コスタリカは中米に位置する、四国と九州を合わせたほどの大きさの国だ。その生物多様性に富んだ自然環境を活かす観光政策は「エコツーリズム(サステナブルツーリズム)」として1990年代初頭にはすでに名を馳せ、毎年約100万人もの観光客が訪れている。
エコツーリズムでは、国や地域ぐるみで土地固有の自然や文化を観光客に伝え、その価値を広く理解してもらうことにより保全を推し進める狙いがある。開発を伴う商業的な観光のあり方とは異なり、自然や地域経済を十分維持できる方法で、観光客には楽しみだけでなく学びも提供する。
同国のこうした長きにわたる取り組みは着実に成果を挙げており、国連食料農業機関(FAO)によれば、コスタリカの森林被覆量は1980年代から現在までに2倍以上に増加したという。気候変動への関心がますます高まる昨今で、そんなコスタリカでは新たな取り組みが始められた。
コスタリカ国内の組織である国家資金調達林業基金(FONAFIFO)が発表したプログラムでは、観光客が自身の旅行に伴うCO2排出量に対してカーボンオフセットを行うかどうかの選択ができる。オフセットのために支払われた代金は、FONAFIFOを通して植林などの自然保護活動を行う土地所有者に支払われる。国が政策として観光客にカーボンオフセットを積極的に勧めるのは世界で初だ。
旅行で発生する炭素排出量の90%以上は航空機での移動によってもたらされると言われている。コスタリカ観光協会のホームページによると、例えば、首都サンホセとニューヨーク間のフライトならば一人あたり約530kgの炭素が排出され、カーボンオフセットには41本の木を植える必要があるという。この例なら、カーボンオフセットに必要な資金は約4ドル程度で、航空券代を考えれば観光客にとっては十分支払い可能な金額だろう。
FONAFIFOは「旅行者自身が自然保護の為の資金援助に携わることは、回りに回って彼らの観光体験の質を高めることに繋がります。」と述べている。これは、単に自然や文化の保全をするだけでなく、観光客自身が地域を消費する側ではなく「よくする」ことに参加できる体験だ。
エコツーリズムにおいて参加者側の「倫理」や「配慮」は旅行体験の良し悪しを決める重要な要素だ。人間関係やビジネスと全く同じで、訪れる側ともてなす側のWin-winが成立して初めて共有される時間は素晴らしいものとなるし、そこで築かれた関係は持続性を持つようになる。
観光はわが国だけではなく、多くの国にとって21世紀の重要産業の一つだ。世界の喫緊の課題であるグローバリズムや気候変動を考慮すると、コスタリカの観光政策はやはり今日も時代の最先端を行っている。世界的な大都市を持つ一方で、豊かな自然資源も持ち合わせた日本が同国から学べることは、これからもたくさんあるはずだ。
【参照サイト】Carbon Neutral Vacation to Costa Rica
【関連ページ】サステナブルツーリズムとは・意味
Edited by Kimika Tonuma
【転載元】コスタリカ、観光客がカーボンオフセットをできるプログラムを提供へ | 世界のソーシャルグッドなアイデアマガジン | IDEAS FOR GOOD
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