民泊物件には「現地の住宅の雰囲気を味わえる」という魅力もありますが、古民家はさらに伝統的な日本家屋という趣が加わり観光客を中心に人気があります。
しかし、古民家を改修して民泊物件として運営を希望する方の中には、「リノベーションの費用が高そう」「改修業者はどうやって探したらいいの?」といった悩みを持つ方も少なくないのではないでしょうか?
今回は民泊物件を運営するにあたって必要な手続きや、古民家を民泊物件にリノベーションするための流れ・費用を見ていきましょう。リフォーム・リノベーション業者を探すポイントや注意点も解説していきます。
1.古民家のリノベーション費用
古民家は現在の住宅と異なる1950年以前の建築基準法に基づいた「伝統構法」という土台を設けず木材を組み合わせた構造で、場合によっては耐震補強の改修や断熱性能の向上が必要となります。これによって、築浅の居住用戸建におけるリフォーム・リノベーションより、費用が高くなる傾向があります。
古民家が元々持っている耐震力は建物の形、バランス、配置等によって異なりますので、構造計算によって確認し、場合によっては補強計画を立てて回収費用を計算する必要があります。
耐震補強費用のおおよその目安として、耐震壁の設置が1箇所10万円、基礎補強は1m当たり5万円、瓦から金属屋根への屋根工事への葺き替えは1㎡あたり2万円となります。
上記に加えて、民泊物件の場合は宿泊客を意識した造りや法に基づく各種設備の設置等が求められます。リフォーム・改修費用は多めに見積もっておくことが重要となります。
1-1.空き家の場合は自治体から補助金が出ることも
高齢化社会の影響で空き家の増加が社会問題となっている事から、国土交通省では「空き家再生等推進事業」を制定し空家法に基づく計画に沿った、自治体が民間事業者等と連携し、空き家の活用や除却に対する支援として補助金を出しています。
自治体によって補助金の額は異なりますが、事例として兵庫県赤穂市では改修費が500万円以上1,000万円未満の場合は250万円、1,000万円以上の場合は333万円の補助金が支給されます。(赤穂市「古民家再生促進支援事業補助金のお知らせ」を参照)
補助金を受け取る為には、一定の条件を満たし工事の前に申請書を提出する必要があります。古民家が空き家となっている際は、所在地の自治体の役所やホームページで補助金について調べてみましょう。
2.古民家を民泊物件にリノベーションするための手順
古民家を民泊物件としてリノベーションする前に、民泊物件を運営するにあたって必要な手続きの流れを知っておきましょう。
2-1.住宅を民泊物件に転用する3つの方法
民泊運用を合法的に運営するにあたり、大きく分けて「住宅宿泊事業法(民泊新法)」「簡易宿所営業(旅館業法)」「特区民泊」の三つの方法があります。下記、それぞれの業態における違いを表にしたものです。
旅館業法簡易宿所営業 | 特区民泊 | 住宅宿泊事業法 | |
許認可など | 許可 | 認定 | 届出 |
提供日数の制限 | なし | 2泊3日以上の滞在が条件 | 年間営業日数180日以内(条例で引き下げ可能) |
宿泊者名簿の作成・保存義務 | ○ | ○ | ○ |
玄関帳場の設置義務 | なし(条例による設置義務付けも可能) | なし | 宿泊者名簿の作成・保存ができれば物理的設置は求めない。 |
最低床面積(3.3㎡/人)の確保(宿泊人数の制限) | ○ | 一居室の床面積原則25㎡以上(自治体の判断で変更可能) | ○ |
上記以外の衛生措置 | ○ (換気、採光、照明、防湿、清潔などの措置) |
○ (換気、採光、照明、防湿、清潔などの措置) |
○ (定期的な清掃等) |
非常用照明などの安全確保の措置義務 | ○ (建築基準法において措置) |
○ (建築基準法において措置) |
○ (家主居住型で民泊部分の面積が小さい場合は緩和) |
消防設備の設置(消火器、誘導灯、連動型火災警報器) | ○ (建築基準法において措置) |
○ (建築基準法において措置) |
○ (家主居住型で民泊部分の面積が小さい場合は緩和) |
近隣住民とのトラブル防止措置 | なし | ○ (近隣住民への適切な説明、苦情対応) |
○ (宿泊者への説明義務、苦情解決の義務) (届出時にマンション管理規約、賃貸住宅の賃貸契約書の確認) |
不在時の管理業者への委託義務 | なし | なし | ○ |
今回はリフォーム費用が比較的少額で済み、許認可のハードルが低い「住宅宿泊事業法(民泊新法)」を中心に解説します。
