沖縄の自然と文化を「感じて」「繋ぐ」旅。サステナブルツアー体験レポ【石垣島編】

※本記事は、ハーチ株式会社が運営する「IDEAS FOR GOOD」からの転載記事となります。

日本有数のリゾート地として人気の石垣島。東シナ海に浮かぶ12の有人島からなる八重山諸島の主島で、彩り鮮やかな花々や深緑豊かな山々など、美しい自然と特有の伝統文化が息づく場所である。人々を魅了する透明度が高い海は、日本最大のサンゴ礁海域である石西礁湖や西表石垣国立公園内のアオサンゴなど、数多くのサンゴが生息するダイビングスポットとしても名高い。

しかし、近年観光業による環境への悪影響が問題視されている。世界中の温室効果ガス排出量の約1割は観光により発生しているといわれている。石垣島も例外でなく、海洋ごみの漂着や気候変動などによる生態系の変化、サンゴの白化など、自然環境が危機に瀕している。

こうした課題を受け、ANAインターコンチネンタル石垣リゾートは、旅行先の地域文化と環境の保全を第一に考えた「持続可能な観光」の推進を目指している。石垣島の豊かな自然環境や文化・人との交流を通して、サステナビリティを楽しみながら学び、体験できる、同リゾートオリジナルのサステナビリティ島旅プランを期間限定で提供している。

ANAインターコンチネンタル石垣リゾート

ANAインターコンチネンタル石垣リゾート

「豊かな自然と文化が根付いた島で、心の琴線に触れる出会いと発見に満ちた、ラグジュアリーリゾート」というコンセプトのもと、同ホテルは八重山諸島の多様な生態系について学ぶネイチャーツアーや、島の資源を守りながら後世に受け継ぐ地場産業体験、ラムサール条約の国際自然保護区に指定されている、名蔵湾の海水から作られた石垣島伝統の塩を使った体験など、先代より八重山の島々に受け継がれた自然や文化に触れ、心身ともに健康で心を豊かにするサステナブルな旅を提案する。

本記事では、同ホテルが提供するサステナブルツアーに参加した筆者が、ツアーの一部の様子と共にその魅力についてお届けしたい。

サンゴを守る月桃を使った、畑人(はるさー)体験

沖縄や奄美大島、台湾などの温暖な地域に群生するショウガ科の植物「月桃(げっとう)」。沖縄では「サンニン」と呼ばれ、季節を知らせる植物だ。強い勢力の台風が押し寄せる石垣島では、雨の影響で農地の赤土が海に流出し、サンゴが破壊されるという深刻な問題を抱えている。

石垣島の大切な資源のひとつであるサンゴを守るため、月桃や糸芭蕉などを農地に植え、根っこの力で赤土の流出を抑える“グリーンベルト”と呼ばれる取り組みが行われている。しかし、グリーンベルトの植え付けにより畑の面積が狭くなったことで、収穫物が減少してしまう農家の経済的な負担がかかっている。その経済的負担を軽減するために、「畑里」を経営する伊良皆 高虎(いらみな・たかとら)さんが農家に出向き、自ら畑で月桃を刈ったうえでそれらを買い取り、その月桃を活用した100%オーガニックの精油(アロマオイル)を製造・販売している。

「畑里」を経営する伊良皆さん

「畑里」を経営する伊良皆さん

ツアーでは、月桃を原料に製品作りを行っている島人(しまんちゅ)ファーム「畑里」を訪れ、すでに刈り取られた月桃の葉と茎を約50センチほどの長さに切り、窯に入れるといった精油(アロマオイル)づくりの一部を体験する。

月桃の葉と茎を切る様子

月桃の葉と茎を切る様子

月桃は抗菌、消臭、リラックス効果があるとされ、食べ物やお茶などに使用されてきたハーブ。しかし、月桃は抽出効率が悪く、窯いっぱいの月桃から抽出できる精油はわずか200ミリリットルだという。

精油を抽出する窯

切った月桃の根と茎を窯の中で約6時間蒸し、精油と水(フローラルウォーター)が抽出される

海の豊かさを守るために畑に植えた月桃を活用し、農家を経済的に支援するとともに、その資源を有効活用するというアイデアは画期的だ。しかし現在、この一連の流れは伊良皆さんたった一人で行っているという。この体験を通じて精油一滴を作るために必要な労力を知り、こうした植物から精製されたアロマオイルがどれだけ希少で価値あるものか改めて気付かされる。

