外国人観光客の“もしも”に備えて。言葉の壁を超えた「おもてなし防災」プロジェクト

もしも、海外で地震や火災に巻き込まれて、自分が被災してしまったらどうしよう……。
慣れない土地、通じない言葉の環境下、どのように動けばいいのか分からず、路頭に迷うだろう。

反対に、そのような外国人を目の前にしたら、あなたはどうするのか?もちろん、手を差し伸べたい気持ちは湧くけど、まず言葉の壁が立ちはだかる。

私たちに、来日している外国人を無事に避難させることはできるのだろうか?

外国人観光客向け「おもてなし防災」スタート

現在、外国人観光客の増加に伴い、防災対策の重要性が高まっている。

TBWA HAKUHODO Creative Director 大石 将平氏は、「日本人向けの防災は数あれど、外国人向けのものとなるとまだまだ多くないのが現状です」と指摘する。大阪市港区長 山口 照美氏も、「治安が良く清潔なまち、おいしい食べ物、美しい景色や伝統を楽しめる日本ですが、一方で世界に知られる『災害大国』でもあります」と述べ、外国人観光客への防災サポートの必要性を強調している。

このような背景のもと、株式会社TBWA HAKUHODO、一般社団法人FUKKO DESIGN、大阪市港区役所が共同で「おもてなし防災」プロジェクトを立ち上げた。2024年6月17日より開始されているこの取り組みは、来日する外国人観光客の安全を確保し、快適な滞在を実現することを目指している。

2025年4月から開催される大阪・関西万博では、約350万人の訪日外国人が見込まれており、防災対策の強化が急務となっている。南海トラフ巨大地震の発生時には、最短で1時間50分で1mを超える津波が大阪市に到達する可能性があるとされ、特に港区を含む湾岸地域での被害が懸念されている。

そのため、「外国人観光客の防災意識を高めること」はもちろん、「外国人観光客の避難誘導ができる市民を増やすこと」が防災対策に非常に重要な要素となってくる。

「おもてなし防災」具体的な取り組み

プロジェクトでは、以下のような防災啓発ツールを開発・提供している。

1)おもてなし防災マニュアル
外国人観光客への防災対応方法を解説したマニュアル。事業者の方向け(全国版)、事業者の方向け(大阪市港区版)、住民の方向け(基礎編)を公開している。

2)おもてなし防災ポスター
地震や津波の危険性を啓発するポスターで、海に近い地域の施設や飲食店での使用を想定している。

3)おもてなし防災フライヤー
緊急時に外国人観光客に避難指示を出し、避難所へのルートを示すことができるツールだ。商店街や商業施設のお店に常備し、お客様に携行してもらうことができる。

4)SNSアカウント
X(旧Twitter)を通じて防災情報を発信し、プロジェクトに賛同する施設も紹介していく。

これらのツールは、専用ウェブサイトからダウンロードできる。

おもてなしパートナーズ(プロジェクト参画企業・団体)募集中

プロジェクトでは、「おもてなし防災パートナーズ」として、企業・施設・自治体などのパートナーを募集している。パートナーは、ロゴやツールを用いた啓発活動、独自の啓発映像・ツールの作成、従業員への訓練や勉強会の実施など、様々な形で取り組みに参加できる。

大阪から全国へ。“守る”という、おもてなし

大阪・関西万博の開催を控え、このプロジェクトは大阪市港区を起点に全国の観光地や外国人と共生する地域へ広がることが期待されている。山口照美区長は、「一人ひとりができることを、できるだけ。一緒に命を守りましょう」と呼びかけている。

外国人観光客の増加が見込まれる中、「おもてなし防災」の取り組みは、日本の「おもてなし」の精神を安全面にも拡張する重要な試みだ。言葉の壁や文化の違いを超えて、災害時にも適切な対応ができる体制を整えることは、観光立国を目指す日本にとって不可欠な課題だ。

“備えあれば憂いなし”

このプロジェクトを通じて、外国人観光客と日本人双方が安心して過ごせる環境づくりが進むことを期待したい。

【参照サイト】外国から来日するお客様のための防災対策「おもてなし防災」プロジェクトをスタート|PRTIMES
【参照サイト】おもてなし防災 公式HP
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