民泊新法では、民泊を行うにあたり都道府県知事への届出を行い、「台所」「浴室」「トイレ」「洗面設備」の4つの設備が必要とし、民泊サービスを提供できる日数の上限は年間180日(泊)まで等のルールを定めています。
届出前には管轄の消防署で消防法令適合通知書を交付してもらいましょう。届出書は所在地を管轄する観光局・保健所等の行政機関に民泊の名称または氏名と住所、連絡先、不動産番号等の事項を記入し提出します。
民泊新法では、これらの制限への対処や手続きを経て、実際に古民家を民泊物件にするためのリノベーションを加えることとなります。
2-2.古民家のリノベーションを行う流れ
古民家を購入する所から民泊物件としてリノベーションを行い、活用するまでの流れを見て行きましょう。
物件を所有していない場合
これから古民家物件を探す予定の方は、不動産会社に依頼し物件を探すところから始めていきましょう。
現在住んでいる家の近くで管理に携わりたい場合は近隣で、離れている場所で不動産会社に管理を委託したい際は観光地の近くや大都市のベッドタウン等、需要が見込めそうな場所の古民家を探しましょう。
物件を探す際は古民家を専門に扱っているサイトや古民家の扱いが豊富な不動産会社、または自治体が運営する「空き家バンク」を利用してましょう。
物件を所有している場合
すでに所有している物件の民泊転用を検討している場合は、民泊運用を始める前に不動産会社による物件査定を受けておきましょう。投資前に物件の査定額を知っておくことで、民泊物件に転用した場合と売却した場合の金銭的リターンを比較することができるためです。
投資用不動産の売却実績が豊富な「リガイド」や、提携企業数が1600社以上の「イエウール」、悪徳会社を徹底排除で顧客満足度90%の「HOME4U」など、これらの不動産一括査定サイトの利用を検討してみましょう。
改修業者を探すポイント
リノベーションやリフォームを行う際は、民泊物件への改修に慣れたリフォーム業者に依頼する事を検討しましょう。
民泊の知識が深い業者であれば需要の多い内装や民泊ならではの法規制にも詳しいため、リノベーションをスムーズに行う事ができるでしょう。民泊関連の業者の中には、リノベーション後、写真撮影、運営代行までワンストップで行ってもらえる会社も存在します。
近隣に民泊関連のリノベーション会社が見つからない場合、複数のリフォーム会社に一括見積を依頼し相場の金額を把握しつつ、改修業者に話を聞きに行くといった方法も検討してみましょう。
また、先にリノベーション費用・内容を決め、見積りを取った後に業者と相談し微調整を行うとスムーズにリノベーションを進めることができるでしょう。
依頼先が決まったら、建築士事務所と相談してリフォーム・リノベーションの設計を行います。リフォーム・リノベーション業者と工事請負契約、建築士事務所と監理業務委託契約をそれぞれ締結します。
改修を行うにあたっては建築基準法や住宅宿泊事業法の法律を満たしている必要がありますが、物件エリアによって制限が異なるため建築士事務所や改修業者、自治体へ事前に相談した上で工事を依頼しましょう。
3.民泊物件へリノベーションを行う際の注意点
民泊物件のリノベーションを行う際は、建築基準法・消防法・旅館業法といった関連法規を守る事、賃貸物件の場合は契約内容・管理規約を確認することが大切です。場合によって公的機関への手続きや各種設備の設置が必要となることもあるため、事前に関連法規を遵守した上でリノベーションを行いましょう。
民泊へのリノベーション・運営にあたって関連する法は建築基準法、消防法、住宅宿泊事業法となります。所在地によって確報制限の内容が異なる場合があるため、自治体ホームぺージ・役所で確認しましょう。
消防法では民泊物件での家主の常駐有無、床面積の合計により消火器や自動火災報知設備、警報機、消防用設備等の点検報告等が必要となります。
このように、民泊を始めるにあたっては住宅宿泊事業法の認可、もしくは旅館業法の許可を得る必要があるため、事前に所在地の保健所で相談・申請を行いましょう。
まとめ
古民家を民泊物件にリノベーションするための手順・費用を中心に、注意点や民泊運用を始めるにあたっての手続き等をお伝えしました。
古民家の民泊を運営するためにも、リノベーションにおける各種手続き・関連法規を理解しておきましょう。
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