抽出された月桃の精油と水

抽出された月桃の精油と水

抽出された精油はアロマオイルとして商品化し販売されるが、フローラルウォーター(月桃の香りがする水)はまだ活用策が定まっていない。ほぼ水分のためすぐに蒸発してしまうが保湿クリームのような滑らかさと甘い香りを放ち、必ず何かに活用できるはずだ、と伊良皆さんはいう。訪れた際にはぜひ皆でアイデアを考えてみてはいかがだろうか。

自然の恵みから作られた石垣の塩のバスソルトづくり

塩づくりは石垣島を支える重要な伝統産業のひとつ。今から約300年前に沖縄最南端の八重山諸島で生まれた「石垣の塩」。西表石垣国立公園にそびえ立つ沖縄最高峰の於茂登岳の森のミネラルと海のサンゴ礁から湧き出る自然のエッセンスが石垣の塩には含まれている。

島人仕込みの石垣の塩は、海水をくみ上げ、そのまま釜に入れて水分を蒸発させることで作られている。特に細かい調整はせず、太陽光を中心にすべて自然の力に任せておいしく仕上げられる。

窯の中に入れ、太陽の熱で作られている塩

窯の中に入れ、太陽の熱で作られている塩

塩工房を営む東郷 得秀(とうごう・とくひで)さん、通称「得ちゃん」に案内され、工房裏の名蔵湾へ向かった。砂浜へ出ると、山と海が調和する素晴らしい景色が目の前に広がった。石垣の塩は、ラムサール条約の国際自然保護区に指定されているこの名蔵湾の海水をくみ上げて作られており、塩づくりの歴史と共においしい塩に欠かせない自然環境の役割を説明してくれた。

名蔵湾を背景に塩の歴史や自然の重要性を話す石垣の塩を営む得ちゃん

名蔵湾を背景に塩の歴史や自然の重要性を話す石垣の塩を営む得ちゃん

興味深いことに、成分無調整・無添加の石垣の塩は、季節や月の満ち欠けによって塩の味が変化するのだという。自然の力だけを利用しているからこそ、こうした小さな味わいの変化が楽しめる。また、石垣の塩の魅力は、100%塩分で構成される通常の塩に比べ、塩味が8割にとどまり、その他にカリウム、カルシウム、鉄分、亜鉛などが混ざっていることだという。実際に名蔵湾の海水を味わってみると、驚くことに塩味よりも甘味が引き立つ、まろやかな味の海水だった。様々なミネラルが含まれる塩を幼少期の頃に親しむと味の変化に敏感になり、食育にも効果的だという。

塩工房の得ちゃん

塩工房の得ちゃん

ツアーでは塩づくり発祥の地である沖縄・八重山諸島・石垣島産の塩作りをしているここ石垣の塩工房で、命の源である塩を使ったバスソルト「塩ばくだん」作りを通して、海と大地の恵みについて考える。自然の力によって作られる塩は、森や海と深い関係を持ち、自然界のバランスが崩れれば、塩づくりにも影響が出てしまうことを同時に学ぶことができる。得ちゃんは、塩を通じて自然の恵みの有難みを感じ、少しでも自然を大切にする意識を持ってほしいと話した。

全身と五感を使って秘境西表島の自然を体験

石垣島からフェリーに乗り、西表島を訪れた。2021年7月に世界自然遺産登録された西表島は、島の9割以上が亜熱帯の自然林に覆われている大自然の宝庫。日本最後の秘境とも例えられ、マングローブ林が広がる汽水域、海岸や河川沿いの湿地帯、さらに山地へ上がれば太古の昔から変わらない原生林が広がる。イリオモテヤマネコなど、ここにしかいない珍しい動物や植物、天然記念物が棲息し、「東洋のガラパゴス」とも称されている。

雨上がりで濃い緑が際立つ西表島の自然

雨上がりで濃い緑が際立つ西表島の自然

ツアーでは島の生態系には欠かせないマングローブや西表島独自の豊かな生態系について学びながら汗を流すトレッキングを通して、海と山のつながりやありのままの自然を体感できる。

今回筆者は往復3時間ほどをかけ、マヤロックの滝を目指して森や沢を歩き続けた。ツアーガイドはテンポよく歩みを進めながらも道中の植物や昆虫などを見つけてはそれらの特徴や魅力を教えてくれた。

