より都内で気軽にリトリート体験ができる「Chacott Retreat」を開催」

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古川友理

愛知県在住。ピアノ講師・伴奏ピアニストとして活動する傍ら、執筆活動にも力を注いでいる。居心地の良いホテルやゆったりと時が流れる旅先で過ごす時間が最高のご褒美。

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