サステナビリティへの関心の高まりは観光業界にも押し寄せている。以前にLivhubでもご紹介したが、ブッキング・ドットコムが2021年に行った調査によると世界の旅行者の81%がサステナブルな宿泊施設に泊まりたいと回答。(※1)同社が2016年に初めて行った調査時に62%だったことを踏まえると大きく進展していることがわかる。
この調査でもう一つ明らかになったことがある。回答者の内49%が「サステナブルな旅行の選択肢がない」と不満をいだいている一方、実は4分の3の宿泊施設は何かしら取り組みを行っていると回答しているのだ。つまり、多くの観光客がサステナブルな取り組みを行っている宿泊施設を求めており、宿泊施設の多くも取り組みを行っているにもかかわらず、情報が届いていないことが明らかになった。
そこで、2021年11月、ブッキング・ドットコムでは宿泊予約サイト業界としては初となる、サステナビリティ情報提供システム「トラベル・サステナブル・バッジ」をスタートした。
これは宿泊施設が行っている、ごみ、エネルギー、温室効果ガス、水、地元支援、自然保護の5分野に関する取り組みを予約サイトに表示するもの。宿泊施設の絞り込み検索の欄に、予算やクチコミスコアと同じ並びに『「サステナブル・トラベル」プログラム登録施設』(英語はTravel Sustainability Properties)という検索項目があり、旅行者は目的地の設定と同時に検索をかければ、行きたい地域でかつサステナビリティに取り組む宿泊施設をクリック一つで調べられる。たとえば、京都を目的地に大人二人の宿泊で検索したところ、42件の宿泊施設がヒットした。
取り組み情報の登録は宿泊施設が行う。ウェブサイト上で取り組みを申告すると、基準に基づいてデジタルアセスメントが行われ、24時間以内にインパクトスコアがメールで届く。バッジをもらえる基準を満たしていれば、申告後48時間以内にブッキング・ドットコム上の各宿泊施設のページにバッジが表示される。バッジを取得できなかった場合は、取得に向けたアドバイスや資料をもらうことができる。
指標のクオリティも高い。取り組み分野は5分野だが、使い捨てのプラスチック洗面用具をなくす、100%再生可能エネルギーを電源とするLEDに切り替える、利益の一定割合を地元のコミュニティや環境保全事業に投資する、など全体で32の具体的な指標が設定されている。ただ、国によっては電気やごみ収集などのインフラ整備状況、気候や文化が違うため、たとえば、英国であれば窓は複層ガラスになっていることという項目があるが、南アフリカの場合はこの項目はないなど地域性が考慮されている。また、一般的なホテルからリゾート、ツリーハウスにいたるまであらゆるタイプの宿泊施設が利用できるよう工夫されている点も特筆すべきだろう。
ブッキング・ドットコムのサステナビリティディレクターのマリアンヌ・ジベルス氏は「宿泊施設が実践している取り組みを表示することで、旅行者が持続可能な選択をすることがより簡単になります。これは、少しでも多くの宿泊施設が、もっとサステナブルな取り組みを行おうと動機づけることにもなります」と述べている。
CO2排出量だけをみても、世界で一年間に排出される温室効果ガスの8%は旅行業界由来とされる。(※2)約2,800万件以上の宿泊施設が登録されたブッキング・ドットコムというプラットフォームのこの取り組みが、旅行業界に大きな変革の風を吹かすことを期待したい。
(※1)Booking.com’s 2021 Sustainable Travel Report Affirms Potential Watershed Moment for Industry and Consumers
(※2)nature climate change The carbon footprint of global tourism
【参照サイト】 Booking.com