西表島のガイド、山岡さん

西表島のガイド、山岡さん

マヤロックの滝

マヤロックの滝

トレッキングの後には海岸へ行き、ビーチクリーンを行う。西表島で回収された漂着ごみの9割がプラスチック製品。漂流物を分析してみると、ペットボトルの生産国の約7割は中国産のものだということが分かっている。日本のごみも同様に他国へ流れてしまっている事実を考えると、漂流ごみは一国だけの問題ではなく、世界の国々が協力し合わなければ解決することができない深刻な問題である。

西表島の漂着ごみ

西表島の漂着ごみ

海岸へ訪れると、想像以上の漂着ごみの量が海岸沿いに連なっており、思わず声が出てしまう状況だった。さらに、西表島では漂着ごみを処理する施設がなく、船で石垣島に運び、産業廃棄物の最終処分場で処理される。そのため、ごみを処理するには運搬と処理に膨大な費用がかかり、一般客が善意で集めたごみを処理しきれない課題もあるのだという。海をきれいにする際には、ビーチクリーン団体と共に処理しきれる量を計画的に拾う必要がある。

ビーチクリーンの様子

ビーチクリーンの様子

実際に浜辺での漂着ごみの量や種類の多さ、そして自然界にも及ぼす被害の大きさを目の当たりにすると、日々便利で快適な暮らしを営む我々の暮らしの裏側には普段は見えないところで深刻な問題がはらんでいることがわかる。こうした体験を通じて、個人として自分自身の日々の行動を見直すきっかけになってほしい。

「日本一美しい空」を眺めて一日を締めくくる

ホテルに戻った後には、同ホテルのレストランSALTIDAで旅の活力を養うことができる。SALTIDAでは先ほど紹介した「石垣の塩」工房から専売で仕入れた、ここでしか味わうことのできない「にがり8年珠塩(たまじお)」と名付けられた特別に熟成された希少な塩を使用している。島の海と大地の恵みを守る思いを大切に、海の幸、山の幸、森の幸をふんだんに使った料理を提供している。こだわり抜かれた料理を通じて石垣島の自然の恵みを味わった。

SALTIDAの地産地消メニュー

SALTIDAの地産地消メニュー

そして1日の締めくくりには、心地よい夜の海風に吹かれながら、ホテル前のビーチで星空鑑賞ツアー。ビーチベッドに寝ころび双眼鏡を使って星空を見上げながら、星空ガイドがレーザーを用いてわかりやすく解説してくれる。星座の成り立ちや宇宙の神秘を学び、島の環境維持と発展について思いを巡らせた。

星空観測ツアー

心躍る体験を通じて日々の行動を見つめ直すきっかけを

石垣島をはじめとする八重山諸島の貴重な自然環境や文化は後世へ残すべき貴重な財産である。こうした魅力を従来のように話題の場所へ訪れて写真を撮ったり料理を味わったりといった旅先のコンテンツを消費する形で完結するのではなく、楽しみながらも多くを学び、考えを深める場としても価値がある。

今回紹介したのは、地域に暮らす人々の生活や産業、自然が豊かになることを目的とした思いが紡がれる旅。普段とは違う場所に身を投じ、心躍る体験を通して自然の恵みや人々の営みに思いを馳せ、改めて日々の行動を見つめ直すきっかけになるのではないだろうか。

続く【万座編】では同ANAインターコンチネンタルホテルの万座ビーチリゾートで提供するサステナビリティツーリズムについてご紹介する。

※同ツアーは新型コロナウイルス感染症対策に十分に配慮して計画・実施されています。
※今回紹介したツアー内容はパッケージによって組み合わせが異なるため、詳しくは公式ページをご覧ください。
【参照サイト】ツアー詳細・公式ページ「石垣の自然と文化を後世に繋ぐ サステナビリティ島旅プラン」ちむどんどん・ちむぐくる

※本記事は、ハーチ株式会社が運営する「IDEAS FOR GOOD」からの転載記事となります。

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瀧田桃子

幼いころから旅行をすることが当たり前だったのもあり、常に知らない場所に足を踏み入れることが大好き。海外は30か国以上巡り、旅を通じて新たな価値観や文化に触れ、その土地ならではの雰囲気を五感で感じることが生きがいのひとつ。旅を通じて人とつながり、より多くの人に自分らしい生き方を見つけるのと同時に地域の人々や環境を元気にしたい。